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2026.09.19 採用支援コラム

外部人材活用で生成AIの仕事を頼む準備|契約前に決めること

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

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この記事の結論

  • 政府が生成AIシステムの調達時に行う5つのことのうち、民間の発注に持ち込めるのは4つです。
  • 調達チェックシートの要求事項33件は、基本項目20件、条件付きの基本項目7件、任意追加項目6件です。
  • 生成AIシステムを提供する事業者は直接の対象ではなく、発注する政府職員が、契約などを通じてガイドラインの決まりを守らせます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

生成AIを使う開発を外部の人材に頼みたいが、契約の前に何を決めておけばよいのか見当がつかない。依頼書に何を書けば、相手と認識をそろえられるのか——。外部人材活用で生成AIの仕事を任せる現場では、こうした迷いが起こりがちです。手がかりになるのが、デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」です。政府が生成AIシステムを調達し、使うときに行うことをまとめた文書です。

この文書には、調達のときに行う5つのことと、確かめる項目を並べた2枚のチェックシートが載っており、民間の発注でも依頼書や契約を考える手がかりになります。ただし万能ではなく、政府職員に向けて書かれていること、調達の相手が人ではなく生成AIシステムそのものであることの2点で、民間の外部人材活用とはずれがあります。本記事では、生成AIを使う仕事を外部に頼む発注担当者に向けて、ガイドラインの位置づけと対象、調達のときに行う5つのこと、チェックシートの中身、そして外部に頼むときに持ち込める項目を整理します。

生成AIの調達ガイドラインとは

この文書は、デジタル社会推進標準ガイドラインのうち、DS-920という番号の付いたものです。2025年5月27日に初版が決まり、2026年6月12日に第2.0版へ改定されました。*1 位置付けは「政府情報システムの整備及び管理に関するルールとして遵守する内容を定めたドキュメント」とされています。*1

対象者は、生成AIの調達・利活用に関わる政府職員です。種別はAI統括責任者(CAIO)、企画者、開発者、提供者、利用者の5つで、調達のときに行うことは、すべて企画者が行うこととして書かれています。企画者とは、生成AIの利活用を企画し、業務に必要なシステムの条件を定め、調達・開発・利活用を進める職員のことです。提供者は、生成AIモデルを既存のシステムに組み込んで提供する側の政府職員です。民間の会社で読むなら、生成AIを使う仕事を社内で企画し、外部に頼む中身を決める発注担当者を思い浮かべると分かりやすくなります。

外部人材活用の側から見て大事なのは、生成AIシステムを提供する事業者の扱いです。ガイドラインは「政府との契約により政府に生成AIシステムを提供等する事業者は本ガイドラインの直接の対象ではなく」としたうえで、企画者や提供者が調達手続や契約、監督を通じて遵守を確保するとしています。*1 事業者に決まりを守らせるのは、発注する側です。

どの生成AIが対象になるのか

対象とする生成AIは、「原則として、入力はテキスト及び音声、出力はテキスト、画像又は音声が可能なもの」です。*1 文章や音声で指示を出し、文章・画像・音声を返すものには、調達のときに行うことがすべて当てはまります。

これに当てはまらないのが、画像や動画などを入力するもの、動画などを生成するもの、周りの状況を感知して自ら動くAIエージェントなどです。これらについては「具体的対応事項は定めないが、AIガバナンスの枠組みの対象とする」とされています。*1 AIガバナンスとは、AIを適切に使うための体制や決まりのことです。

デジタル庁のガイドラインが対象とする生成AIの線引きを示した図。入力がテキストと音声、出力がテキスト・画像・音声のものは具体的対応事項まで対象。画像や動画を入力するもの、動画を生成するもの、AIエージェント等は、具体的対応事項は定めず、AIガバナンスの枠組みである4.1と4.2と6.7の3つの節だけが対象。

その枠組みに当たるのは3つの節です。4.1は政府全体でAIの利活用を進め、AIガバナンスのための体制を作ること、4.2は各府省庁でAIガバナンスの体制を整えること、6.7は生成AIシステムに特有のリスクケースへの対応です。リスクケースとは、生成AIのリスクが現実になった状態や、その兆しのうち、重大な影響を及ぼし得るものを指します。調達のときに行うことが当てはまるのは、最初に挙げた、文章や音声で指示を出す生成AIだけです。

初版では、範囲はさらに狭いものでした。対象は「大規模言語モデル(LLM)を構成要素とするテキスト生成AI」で、音声を入力するものや、画像を出力するものは入っていませんでした。*2 初版をもとに作った社内の資料があれば、対象の決め方から見直しておく必要があります。

調達のときに行う5つのこと

6.3.2「生成AIシステムの調達時の対応事項」には、企画者が行うことが①から⑤まで並んでいます。①は、調達チェックシート(生成AIシステム用)に載っている要求事項を、応募者に求める事項として調達仕様書に書き込むことです。調達仕様書とは、何を調達するのかと、相手に求める条件を示す文書です。シートに無い事項も、必要に応じて加えることを検討します。

②は、総合評価方式や企画競争方式を採る場合に、その要求事項を評価項目にも反映することです。どちらも、応募してきた相手を価格以外の点も含めて比べ、選ぶための方式です。仕様書に書いた要求事項を、選ぶときの採点にも使うということです。

③は、相手が使う生成AIの情報を得ることです。「生成AIモデル、アーキテクチャ等の生成AIシステムの特性、生成AIシステムの主要性能指標情報等の情報を取得する」とあり、続けて「学習に使用されたデータや学習方法、データセットの情報も、取得に努める」とされています。*1 前半は「取得する」、後半は「取得に努める」と、求める強さが書き分けられています。

④は、公共調達の政策に沿うことです。相手を選ぶ際にデジタル・スタートアップを評価することとされ、デジタル庁が運営する公共調達の仕組みであるデジタルマーケットプレイスの活用も挙げられています。⑤は、契約チェックシート(生成AIシステム用)の事項を、契約書または調達仕様書に書き込むことを検討することです。

初版では、この対応事項は4つでした。*2 第2.0版で加わったのは③で、改定履歴には、6.3.2について、生成AIシステムを制御しやすくするために必要な内容を追記したとあります。相手が何を使って作るのかを、発注する側が先に知るための項目です。

2枚のチェックシートの中身

2枚のチェックシートは、ガイドラインの別紙3と別紙4に付いています。調達チェックシートには調達仕様書に書き込む要求事項が、契約チェックシートには契約で決める取決め事項が並んでいます。それぞれの項目を分類ごとに数えると、次のようになります。

2枚のチェックシートの内訳(デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版の別紙3・別紙4の項目を分類ごとに数えた件数。2026年9月19日確認)
分類 調達チェックシート 契約チェックシート
並んでいるもの 要求事項 取決め事項
件数 33件 9件
基本項目 20件 9件
条件付きの基本項目 7件 0件
任意追加項目(加点項目) 6件 0件
書き込む先 調達仕様書 契約書または調達仕様書

基本項目は「政府機関が調達する生成AIシステムに原則要求すべきと考えられる事項」です。*1 調達チェックシートの残りのうち7件は、条件に当たったときだけ基本項目になります。条件は5通りで、一般の国民など府省庁の外の人が使う場合が3件、個人情報やプライバシーの保護が必要な場合、知的財産などを扱う場合、生成AIモデルに学習をさせる場合、高い信頼性が求められる場合が各1件です。

要求事項は3つの区分に分かれます。組織要件は、総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインにある共通の指針を守ることや、AIガバナンスを作ることなどです。開発・運用工程要件は、データの取扱い、アウトプットの品質保証、ベンダーロックイン(特定の委託先から離れられなくなること)の回避、生成AIモデルのアップデートへの配慮などです。生成AIシステムの基本機能要件は、有害な情報を出さないようにすること、誤った情報を出したり利用者を誤った方向へ導いたりしないこと、公平性と包摂性(多様な人を取り残さないこと)、目的外の利用への対処などです。*1

契約チェックシートの9件は、すべて基本項目です。前半の4件は、生成AIに渡すものと返ってくるものの扱いで、「インプット」「インプットの処理成果」「アウトプット」「アウトプットの処理成果」。後半の5件は「契約上の取決め」「ノウハウ」「成果物」「リスクケースが発生した場合」「期待品質が満たされなくなった場合」です。*1

民間の発注に持ち込めるのはどれか

ガイドラインは、政府職員の種別と、AI事業者ガイドラインの主体との対応関係を表で示しています。企画者と開発者はAI開発者またはAI提供者に、利用者はAI利用者に当たるとされています。ただし同じ表の脚注には、「政府向けである本ガイドラインと主に民間事業者を対象としたAI事業者ガイドラインでは、対応関係は一致しない場合がある」とあります。*1 民間の立場に置き換えるときは、項目ごとに当てはまるかを見ていく必要があります。

もう一つのずれは、調達の相手です。この文書が対象とする調達の相手は生成AIシステムですが、外部人材活用で頼むのは人の仕事です。相手が既製の生成AIサービスを使って作業するなら、発注する側が買うのは人の作業時間で、生成AIそのものではありません。このずれを踏まえて5つを見ていくと、民間の発注に置き換えられるのは4つです。以下の当てはめはガイドラインに書かれたものではなく、本記事の整理です。

調達時の対応事項5つを民間の発注に置き換えた例(本記事の整理)
対応事項 民間の発注での置き換え
①仕様書に要求事項を書く 相手に求める事項を依頼書や仕様に書く
②評価項目に反映する 委託先を比べて選ぶときの比較の項目に入れる
③生成AIの情報を得る 使うモデルやサービスと性能の情報を出してもらう(学習データの情報は相手が持っていないことがある)
④公共調達の政策に沿う 置き換えられない
⑤契約に取決めを書く 決めておくことを契約に書く

①と⑤は、そのまま使えます。②は、複数の委託先を比べるときに、求める事項を比べる項目に入れることに当たります。③は、使うモデルやサービスと、その性能の情報を求めるところまでになります。

④は持ち込めません。デジタル・スタートアップの評価は政府が決めた実施要領に従う手続で、デジタルマーケットプレイスはデジタル庁が運営する公共調達の仕組みだからです。民間の発注には、この手続がありません。自社で持っておく機能と外部に委託する機能の分け方は、「外部人材活用と内製化の進め方|自社で高めたい機能は3つ」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、5つの対応事項とチェックシートを、そのまま依頼書に写してしまうことです。④のように公共調達の手続を前提にした項目や、府省庁の外の人が使う場合の項目は、発注の中身によっては当てはまりません。調達チェックシートの33件のうち、まず基本項目の20件を読み、残りは自社の発注が条件に当たるかどうかで選ぶと進めやすくなります。

二つ目は、学習データの情報まで相手に求めてしまうことです。ガイドライン自身も、学習に使ったデータの情報は「取得に努める」にとどめています。学習に使ったデータや学習方法は、相手が既製のサービスを使っているなら相手の手元にあるとは限りません。相手が既製のサービスを使う場合は、使うモデルやサービスの名前と性能の情報を出してもらうことを先に決め、学習データについては相手が何を出せるのかを確かめておくと、認識をそろえやすくなります。

三つ目は、AIエージェントを作らせる発注に、調達のときに行うことをそのまま当ててしまうことです。AIエージェントなどは具体的対応事項の対象外で、かかるのはAIガバナンスの体制とリスクケースへの対応の節だけです。この場合は、問題が起きたときに誰が何をするのかを中心に、契約で決めておくとよいでしょう。

まとめ:生成AIの発注で確かめておきたい3つの点

外部人材活用で生成AIの仕事を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、相手に求める事項を依頼書に書き、問題が起きたときの扱いなど決めておくことを契約に書くこと。第二に、使うモデルやサービスと、その性能の情報を相手から出してもらうこと。第三に、頼む仕事がAIエージェントのように調達のときに行うことの対象外かどうかを、先に見分けておくことです。この3点を踏まえておけば、「依頼書に何を書けばよいか決めないまま契約してしまった」という事態を避けやすくなります。発注の条件の整理に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

求める事項を仕様と契約のどちらに書くかの切り分けから、発注条件を一緒に整理できます。相手が決まっていない段階でもご相談ください。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

このガイドラインは民間企業にも適用されますか

適用されません。対象者は生成AIの調達・利活用に関わる政府職員とされ、独立行政法人と指定法人にはこのガイドラインに沿って取り組むことが、地方公共団体には必要に応じて参考にすることが期待されています。*1 民間企業は、当てはまる項目を自分で選んで使うことになります。

第2.0版はいつから施行されていますか

2026年6月12日にデジタル社会推進会議幹事会で決定され、2026年9月1日から施行されています。*1 初版をもとにした社内の手順があれば、対象とする生成AIと対応事項を第2.0版で確かめ直しておきます。

任意追加項目は何のための項目ですか

「必要に応じ考慮した方が良い観点」とされ、加点項目として使うことを想定しています。*1 調達チェックシートに6件あり、契約チェックシートにはありません。民間の発注では、複数の委託先を比べるときの比較の項目として使えます。

生成AIを使う仕事の発注条件から相談したいときは

仕様に書くことと契約で決めることの切り分けから、ご相談いただけます。

リモートワークで働く社員の候補者はリラシクで、業務委託で開発に加わる専門人材はRemoguでお探しいただけます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版(PDF)(https://www.digital.go.jp/news/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8)。出典:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版(2026年6月12日デジタル社会推進会議幹事会決定)。位置付けと対象者の種別、2.2.2の対象範囲、2.2.3の対象者と主体の対応関係、6.3.2の調達時の対応事項、別紙3の調達チェックシートと別紙4の契約チェックシート、附則の施行日を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」初版(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/80419aea/20250527_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:同ガイドライン初版(2025年5月27日デジタル社会推進会議幹事会決定)。初版の2.2.2が対象をLLMを構成要素とするテキスト生成AIとしていたこと、初版の6.3.2の対応事項が4つだったことを参照(2026年9月確認)




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