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外部人材活用のセキュリティ対策、営業秘密を見せた後のリスク
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 営業秘密の語が出てくる号は第4号から第10号まで:不正競争防止法第2条第1項は、不正競争に当たる行為を号ごとに並べていて、営業秘密の語が出てくるのは第4号から第10号までの7つです。*1 号ごとに、どういう人がどう手にした場合かが違います。*1
- 第2条第1項で示された人の行為を挙げるのは第7号:第7号は、営業秘密保有者から営業秘密を示された場合に、不正の利益を得る目的か、保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用または開示する行為を挙げています。*1 目的のない漏えいを、示された人の行為として挙げた号は、第2条第1項第4号から第10号までには見当たりません。
- 請求は第3条と第4条、罰則は第21条第2項の別の要件:第3条第1項は、不正競争によって営業上の利益を侵害され、またはそのおそれがある者に侵害の停止または予防の請求を認め、第4条第1項は、故意または過失による侵害に賠償の責任を負わせています。*1 罰則の第21条第2項は、別に要件を置いています。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
開発の一部を契約先の技術者と進めるとき、設計書やソースコードを渡すことになります。渡した先で何かあったとき、法律は誰の何を問題にするのか。そこが分かると、契約書と記録に何を残しておくかを考える手がかりになります。
外部人材活用のセキュリティ対策には、アクセス権限や端末の管理といった技術の側もありますが、この記事が扱うのは契約と記録の側で、不正競争防止法の条文から見ます。
今回読んだのは、不正競争防止法の第2条第1項第4号から第10号まで、第2条第6項、第3条第1項及び第2項、第4条第1項、第5条第2項、第19条第1項、第21条第2項です。この記事でいう今回参照した条文は、この範囲を指します。
何を営業秘密として管理するかや、その管理の措置は、この記事では扱いません。また第7号の条文には、示された側が会社か個人かは書かれていません。この記事では、営業秘密保有者から営業秘密を示された側を、会社か技術者かを問わず、示された人と書きます。
目次
営業秘密に関する号は、どういう人がどう手にしたかで分かれる
不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。*1 自社の設計書やソースコードがこれに当たるかどうかの判断は、この記事では扱いません。
次に見るのは第2条第1項です。不正競争として並ぶ行為のうち、営業秘密の語が出てくるのは第4号から第10号までの7つです。*1 第4号から第9号までの6つは、どういう人がどういう経緯で手にした場合かを号ごとに書き分けています。*1 第10号は、第4号から第9号までの行為のうち技術上の秘密(営業秘密のうち技術上の情報)を使用する行為によって生じた物を、譲り渡すなどの行為を挙げています。*1
第4号は「窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為」を営業秘密不正取得行為と名付け、その営業秘密を使用または開示する行為も同じ号に入れています。*1
第5号と第6号は、どちらも営業秘密不正取得行為が介在した情報を扱う人の話ですが、知った時点が違います。第5号は「営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為」で、取得の場面を含みます。*1 第6号は「その取得した後に」知った場合、または重大な過失により知らない場合で、対象は使用と開示だけです。*1 なお、重大な過失の意味は、今回参照した条文には書かれていません。
示された人の行為を挙げるのが第7号で、目的の定めが付く
第7号は、条文が次のように書いています。「営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為」。*1
この号が挙げているのは、営業秘密保有者から示された人の行為です。*1 自社の設計書やソースコードが営業秘密に当たる場合、それを見てもらう契約先は、この示された人に当たるという読み方になります。
目的は2つあり、「又は」でつながれています。*1 不正の利益を得る目的と、その営業秘密保有者に損害を加える目的です。*1 示されたこと自体は、この号では行為として挙げられていません。
では、示された人が目的なしに、たとえば不注意で営業秘密を漏らした場合はどうか。第7号は目的を要件に置いています。*1 目的がなければ、第7号の書き方には当たりません。示された人のそうした行為を挙げた号は、第2条第1項第4号から第10号までには見当たりません。
不正競争で営業上の利益を侵害されると、差止と損害賠償を請求できる
どの号に当たるかを読むのは、相手の行為が不正競争に当たるかどうかがそこで決まるからです。第3条と第4条は、号を分けずに「不正競争」と書いています。*1 第3条の見出しは差止請求権です。*1
| 条文 | 条文が定めていること | 条文が置いている条件 |
|---|---|---|
| 第3条第1項 | 侵害の停止または予防の請求 | 不正競争によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがあること |
| 第3条第2項 | 侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却などの請求 | 第3条第1項の請求をするに際してすること |
| 第4条第1項 | 損害の賠償 | 故意または過失により不正競争を行って、他人の営業上の利益を侵害したこと |
| 第5条第2項 | 侵害した者が受けた利益の額を、損害の額と推定する | その者が侵害の行為により利益を受けていること |
| 第21条第2項 | 10年以下の拘禁刑もしくは2000万円以下の罰金、またはその両方 | 同項第1号から第5号までのいずれかに当たること。第2条第1項の号とは別の要件 |
罰則は別に置かれています。第21条第2項は、同項の各号のいずれかに当たる者を「十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」としています。*1
同項第1号と第2号が対象にしているのは、「営業秘密を営業秘密保有者から示された者」です。*1 第1号は、同じ2つの目的のどちらかで任務に背き、記録媒体などの横領、複製の作成、消去の仮装のいずれかで営業秘密を領得した場合、第2号はそうして領得した営業秘密を使用または開示した場合です。*1 役員や従業者という限定は付いていません。同項第3号と第4号は、営業秘密保有者の役員または従業者と、そうであった者に限っています。*1 契約先の技術者がここでいう従業者に当たるかは、今回参照した条文には書かれていません。
秘密を守る義務への違反が出てくるのは、その先で取得した人の号
第8号のかっこ書きは、営業秘密不正開示行為という語を定義しています。*1 定義は「前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう」で、前号と同号は第7号を指します。*1 「又は」の前は第7号と同じく目的が要件に入っています。*1 後ろの、秘密を守る法律上の義務に違反して開示する行為には、目的の定めが置かれていません。契約で定めた義務がここでいう法律上の義務に当たるかは、今回参照した条文には書かれていません。
この語が使われているのは第8号と第9号で、どちらも、営業秘密不正開示行為が関わった営業秘密を取得した人を挙げています。*1 第8号は、それを知って、または重大な過失により知らないで取得し、使用し、開示する行為、第9号は、取得した後にそれを知った場合、または重大な過失により知らない場合の使用と開示です。*1 秘密を守る法律上の義務に違反して開示した本人を単独で挙げた号は、第2条第1項にはありません。義務への違反は、その先で取得した人の号の中に出てきます。これはこの記事の読み方です。
その先で取得した人には、第19条第1項第7号の適用除外もあります。第2条第1項第4号から第9号までの不正競争について、第3条から第15条まで、第21条及び第22条の規定を適用しない場合です。*1 取引によって取得し、「その取得した時に」不正な開示や取得が関わっていることを知らず、知らないことにつき重大な過失がない人が、権原の範囲内で使用または開示する行為が対象です。*1 第9号もこの範囲に入るので、取得した後に知った人でも、条件を満たせば差止や損害賠償の規定は適用されません。ここでいう権原が何を指すかは、今回参照した条文には書かれていません。
外部人材活用のセキュリティ対策で、契約と記録に残す3点
条文は、契約書に何を書くべきかを定めていません。ここからは、条文の書き分けを手がかりにした、この記事の読み方です。
1つめは、誰に何を示したかを残すことです。第7号も第21条第2項も、対象を「その営業秘密」と書いています。*1 誰にどの情報を示したかが分からなければ、第7号に当たるかを説明する材料がありません。
2つめは、秘密を守る義務を契約に書くことです。第8号の定義には、秘密を守る法律上の義務に違反して開示する行為が入っています。*1 これに契約上の義務が当たるかは条文に書かれていないので、書いておくのは当たる場合に備えるためです。
3つめは、示された人がさらに別の人へ示す場合の扱いを決めておくことです。第4号は、開示する行為に「秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む」としています。*1 契約先が再委託先へ秘密を保持したまま示すことも、条文でいう開示に入ります。*1 再委託の可否と、示してよい範囲を契約で決めておくことになります。
何を営業秘密として扱うかの整理は、記事「営業秘密の秘密管理措置と情報漏えい対策の違い」で扱っています。
まとめ:号ごとに、どういう人がどう手にしたかが違う
今回参照した条文から読み取れることは5つです。第一に、不正競争防止法第2条第1項で営業秘密の語が出てくる号は第4号から第10号までの7つで、第4号から第9号までの6つは、どういう人がどういう経緯で手にした場合かを書き分けています。*1 第二に、第2条第1項のうち、営業秘密保有者から示された人の行為を挙げているのは第7号で、不正の利益を得る目的か保有者に損害を加える目的を要件に置いています。*1 第三に、示された人が目的なしに漏らした場合を挙げた号は、第2条第1項第4号から第10号までには見当たりません。第四に、不正競争で営業上の利益を侵害された者などは第3条の差止を請求でき、第4条第1項は故意または過失による侵害に賠償の責任を負わせ、罰則の第21条第2項は別に要件を置いています。*1 第五に、秘密を守る法律上の義務に違反した開示は第8号の営業秘密不正開示行為に入りますが、第8号と第9号が挙げるのは、その先で取得した人です。*1 そのうえでこの記事は、誰に何を示したか、秘密を守る義務、再委託の扱いの3点を契約と記録に残すことを勧めます。
よくある質問
契約先の技術者に営業秘密を示すこと自体が、不正競争になりますか
第2条第1項第4号から第10号までに、保有者が示すこと自体を挙げた号はありません。第7号が挙げているのは、示された場合に、不正の利益を得る目的か保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用または開示する行為です。*1
契約先が秘密保持の約束に違反して漏らしたら、受け取った相手に差止や損害賠償を求められますか
条文から言えるのは条件までです。第8号の定義に入るのは、秘密を守る「法律上の義務」に違反した開示で、契約で定めた義務がこれに当たるかは、今回参照した条文には書かれていません。当たる場合、第8号と第9号は、それを知って、または重大な過失により知らないで取得した人などの行為を不正競争に挙げています。*1 ただし、取引によって取得し、その取得した時に知らず重大な過失もなかった人の、権原の範囲内での使用や開示には、第19条第1項第7号の適用除外があります。*1
契約先の技術者が不注意で漏らした場合も、不正競争になりますか
第7号は、不正の利益を得る目的か、保有者に損害を加える目的を要件に置いています。*1 目的のない漏えいを、示された人の行為として挙げた号は、第2条第1項第4号から第10号までには見当たりません。契約上の責任は、今回参照した条文の範囲に入っていません。
渡す範囲を決めてから人を探したいとき
何をどこまで示し、再委託をどう扱うかを決めたうえで、参画してもらう役割を整理するところからご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:不正競争防止法(平成5年法律第47号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000047)。出典:不正競争防止法(平成5年法律第47号)。第2条第1項第4号から第10号まで(営業秘密に係る不正競争)、第2条第6項(営業秘密の定義)、第3条第1項及び第2項(差止請求権)、第4条第1項(損害賠償)、第5条第2項(損害の額の推定等)、第19条第1項(適用除外)、第21条第2項(罰則)の一次情報として参照(2026年9月確認)