LASSIC Media らしくメディア
外部人材活用と生成AI、調達時の対応事項は5つ
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 5つのうち持ち込めるのは4つ:企画者が生成AIシステムの調達時に行うことが5つ並んでいます。*1 民間の発注に置き換えられるのは、仕様に書く・評価に入れる・モデルの情報を取る・契約に書くの4つです。ただしモデルの情報のうち学習データの部分は外れます。
- 求める項目33件は3つに分かれる:調達チェックシートの要求事項33件は、基本項目20件、条件に当たれば基本項目になるもの7件、任意追加項目6件です。契約チェックシートの取決め事項は9件。この数えはこの記事で行いました。
- ルールを守らせるのは発注した政府の側:政府との契約により生成AIシステムを提供する事業者は、このガイドラインの直接の対象ではありません。*1 政府職員である企画者や提供者が、調達手続と契約と監督で守らせる形です。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
外部人材活用で生成AIを使う仕事を頼むとき、契約の前に何を決めておくか。官庁が作った文書に、決める項目が並んでいます。ただし全部がそのまま使えるわけではありません。
デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」です。*1 2025年5月27日の初版が2026年6月12日に第2.0版へ改定され、2026年9月1日から施行されています。*1*2
ただしずれが2つあります。1つめはこの文書が政府職員に向けて書かれていること、2つめは調達の相手が人ではなく生成AIシステムそのものであることです。書いてあることを先に並べ、そのずれの扱いを最後にまとめます。
目次
このガイドラインは政府職員に向けて書かれている
先に立ち位置を押さえます。この文書はデジタル社会推進標準ガイドラインのDS-920で、位置付けはNormative、つまり「政府情報システムの整備及び管理に関するルールとして遵守する内容を定めたドキュメント」です。*1
対象者は生成AIの調達・利活用に関わる政府職員で、種別は5つ、AI統括責任者(CAIO)、企画者、開発者、提供者、利用者です。*1 ただし利用者は、直接の対象者ではないがCAIOと企画者が作ったルールを守ることが求められる、と脚注にあります。*1
調達を動かすのは企画者です。生成AIの利活用を企画し、業務がシステムに要求するものを定義し、調達・開発・利活用を推進する者と説明されています。*1 以下の対応事項はすべて企画者が主語です。*1 なお提供者は、生成AIモデルを既存のシステムに組み込んで提供する側の政府職員です。*1
外部人材活用の側から見て大事なのは次の一文です。「政府との契約により政府に生成AIシステムを提供等する事業者は本ガイドラインの直接の対象ではなく」、企画者や提供者が調達手続や契約、監督を通じて遵守を確保する、と書かれています。*1
提供する事業者に直接ルールは降りてきません。発注した政府の側が手続と契約で守らせる形です。
対象の生成AIは2段構えで線が引かれている
次に範囲です。対象とする生成AIは「原則として、入力はテキスト及び音声、出力はテキスト、画像又は音声が可能なもの」です。*1
ここを外れるものの扱いが要点です。画像や動画等を入力するもの、動画等を生成するもの、環境を感知し自律的に行動するAIエージェント等については、*1 「具体的対応事項は定めないが、AIガバナンスの枠組みの対象とする」と書かれています。*1
その枠組みは3つの節です。4.1は政府全体のAIの利活用促進とAIガバナンスのための体制構築、4.2は各府省庁におけるAIガバナンス体制の整備、6.7は生成AIシステム特有のリスクケースへの対応。*1 リスクケースとは、生成AIのリスクが表に出た状態や兆候のうち重大な影響を及ぼし得るものです。*1
つまり2段構えです。全部の対応事項がかかるものと、3つの節だけがかかるものがあります。調達時の対応事項は前者にしか書かれていないので、AIエージェントを作らせる発注に調達の章は当たりません。これはこの記事の読み方です。
初版の範囲はこれより狭いものでした。対象は「大規模言語モデル(LLM)を構成要素とするテキスト生成AI」で、入力に音声は入らず、画像を出すものも入っていません。*2
調達時の対応事項は5つ
6.3.2「生成AIシステムの調達時の対応事項」には、①から⑤までの5つが並びます。*1 順に見ます。
①は、調達チェックシート(生成AIシステム用)に載る要求事項を、調達の応募者に対し求める事項として調達仕様書に盛り込むことです。*1 シートに無い事項も必要に応じ追加を検討します。*1
②は、総合評価方式や企画競争方式を採用する場合に、要求事項を評価項目にも反映することです。*1 どちらも調達の方式で、ガイドラインに説明はありません。
③は情報の取得です。「生成AIモデル、アーキテクチャ等の生成AIシステムの特性、生成AIシステムの主要性能指標情報等の情報を取得する」と書かれ、続けて「学習に使用されたデータや学習方法、データセットの情報も、取得に努める」とされています。*1 前半は取得する、後半は取得に努めるで書き分けられています。
④は公共調達の政策です。デジタル・スタートアップを評価することとされ、デジタル庁が運営するデジタルマーケットプレイスの活用も挙げられています。*1
⑤は、契約チェックシート(生成AIシステム用)の事項を契約書又は調達仕様書に盛り込むことの検討です。*1
初版では、この5つが4つでした。*2 増えたのは③で、改定履歴は6.3.2について制御性の強化で必要な内容を追記と書いています。*1 何を使って作るのかを企画者が先に押さえる項目です。これはこの記事の読み方です。
求める33件は3つに分かれ、契約側は9件
2枚のシートはガイドラインの後ろに付いています。以下の件数はシートの分類の列を数えたもので、ガイドラインが件数として書いているわけではありません。
| 分類 | 調達チェックシート | 契約チェックシート |
|---|---|---|
| 並んでいるもの | 要求事項 | 取決め事項 |
| 件数 | 33件 | 9件 |
| 基本項目 | 20件 | 9件 |
| 条件に当たれば基本項目 | 7件 | 0件 |
| 任意追加項目(加点項目) | 6件 | 0件 |
| 盛り込む先 | 調達仕様書 | 契約書又は調達仕様書 |
分類は2つではなく3つです。基本項目は「政府機関が調達する生成AIシステムに原則要求すべきと考えられる事項」、任意追加項目は「必要に応じ考慮した方が良い観点」で加点項目を想定したものです。*1
残る7件は、条件に当たったときだけ基本項目になります。*1 条件は5通りあり、不特定外部者(一般国民等)による府省庁外利用の場合が3件、個人情報やプライバシーの保護が必要な場合、知的財産等を取り扱う場合、生成AIモデルに学習を行わせる場合、高い信頼性が求められる場合が各1件です。*1 20件と7件と6件で33件になります。この数えはこの記事で行いました。
要求事項は3つの区分に分かれます。組織要件はAI事業者ガイドライン共通の指針の遵守、AIガバナンスの構築など。開発・運用工程要件はデータの取扱い、アウトプットの品質保証、ベンダーロックインの回避、生成AIモデルのアップデートの考慮など。生成AIシステムの基本機能要件は有害情報の出力制御、偽誤情報の出力・誘導の防止、公平性と包摂性、目的外利用への対処などです。*1
契約チェックシートの9件はすべて基本項目で、任意追加項目はありません。前半4件は入口と出口で、「インプット」「インプットの処理成果」「アウトプット」「アウトプットの処理成果」。*1 後半5件は「契約上の取決め」「ノウハウ」「成果物」「リスクケースが発生した場合」「期待品質が満たされなくなった場合」です。*1 4件と5件で9件になります。
民間の外部人材活用に持ち込めるのはどれか
最後にずれの話です。ガイドライン自身が、政府職員の種別と、総務省と経済産業省が出したAI事業者ガイドラインの主体との対応関係を表で示しています。*1 企画者と開発者はAI開発者又はAI提供者、利用者はAI利用者に対応するとされています。*1
ただし同じ表の脚注に、「政府向けである本ガイドラインと主に民間事業者を対象としたAI事業者ガイドラインでは、対応関係は一致しない場合がある」と書かれています。*1 読み替えができるとガイドラインが保証しているわけではありません。
2つめのずれのほうが大きい話です。この文書が対象とする調達は生成AIシステムで、外部人材活用で頼むのは人の仕事です。相手が既製のサービスを使うなら、買うのは人の時間であって生成AIではありません。これはこの記事の読み方です。
④は持ち込めません。デジタル・スタートアップの評価は政府が決めた実施要領に従う手続で、デジタルマーケットプレイスはデジタル庁が運営する公共調達の仕組みだからです。*1 民間の発注にこの手続はありません。これはこの記事の読み方です。
③は前半だけになります。どのモデルやサービスを使うかと性能の情報は相手から出せますが、学習に使ったデータや学習方法は、相手が既製のサービスを使っているなら相手の手元にあるとは限りません。①と⑤はそのまま、求める事項を仕様に書く、決めることを契約に書く、として残ります。この当てはめはこの記事のもので、ガイドラインにそう書かれているわけではありません。
自社で持つ機能と外に出す機能の切り分けは、記事「外部人材活用と内製化の進め方|自社で高めたい機能は3つ」で扱っています。
まとめ:5つのうち持ち込めるのは4つ
外部人材活用で生成AIの仕事を頼む前に何を決めるか。デジタル庁のガイドラインから読み取れることは4つです。第一に、調達時の対応事項は5つで、初版では4つでした。*1*2 第二に、調達チェックシートの要求事項33件は基本項目20件、条件に当たれば基本項目になるもの7件、任意追加項目6件に分かれ、契約チェックシートの取決め事項は9件です。この数えはこの記事で行いました。第三に、対象の生成AIは2段構えで、AIエージェント等は具体的対応事項の対象外、AIガバナンスの体制とリスクケースへの対応の節だけがかかります。*1 第四に、生成AIシステムを提供する事業者は直接の対象ではなく、企画者や提供者が調達手続と契約と監督で遵守を確保します。*1 民間の発注に置き換えられるのは、仕様に書く・評価に入れる・モデルの情報を取る・契約に書くの4つです。スタートアップの評価は公共調達の手続そのもので置き換えられず、モデルの情報のうち学習データの部分も、相手が既製のサービスを使うなら出てきません。これはこの記事の読み方です。
よくある質問
このガイドラインは民間企業にも適用されますか
適用されません。対象者は生成AIの調達・利活用に関わる政府職員とされています。*1 独立行政法人及び指定法人には準拠した取組が期待され、地方公共団体には必要に応じ参考とされることが期待されると書かれています。*1 民間企業は、当てはまる項目を自分で選んで使うことになります。
調達チェックシートと契約チェックシートは何が違いますか
調達チェックシートは調達仕様書に盛り込む要求事項を33件、契約チェックシートは契約書又は調達仕様書に盛り込むことを検討する取決め事項を9件並べたものです。*1 調達側の33件は、基本項目20件、条件に当たれば基本項目になるもの7件、任意追加項目6件に分かれます。この件数はこの記事が数えました。
AIエージェントを作らせる発注にも使えますか
調達の章はそのままでは当たりません。AIエージェント等については具体的対応事項は定めないとされ、AIガバナンスの枠組みの対象にとどまるからです。*1
生成AIを使う仕事の発注条件から相談したいときは
仕様に書くことと契約で決めることの切り分けから、ご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、必要な期間と範囲を決めたうえで、担当できる方をご提案します。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版(PDF)(https://www.digital.go.jp/news/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8)。出典:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版(2026年6月12日デジタル社会推進会議幹事会決定)。位置付けと対象者の種別、2.2.2の対象範囲、2.2.3の対象者と主体の対応関係、6.3.2の調達時の対応事項、別紙3の調達チェックシートと別紙4の契約チェックシート、附則の施行日の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」初版(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/80419aea/20250527_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:同ガイドライン初版(2025年5月27日デジタル社会推進会議幹事会決定)。初版の2.2.2が対象をLLMを構成要素とするテキスト生成AIとしていたこと、初版の6.3.2の対応事項が4つだったことの一次情報として(2026年9月確認)