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新規事業でフリーランス活用を始める前に決める目的と進め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 新規事業でフリーランス活用を考える前に、その事業で何を狙うのか(コスト削減か、新しい事業領域への進出か)を決めます。
- JUASの調査で新規事業を目的に挙げた企業は2025年度で13.5%、最も多いコスト削減は36.1%でした。
- 外部に頼む作業と期間、どうなれば成功とするかは、始める前に書いておきます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
新規事業を始めたいが、その分野に詳しい人が社内にいない。かといって、続くかどうか分からない事業のために正社員を採用するのはためらわれる——。新規事業を任された担当者は、こうした迷いを抱えがちです。そこで候補になるのがフリーランス活用です。フリーランス活用とは、会社に雇われずに個人で仕事を請け負う人に、開発などの作業を業務委託で任せることを指します。
社内にない経験を持つ人に、必要な期間だけ加わってもらえるのがフリーランス活用の使いどころです。ただし万能ではなく、頼む作業が決まっていなければ、経験のある人に加わってもらっても力を発揮してもらえません。本記事では、新規事業を担当するマネージャーに向けて、企業がDXで新規事業をどのくらい狙っているのか、目的ごとの効果の出方、フリーランス活用の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
新規事業でのフリーランス活用とは
新規事業にフリーランスの人に加わってもらう理由は、大きく2つに分かれます。一つは、社内にない経験を持つ人に加わってもらうためです。たとえば、他社から頼まれたシステムだけを作ってきた会社が、個人が申し込むWebサービスを始めるなら、申し込みの画面を作った経験のある人は社内にいないかもしれません。もう一つは、経験はあるものの人数が足りないためです。既存の仕事で手いっぱいの社員に、新規事業の開発まで任せるのは無理があります。
どちらの理由かで、探す相手も契約の期間も変わります。社内にない経験を求めるなら、どんな作業をしてきた人に来てほしいのかを細かく書くことになります。人数を増やすなら、社内の開発の進め方に合わせて作業してもらえるかが大事になります。人を探す前には、その新規事業の狙いも決めておきます。狙いがはっきりしないまま人を探し始めると、頼む作業を書き出せません。
企業はDXで新規事業をどのくらい狙うのか
企業が何を狙ってDX(デジタル技術による事業の変革)を進めているかは、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2026」から分かります。JUASは、企業の情報システム部門が集まってつくっている団体です。報告書にはDX推進の目的を7つに分けて尋ねた設問があり、2025年度は956社、2024年度は975社が答えています。*1
| DX推進の目的 | 2025年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 既存事業のコスト削減(業務の自動化など) | 36.1% | 42.1% |
| 既存事業の収益力向上(売上拡大など) | 20.3% | 17.1% |
| 新規事業や新たな事業領域への進出、事業モデルの再構築 | 13.5% | 11.3% |
| 顧客サービス価値向上 | 12.2% | 8.6% |
| 企業の風土改革、慣習の見直し | 11.5% | 14.7% |
| 既存事業におけるサービスの企画、開発 | 4.1% | 3.4% |
| 従業員満足度向上 | 2.3% | 2.9% |
最も多いのは「既存事業のコスト削減(業務の自動化など)」の36.1%で、「既存事業の収益力向上(売上拡大など)」の20.3%が続きます。「新規事業や新たな事業領域への進出、事業モデルの再構築」は13.5%で3番目でした。*1
ただ、新規事業は伸びています。2024年度の11.3%から13.5%に増えました。一方で、コスト削減は42.1%から36.1%へ減っています。*1 報告書も、目的の中心が業務効率化やコスト削減といった「守りのDX」から、新規事業や新しい収益源の創出を目指す「攻めのDX」へ移りつつある、と述べています。*1
なお、13.5%はDX推進の目的として新規事業を挙げた企業の割合です。新規事業に取り組んでいる企業がこれだけしかない、という意味ではありません。
目的ごとの効果の出方
報告書は、目的ごとに効果が出たかどうかも比べています。ここでの割合は、「期待以上の効果が得られている」と「期待どおりの効果が得られている」を合わせたものです。計算の際には、「効果を狙っていない」と答えた企業を除いています。*1 前の表の、目的として挙げた企業の割合とは別の数字です。
新規事業は、2024年度の17.1%から2025年度の21.7%へ増えました。ほかに大きく増えたのは、「既存事業におけるサービスの企画、開発」の22.9%から31.9%、「顧客サービス価値向上」の26.7%から33.0%でした。*1
反対に、「既存事業のコスト削減(業務の自動化など)」だけは43.7%から42.7%へわずかに減っています。報告書は、各企業が先行して取り組んできたため、効果が一定の水準に達して変化が小さくなっていると考えられる、と説明しています。*1 新規事業で効果を得た企業の割合は、ここに挙げたほかの目的より低い水準にとどまっています。
フリーランス活用をどう進めるのか
新規事業でフリーランス活用を進めるときは、次の3つを順に決めます。
1つ目は、その新規事業が7つの目的のどれに当たるかです。新規事業と呼んでいても、中身が今ある商品の売上を伸ばす取り組みなら、目的は「既存事業の収益力向上」に近く、社内に経験のある人がいるかもしれません。本当に新しい事業領域に出ていくのかを確かめてから、外部に頼むかどうかを考えます。
2つ目は、フリーランスの人に何を求めるかです。社内にない経験を求めるのか、経験はあるものの人数が足りないので人を増やすのか。社内にない経験を求める場合は、社員が一緒に作業する時間も見込んでおくと、契約が終わったあとも社員が同じ作業を続けられるようになります。
3つ目は、どうなれば期待どおりとするかです。たとえば「3か月で申し込み画面を公開する」のように、始める前に期待どおりの中身を書いておかないと、終わったあとに効果を評価できません。
つまずきやすい点
一つ目は、新規事業だからという理由で、作業を決めずに頼むことです。「新規事業の立ち上げを手伝ってほしい」という頼み方では、加わった人は何から手をつければよいのか迷ってしまいます。
二つ目は、調査の割合を自社の判断にそのまま使うことです。2025年度に答えたのは956社ですが、*1 そのなかに自社と同じ業種・同じ規模の企業がどれだけ含まれているかは、この設問の結果だけでは分かりません。他社の傾向は参考にとどめ、自社の新規事業で何を狙うのかは自社で決めます。
三つ目は、効果が出るまでの見通しを立てずに始めることです。効果を狙った企業のうち、新規事業で期待どおり以上の効果を得たのは21.7%でした。*1 最初から長い契約を結ぶより、契約期間を短めに区切り、その終わりに続けるかどうかを判断するほうが進めやすくなります。
正社員の採用との違い
正社員を採用するのか、フリーランス活用で進めるのかは、その事業を続けるかどうかが決まっているかで分かれます。続けると決まっているなら、経験を社内に残せる採用が合います。まだ試している段階なら、作業と期間を決めて外部に頼むほうが、事業の中身が変わったときに、頼む作業や期間を変えやすくなります。
気をつけたいのは、事業を続けると決めたあとも、開発を外部の人だけに任せたままにしておくことです。契約が終わったときに、作った仕組みを社内で直せる人がいなくなります。続けると決まった時点で、社員の採用を始めるか、社員に引き継ぐ作業を決めておきます。契約が終わるときの引き継ぎは「業務委託の契約終了時、アクセス権と成果物の扱い」で扱っています。
外部に委託するときに確認しておきたい点
フリーランス活用を新規事業で始めるときは、頼む作業と期間を先に書いておきます。「顧客が申し込む画面を作る仕事を3か月間」「データを移す仕組みを作る仕事を2か月間」——このくらいまで書ければ、求める経験の条件も決まり、そのまま候補者を探せます。事業を続けると決まっているのか、まだ試している段階なのかも、あわせて伝えておくと話が早く進みます。
新規事業は、途中で中身が変わることがあります。そのときに作業を追加するのか、期間を延ばすのか、いったん止めるのかを、どう決めるのかも契約の前に取り決めておきます。社内の誰がその判断をするのかを決めておくと、変更のたびに話が止まらずに済みます。
外部に頼む作業と社内に残す作業の分け方は「外部人材活用と内製化の進め方|自社で高めたい機能は3つ」、工数をどこまで数えるかは「外部人材活用のトラブル|社内工数と外部委託工数の違い」、加わってもらう人のスキルの確かめ方は「外部エンジニアのスキル確認、4つの軸で評価する」で整理しています。
まとめ:新規事業で確かめておきたい3つの点
新規事業でフリーランス活用を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、その新規事業がDX推進の7つの目的のどれに当たるかを決めること。第二に、社内にない経験を求めるのか、人数を増やすのかを決め、頼む作業と期間を書き出すこと。第三に、何をもって期待どおりとするかを、始める前に書いておくことです。この3点を踏まえておけば、「人に加わってもらったのに、何を任せればよいか決まらない」という事態を避けやすくなります。頼む作業の書き出し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査はフリーランス活用について書いていますか
書いていません。調査が尋ねているのは、企業がDXを何のために進めているかと、その効果の出方までです。*1 本記事の進め方は、調査の目的の分類を参考に整理したものです。
JUASの調査は毎年出ていますか
毎年行われ、報告書として公開されています。*2 新しい年度の報告書が出たら、DX推進の目的の割合がどう動いたかを見直すと、他社の狙いの変化をつかめます。
企画の段階からフリーランスの人に加わってもらえますか
加わってもらうことはできますが、企画の段階は作業の中身が変わりやすい時期です。市場調査の計画づくりや画面の試作のように、期間の短い作業に区切って頼むと、途中で中身が変わっても契約を見直しやすくなります。
社内では誰が窓口になればよいですか
新規事業の中身を決められる人が窓口になるのがおすすめです。作業を追加するのか止めるのかを判断できる人が窓口にいないと、加わった人が確認を待つ時間が増えてしまいます。
新規事業で頼む作業を相談したいとき
「顧客が申し込む画面を作る仕事を3か月間」のような、作業と期間の書き出しからご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2026」。図表3-1-6「DX推進の目的」の2025年度(956社)と2024年度(975社)の割合、および3.1節本文の効果に関する記述を参照。表と図は示された数値をもとに作成(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」の案内ページ(https://juas.or.jp/library/research_rpt/)。調査が毎年実施され報告書として公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(https://juas.or.jp/)。発行団体の確認として(2026年9月確認)