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2026.09.24 採用支援コラム

業務委託エンジニアの既存システム改修、所有者と著作権者の違い




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 著作権は譲渡でき、著作者人格権は譲渡できない:著作権法第61条は、著作権を譲渡できるとし、第27条又は第28条の権利が譲渡の契約で特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定するとしています。*1 第59条は、著作者人格権は譲渡することができないとしています。*1 特掲は契約書での明記、留保は譲渡した側に残ることと、この記事では読みます。
  • 所有者の例外には、今回参照した条文では決まらない点が4つある:第47条の3第1項と第47条の6第1項は、プログラムの著作物の複製物の所有者が、そのプログラムを自らコンピュータで実行するために必要と認められる限度で、複製と翻案をすることを認めています。*1 この記事では、これを所有者の例外と呼びます。自社が所有者に当たるか、限度がどこまでか、クラウドで何が複製物に当たるか、所有者に代わって業務委託エンジニアが作業してよいかは、今回参照した条文には書かれていません。
  • 著作権と同一性保持権で、許諾や同意の相手が違う:所有者の例外に頼れるかが今回参照した条文では決まらないので、複製の権利と翻案の権利のうち自社が持っていないものは、それぞれの権利を持つ著作権者から、業務委託エンジニアの作業と改修後の利用も含めて許諾を得ておきます。同一性保持権は所有者の例外と別の問題なので、著作者から同意を得ておきます。これはこの記事の読み方です。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

自社で動いている既存システムを、それを作った前の開発会社とは別の業務委託エンジニアに改修してもらう。そのとき、前の開発会社が作ったプログラムを、自社の判断で書き換えてよいのかという問いが出てきます。

著作権法は、プログラムを複製する権利や翻案する権利を著作権とし、改変についての同一性保持権を著作者人格権という別の権利としています。*1 そのうえで、プログラムの複製物の所有者には、一定の範囲で複製と翻案を認めています。*1 この記事は、その範囲と、範囲に頼れないときの許諾や同意の相手を、条文を手がかりに考えます。

今回読んだのは、著作権法のうちこの記事で条番号を挙げた条文で、この記事でいう今回参照した条文はこの範囲を指します。翻案の定義の有無だけは全文で確かめました。

この記事では、既存システムのソースコードを第2条第1項第10号の2のプログラムとして扱います。条文の電子計算機はコンピュータのことです。

ふたを外したハードディスクドライブを斜め上から写した写真。銀色の円盤が見え、人も読める文字も写っていない

著作権は譲渡でき、著作者人格権は譲渡できない

著作権法第2条第1項第2号は、著作者を「著作物を創作する者」と定義しています。*1 第17条第1項は、著作者が、第18条から第20条までの各第1項の権利である著作者人格権と、第21条から第28条までの権利である著作権を享有する(持つ)としています。*1

第21条と第27条は、複製する権利と、翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を、著作者が専有する(独占して持つ)としています。*1 翻案という語を定義した規定は、著作権法にはありません。第2条第1項第11号は、翻案などにより創作した著作物を二次的著作物と呼んでいます。*1 翻案は、もとの著作物から新しい著作物を創作する行為の1つとして書かれています。プログラムの書き換えのどこからが翻案に当たるかは、今回参照した条文には書かれていません。

第28条は、二次的著作物の原著作物(もとの著作物)の著作者が、その利用について、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利を専有するとしています。*1 改修後のプログラムが二次的著作物に当たれば、その利用にも、もとのプログラムの権利が及ぶと読めます。

第61条は、著作権はその全部又は一部を譲渡することができるとし(第1項)、著作権を譲渡する契約で第27条又は第28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定するとしています(第2項)。*1 特掲は譲渡の対象として契約書に明記されていること、留保は譲渡した側に残ること、推定は反対の事情があれば覆り得る扱いと、この記事では読みます。

一方で第59条は、著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡することができないとしています。*1 一身に専属するとは、著作者本人だけに属することと読めます。著作権を譲り受けても、同一性保持権は著作者に残ります。著作権を持つ人を、条文の語で著作権者と呼びます。譲渡があれば、著作権者と著作者が別の人になることがあります。

既存システムの改修で、著作権法の権利を誰が持つかを示した図。著作権(第21条の複製する権利、第27条の翻案する権利)は第61条で譲渡でき、特掲がなければ譲渡した者に留保と推定される。著作者人格権の同一性保持権(第20条)は第59条により譲渡できず、第20条第2項第3号と第4号の改変は対象外。下段は、第47条の3第1項と第47条の6第1項の所有者の例外で、所有者に当たるか、必要と認められる限度、代わりに作業する人が入るかは条文に書かれていない。

所有者の例外は、自ら実行するために必要と認められる限度まで

第47条の3第1項は「プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において実行するために必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができる」としています。*1 同項の後半は、第113条第5項(侵害して作られた複製物などを業務上使う行為についての条)が適用される場合を除いています。*1 正規に納品された複製物なら、この除外には当たらないと読めます。

翻案については、第47条の6第1項が、第47条の3第1項により複製できる場合には、同じ規定の例により翻案もできるとしています(同項第6号)。*1 この記事では、2つの項が所有者に複製と翻案を認めていることを所有者の例外と呼びます。2つの項は第50条とともに、著作権の制限という題名の款(法律の中の区分)に入っています。*1 題名から、この款は許諾なしで利用できる場合を定めた部分と読めます。読んだのはこの款のうち3つの条だけです。

著作権法で、プログラムの改修に関わる主な条文(著作権法の条文。2026年9月24日確認)
条文 対象 条文が置いている条件や効果
第17条第1項 著作者 著作者人格権と著作権を享有する
第61条第2項 著作権を譲渡する契約 第27条又は第28条の権利が特掲されていないときは、譲渡した者に留保と推定
第59条 著作者人格権 譲渡することができない
第15条第2項 法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成するプログラム 別段の定めがない限り、著作者は法人等
第47条の3第1項 プログラムの著作物の複製物の所有者 自ら電子計算機において実行するために必要と認められる限度で複製できる
第47条の6第1項 第47条の3第1項により複製できる場合 同じ規定の例により翻案できる
第20条 著作者 意に反して改変を受けない。第2項各号の改変には第1項を適用しない
第63条 著作権者 他人に利用を許諾でき、許諾を得た者は許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できる

複製できるのは所有者で、著作権者であることは求められていません。ただし、所有者の例外に頼れるかについては、今回参照した条文では決まらない点が4つあります。自社が所有者に当たるか(媒体やサーバーを持つか借りるかで変わり得ると読めます)、必要と認められる限度がどこまでか、クラウドで動くプログラムでは何が複製物に当たるか、所有者に代わって業務委託エンジニアが作業してよいかです。「自ら」が付いているのは「実行する」のほうで、代わりの人の作業については書かれていません。

同一性保持権は、所有者の例外とは別に確かめる

第20条(条の見出しは同一性保持権)第1項は「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」としています。*1 題号は著作物の題名のことです。第50条は「この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない」としています。*1 この款は、上で見た著作権の制限の款です。所有者の例外で複製や翻案ができても、改修が同一性保持権に触れるかは、第20条で別に確かめます。

第20条第2項は、各号の改変には第1項を適用しないとしています。*1 改修に関わり得るのは、特定の電子計算機では実行し得ないプログラムの著作物をその電子計算機で実行し得るようにするため、又はより効果的に実行し得るようにするために必要な改変(第3号)と、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変(第4号)です。*1 機能の追加や不具合の修正がこれらに当たるかは、今回参照した条文には書かれていません。

業務委託エンジニアに既存システムの改修を頼む前の3点

ここからは、条文を手がかりにした、この記事の読み方です。

1つめは、著作者を確かめることです。第15条第2項は「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」としています。*1 法人等は、同条第1項が法人その他使用者(雇い主)を指して使う語です。*1 要件に当たらない部分、たとえば再委託先の会社の業務として書かれた部分や、個人事業主のように会社に雇われていない人が書いた部分は、著作者が別になり得ます。受託開発で発意がどちらにあるかは、今回参照した条文には書かれていません。前の開発会社に、どの部分を誰がどの会社の業務として書いたかを尋ねておきます。

2つめは、複製と翻案の権利を誰が持っているかを確かめることです。著作者から前の開発会社へ、前の開発会社から自社へと著作権の譲渡があったかを契約書で読みます。第27条と第28条の権利は、それぞれ明記のない譲渡があれば、その譲渡をした側に残っていると推定されます。複製の権利は明記がなくても譲渡に含まれ得るので、複製と翻案で権利を持つ人が分かれることがあります。

3つめは、許諾と同意を、業務委託エンジニアの作業も含めて得ておくことです。第63条第1項は、著作権者は他人に対しその著作物の利用を許諾することができるとし、第2項は、許諾を得た者は許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できるとしています。*1 権利は著作者が専有するとされているので(第21条、第27条)、所有者の例外に当たらない複製や翻案には、権利を持つ著作権者の許諾が要ると読めます。そこで、自社が持っていない複製と翻案の権利は、それぞれの著作権者から、業務委託エンジニアの作業と改修後の利用も含めた利用方法と条件で許諾を得ておきます。

同一性保持権については、許諾とは別に、著作者から同意を得ておきます。第20条第1項が改変を受けないとしているのは、著作者の意に反する場合です。*1 どの改修について誰が作業するのかを示して同意を得ておけば、その改修は意に反する改変には当たらないと読め、第20条第2項の号に当たるかを決めずに進められます。

著作権の譲渡や同一性保持権を契約でどう扱うかは、記事「業務委託エンジニアの参画後の成果物と著作権」で扱っています。

まとめ:所有者の例外の限度と、許諾や同意の相手

今回参照した条文から読み取れることは5つです。第一に、著作権は第61条により譲渡できますが、第27条又は第28条の権利は特掲されていなければ譲渡した者に留保されたものと推定されます。*1 第二に、第59条は、著作者人格権は譲渡することができないとしています。*1 第三に、法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成したプログラムの著作者は、別段の定めがない限りその法人等です。*1 第四に、所有者の例外は、自ら実行するために必要と認められる限度での複製と翻案を認めています。*1 ただし、頼れるかについては今回参照した条文では決まらない点が残ります。第五に、著作権者は利用を許諾でき(第63条)、所有者の例外の規定は著作者人格権に影響しないとされます(第50条)。*1 この記事の読み方としては、自社が持っていない複製と翻案の権利は各著作権者から、業務委託エンジニアの作業と改修後の利用も含めて許諾を得て、著作者からは同意を得ておきます。

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よくある質問

前の開発会社が権利を持っていても、業務委託エンジニアに改修してもらえますか

第63条第2項は、許諾を得た者は、許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できるとしています。*1 自社が持っていない複製と翻案の権利について各著作権者から業務委託エンジニアの作業も含めた許諾を得て、著作者の同意も得ていれば、その範囲で改修を進められる、という読み方になります。

著作権を譲り受けていれば、自由に改修できますか

自由にとまでは言えません。第61条第2項により、第27条又は第28条の権利は、特掲されていなければ譲渡した者に留保されたものと推定されます。*1 また第59条は、著作者人格権は譲渡することができないとしています。*1 特掲されていても同一性保持権は著作者に残るので、同意を得ておく、という読み方です。

前の開発会社の社員が書いたプログラムの著作者は誰ですか

第15条第2項は、法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成したプログラムの著作者を、別段の定めがない限りその法人等としています。*1 この要件に当たれば著作者は前の開発会社で、当たるかどうかは前の開発会社に尋ねて確かめる、という読み方になります。

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出典

  1. *1 参考:著作権法(昭和45年法律第48号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)。出典:著作権法(昭和45年法律第48号)。第2条第1項第2号(著作者)、第10号の2(プログラム)、第11号(二次的著作物)、第15条(職務上作成する著作物の著作者)、第17条第1項(著作者の権利)、第18条・第19条(条の見出し)、第20条(同一性保持権)、第21条(複製権)、第27条(翻訳権、翻案権等)、第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)、第47条の3第1項(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)、第47条の6第1項(翻訳、翻案等による利用)、第50条(著作者人格権との関係)、第59条(著作者人格権の一身専属性)、第61条(著作権の譲渡)、第63条第1項及び第2項(著作物の利用の許諾)、第113条第5項(侵害とみなす行為)の一次情報として参照。翻案の定義の有無は全文で確認(2026年9月確認)




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