LASSIC Media らしくメディア

2026.09.29 採用支援コラム

リモート採用の社内合意|現場責任者と合わせる指示と評価の材料




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 現場責任者とは、指示の出し方・レビューの進め方・評価の材料と相談の場の3つを、採用の前に決めておきます。
  • 部下のいる課長の68.8%が、部下とのコミュニケーションが以前よりも必要になっていると答えています。
  • 指示は目的と完了の条件を書いて渡し、時間外に送る連絡の扱いもあわせて決めておきます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

リモートで働く人を採る方針には賛成でも、顔を合わせない部下にどう指示を出せばよいのかが分からない。レビューや評価も、今のやり方のままでよいのか決まっていない——。開発チームにリモートで働くエンジニアを迎えるときは、配属先でこうした戸惑いが起こりがちです。リモート採用の社内合意のうち現場責任者との合意とは、採用した人を受け入れるチームのリーダーや課長と、日々の指示・レビュー・評価のやり方をどう変えるかを、採用の前に決めておくことです。

社内合意というと経営層や人事への説明が先に浮かびますが、採用した人と毎日やり取りするのは配属先の現場責任者です。ここで段取りが決まっていれば、入社した週から仕事を任せやすくなります。ただし万能ではなく、就業規則や評価制度そのものを変える話は、人事や経営層と決めることになります。本記事では、開発の現場を回すマネージャーに向けて、現場責任者が抱えている事情、リモートで働く側が困りやすいこと、指示・レビュー・評価の変え方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

紺色の背景に、丸めた白い紙と白い紙飛行機が並んでいる写真。人も文字も写っていない

現場責任者との合意とは

リモート採用の社内合意で最後に残りやすいのが、配属先の現場責任者との話し合いです。ここでいう現場責任者は、採用した人を受け入れる開発チームのリーダーや課長を指します。就業規則や評価制度を決める立場ではありませんが、仕事の割り振り、成果物の確認、評価の材料になる日々の記録は、この人の手元にあります。

現場責任者と決めておきたいのは、大きく3つです。1つ目は日々の指示の出し方、2つ目はレビューの進め方、3つ目は評価の材料と相談の場です。どれも、同じ部屋で働いていれば言葉にしなくても回っていたものです。リモートで働く人を迎えると、その回し方をあらためて決める必要が出てきます。

厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」は、テレワークを効果的に進めるための人材育成の項で、「労働者が自律的に働くことができるよう、管理職による適切なマネジメントが行われることが重要」としています。*3 部署ごとの反対と確かめる相手は「リモート採用の社内合意が進まない理由と、反対への答え方」で、経営層への説明は「リモート採用の社内合意、経営層に説明する順番と試行の決め方」で扱っています。

現場責任者が抱えている事情

労働政策研究・研修機構(JILPT)は、2020年11月下旬から12月上旬にかけて、週35時間以上働く20〜65歳の人にWeb調査を行いました(有効回答10,998)。*1 この中で管理職に、統括する職場や仕事の現状を7つの項目で尋ねています。次の図は、部下のいる課長にあたる「課長相当(ライン職)」609人の回答です。

部下のいる課長(課長相当・ライン職609人)が、統括する職場や仕事の現状として「あてはまる」と答えた割合の横棒グラフ。部下の心や気持ちへの配慮が必要になっている77.8%、部下の能力のばらつきが大きい73.9%、部下とのコミュニケーションが以前よりも必要になっている68.8%、残業削減や年休取得促進のため管理職が部下の業務をフォローしている59.6%、部下の人事評価が難しい55.3%、部下が育たない52.9%、働く時間や場所に制約のある部下が増えている45.5%。出典は労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.222」図表4-1-24(2020年11〜12月のWeb調査)。

最も多いのは「部下の心や気持ちへの配慮が必要になっている」の77.8%で、「部下の能力のばらつきが大きい」73.9%、「部下とのコミュニケーションが以前よりも必要になっている」68.8%が続きます。「部下の人事評価が難しい」も55.3%でした。*1 課長の多くは、リモートで働く人を迎える前から、コミュニケーションと評価に手間がかかると感じていることになります。

同じ調査では、部下の仕事の進捗状況を「見える化」して情報共有する取り組みについても聞いています。課長相当(ライン職)のうち22.3%が「取り組んでいない」と答えました。*1 進み具合を見える形にしていないチームにリモートで働く人が加わると、状況を知る手段は課長からの声かけだけになりがちです。合意の場では、負担を増やさない段取りを一緒に示すと話が進みやすくなります。

リモートで働く側が困ること

リモートで働く側が何に困るかを知っておくと、決める項目の優先順位を付けやすくなります。総務省の「令和3年版 情報通信白書」は、2021年の調査研究で、テレワークをした人286人にテレワークのときに容易にできることを尋ねた結果を載せています。*2

「容易に行える」側で多かったのは、作業に必要な通信や機器環境をそろえること(54.2%)や、作業やプロジェクトを期限どおりに完成させること(50.7%)でした。反対に、上司や部下、同僚と気軽に相談や会話することは32.9%が、上司や部下、同僚と共同で作業を行うことは32.2%が「容易に行えない」側を選んでいます。*2 一人で仕上げる作業よりも、相談と共同作業のほうに困りやすいことが分かります。

先のJILPTの調査でも、在宅勤務をした2,375人が仕事で不安に感じたこととして、「上司や同僚とコミュニケーションを取ること」35.7%、「同僚の仕事の進捗が見えないこと」28.5%、「チームワークや信頼関係を維持すること」21.0%を挙げています。*1 調査が違うので単純には比べられませんが、どちらの結果も、指示やレビューの受け渡しと、気軽に相談できる場をどう作るかが要になることを示しています。

日々の指示はどう変わるのか

同じ部屋で働いていると、指示は短い一言で済み、足りない部分はその場で補えます。リモートではこの補足が届きにくくなるため、指示を出す時点で、目的・完了の条件・期限・迷ったときの相談先までを書いて渡すのが基本になります。課題管理ツール(作業を1件ずつ登録して進み具合を記録する仕組み)を使っているチームなら、1件の課題にこの4つを書く欄を設けておくと、書き漏れが減ります。

厚生労働省のガイドラインは、テレワークでも適切な業務指示ができるよう、管理職のマネジメント能力の向上に取り組むことが望ましいとしています。例として、管理職へのマネジメント研修や、「仕事の進め方として最初に大枠の方針を示す」など、部下が自律的に仕事を進められる指示の仕方を挙げています。*3 細かい手順を毎回伝えるよりも、何のための作業で、どこまでできれば終わりかを先に共有するほうが、離れていても仕事が進みます。

指示を送る時間帯も、現場責任者と決めておきたい点です。ガイドラインは、テレワークで長時間労働が生じる要因として、時間外や休日に業務の指示や報告がメールなどで行われることを挙げ、「役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効」としています。*3 チャットで夜に指示を送るのが習慣になっているチームでは、送ってよい時間帯と、時間外に届いた連絡に翌朝まで応じなくてよいことを、採用の前に決めておきます。

レビューの進め方

開発の現場で、指示と同じくらいやり方が変わるのがレビューです。コードレビュー(書いたプログラムをほかの人が読んで確かめる作業)を、隣の席で画面を見ながら説明する形で進めてきたチームは、リモートでは文字のやり取りが中心になります。変更の内容と確認してほしい点を依頼する側が書き、レビューする側が指摘を文字で返す形です。

文字のやり取りにすると、返すまでの時間が読みにくくなります。現場責任者とは、レビューを依頼されてから返すまでの目安、誰がレビューを担当するか、指摘が多くて文字では伝わりにくいときの扱いを決めておきます。共同作業に困りやすいという調査の結果のとおり、設計の考え方をすり合わせるレビューは、画面を共有した打ち合わせで行うほうが早く片付くことがあります。文字で返すものと、打ち合わせで返すものを分けておくと迷いません。

レビューの担当を現場責任者1人に集めないことも大切です。リモートで働く人からの依頼がすべて課長に集まると、課長の手が空くまで作業が止まります。チームの中で、同じ技術に詳しい先輩のエンジニアをレビューの担当に決めておくと、課長の負担も分けられます。レビューの観点の決め方は「外部エンジニアのコードレビューと技術レビューの違いと進め方」でも扱っています。

評価と相談の場の決め方

部下の人事評価が難しいと感じている課長が半数を超えていたことを考えると、リモートで働く人の評価は、現場責任者がとくに気にかける点です。*1 評価制度そのものを変えるのは人事の役割なので、現場責任者と決めるのは、評価の材料に何を使うかと、いつ振り返るかです。働きぶりを目で見られない分、仕上げた課題、レビューのやり取り、期限の守り方のように、記録に残るものを材料にすると判断がぶれにくくなります。

相談の場も、あらかじめ予定に入れておきます。ガイドラインは、テレワークでは周囲に上司や同僚がいないため、上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が「労働者の心身の変調に気づきにくい」という状況になる場合が多いとしています。*3 週に1回など決まった間隔で1対1の面談を設け、作業の進み具合だけでなく、仕事以外の困りごとも聞ける時間にしておくと、変化に気づく機会が増えます。

ここまでの内容を、現場責任者と話し合う項目としてまとめると、次の表のようになります。

現場責任者と採用の前に決めておく項目(この記事の整理)
項目 同じ場所で働くときのやり方 リモートで働く人を迎えるときに決めること
日々の指示 席で声をかけ、その場で補足する 課題管理ツールに目的・完了の条件・期限・相談先を書いて渡す
進み具合の確認 画面や様子を見て把握する 始業と終業の短い連絡、課題の状態の更新の仕方
レビュー 隣の席で画面を見ながら説明する 文字で返すものと打ち合わせで返すものの分け方、返す期限、担当者
時間外の連絡 帰宅後の連絡はもともと少ない 指示を送る時間帯と、時間外に届いた連絡に応じる必要があるか
評価の材料 働きぶりを日々見ている 仕上げた課題、レビューのやり取り、期限の守り方など記録に残るもの
相談の場 席が近く、気軽に声をかけられる 1対1の面談の頻度と長さ、仕事以外の困りごとも聞くこと

表の右の列を現場責任者と一緒に埋めていくと、合意した内容がそのまま受け入れの手順書になります。

つまずきやすい点

一つ目は、決めたやり方を現場責任者に伝えるだけで、負担の話をしないことです。先のJILPTの調査では、部下になるべく仕事を任せて管理職の業務に専念できるようにする取り組みを、課長相当(ライン職)の27.8%が「取り組んでいない」と答えています。*1 もともと自分で手を動かしている課長に、指示を書く手間やレビューの担当まで乗せると、合意は形だけになります。レビューや相談の担当をチームの中で分ける案も一緒に出します。

二つ目は、リモートで働く人だけに別のルールを作ることです。指示を課題管理ツールに書くのも、進み具合を毎日知らせるのも、出社している人を含めたチーム全体で同じにしておくと、情報が一部の人にだけ届くことを防げます。

三つ目は、決めたやり方を見直す日を決めないことです。入社してしばらくは、指示の書き方やレビューの返し方が合っているかは分かりません。1か月後、3か月後など、現場責任者とリモートで働く本人の両方から話を聞く日を先に決めておくと、やり方を直しやすくなります。

外部に委託するときに確認しておきたい点

受け入れの段取りが整うまで採用を待てないときは、開発の一部を業務委託で外部の専門人材に任せる方法もあります。この場合も、現場責任者と決めた項目の多くはそのまま使えます。依頼する作業の目的と完了の条件、成果物の受け渡し方、レビューの進め方を、契約の前に委託先とすり合わせておきます。

委託先に確かめたいのは、進み具合をどの頻度で、どの手段で知らせてもらえるか、レビューで指摘が出たときにどこまで直してもらえるか、連絡がつく時間帯はいつか、の3つです。

まとめ:現場責任者と確かめておきたい3つの点

リモート採用の社内合意を現場責任者と進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、日々の指示は目的・完了の条件・期限・相談先を書いて渡し、指示を送る時間帯も決めておくこと。第二に、レビューの担当と返す期限、文字で返すものと打ち合わせで返すものの分け方を決めておくこと。第三に、評価の材料を記録に残るものに置き、1対1の面談を予定に入れておくことです。この3点を踏まえておけば、「採用はしたものの、配属先で何を任せればよいのか分からないまま時間が過ぎた」という事態を避けやすくなります。受け入れの段取りに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

受け入れの段取りが整うまでのあいだ、開発の一部を業務委託の専門人材に任せることもできます。任せる作業と完了の条件が書き出してあれば、条件に合う候補者を探しやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

現場責任者が反対したままでも、リモート採用を進めてよいですか

進める前に、反対の理由を具体的に聞くのがおすすめです。指示やレビューの手間を心配しているなら、担当を分ける案や試しに運用してみる期間を出せます。配属先の協力がないまま採用すると、入社した人が仕事を任されない状態になりやすいためです。

現場責任者との話し合いには、誰が同席すればよいですか

採用を担当する人事と、レビューや相談の担当を任せたいチームの先輩エンジニアが同席すると、話が一度で済みます。評価制度や勤務のルールに関わる質問が出たときに人事がその場で答えられ、担当を分ける案も本人の了解を取りながら決められます。

課題管理ツールを使っていないチームでも、同じ進め方ができますか

できます。表計算のシートに作業を1行ずつ書き、目的・完了の条件・期限・相談先の列を設けるだけでも始められます。大事なのは道具よりも、指示を書いて残し、チーム全員が同じ場所で進み具合を確かめられることです。

入社したばかりの人の面談は、どのくらいの頻度にすればよいですか

決まった基準はないので、最初は間隔を短めにして、慣れてきたら広げる形が扱いやすいでしょう。たとえば最初の1か月は週1回とし、見直す日に本人と現場責任者の意見を聞いて間隔を決め直します。

現場責任者との話し合いの前に相談したいとき

受け入れるチームの体制や、任せる作業の書き出し方からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.222 働く人の仕事と健康、管理職の職場マネジメントに関する調査結果」(https://www.jil.go.jp/institute/research/2022/222.html)。出典:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.222 働く人の仕事と健康、管理職の職場マネジメントに関する調査結果」(2022年3月)。調査の概要(Web調査、令和2年11月下旬〜12月上旬、有効回答10,998)、第2章補論 図表2-補-4(在宅勤務に関して不安に感じたこと、N=2,375)、第4章 図表4-1-24(統括する職場や仕事の現状)・図表4-1-25(部下の仕事の進捗状況を「見える化」して情報共有する取り組み)・図表4-1-32(部下になるべく仕事を任せ、管理職の業務に専念できるようにする取り組み)の課長相当(ライン職)609人の値を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:総務省「令和3年版 情報通信白書」個人向けアンケートで見るテレワークの実情(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123420.html)。出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」第1部第2章第3節4(2)。図表2-3-4-17 テレワークで容易に実施可能なこと(n=286)と本文の記述を参照。元の調査は総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」(2026年9月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf)。出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」。4(4) テレワークを効果的に実施するための人材育成、7(4)オ(ア) メール送付の抑制等、8(2) 自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点を参照(2026年9月確認)




View