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エンジニア採用の求人票、必須要件と歓迎要件の違いと書き分け
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 必須要件は満たさない人を選考の対象にしない条件で、あれば評価に加える歓迎要件とは分けて書きます。
- 専門的・技術的職業の中途採用で求める人材は「一定度の知識・スキル」が67.2%で、「高度」の45.9%を上回ります。
- 経験年数は条件にできますが、理由なく非常に長い年数にすると事実上の年齢制限と見られます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
必須の欄に技術名を並べていったら10行を超えた。応募者から「この経験がないと応募できないのか」と問い合わせを受けた——。エンジニア採用の求人票を書いていると、どこまでを必須にするかで手が止まりがちです。必須要件とは、満たしていない人を選考の対象にしない条件のことです。
必須要件と歓迎要件を分けて書いておくと、応募する側は自分が当てはまるかを判断しやすくなり、面接する側も何を確かめればよいかがはっきりします。ただし万能ではなく、書き分けただけで応募が集まるわけではありません。本記事では、エンジニアを採用する開発の現場のマネージャーに向けて、必須要件と歓迎要件の違い、企業が中途採用で求めている水準、必須要件を書きすぎたときに起きること、経験年数の書き方を整理し、書き分けの例を示します。
目次
必須要件とは
求人票で求める経験をどう区分するかは、ハローワークの求人の入力画面にそのまま表れています。「必要な経験等」の欄について、厚生労働省の「求人情報の入力のしかた」は「必要とする経験・知識・技能等がある場合には「必須」または「あれば尚可」を選択し、具体的に入力してください。特にない場合は「不問」を選択してください。」と案内しています。*1 民間の求人サイトで「歓迎要件」「歓迎スキル」と呼ばれている欄は、この「あれば尚可」に当たります。
3つの区分は、選考での扱いがそれぞれ違います。必須は、満たしていなければ採用しないと決めた条件で、書類選考でふるい分ける基準になります。あれば尚可は、持っていれば評価に加えるものの、持っていなくても選考の対象から外さない条件です。不問は、選考で見ないことを応募者に伝える書き方です。同じ入力画面でも、学歴は「必須」か「不問」の2つから選ぶ形になっていて、「あれば尚可」は置かれていません。*1
同じ資料は、必要なパソコンのスキルについても「使用するアプリケーションやどのような作業を行うのかを具体的に入力してください」としています。*1 事務職を想定した欄ですが、エンジニアの求人票にもそのまま当てはまる考え方です。「Java」「AWS」と技術名だけを並べるのではなく、その技術で何をする仕事なのかまで書いておくと、必須と歓迎のどちらに置くべきかも決めやすくなります。
企業が中途採用で求めている水準
必須要件の水準を決めるときの手がかりになるのが、労働政策研究・研修機構(JILPT)の「企業の多様な採用に関する調査」です。2017年7月に従業員30人以上の企業2万社に調査票を送り、4,366社から回答を得ています。*2 正社員の中途採用で求める人材像を尋ねた設問では、2016年度に中途採用を行った企業3,752社のうち53.9%が「専門分野の一定度の知識・スキルがある人」を挙げ、「専門分野の高度な知識・スキルがある人」の28.4%を大きく上回りました(複数回答)。*2
同じ調査は、採用した職業ごとにも求める人材を集計しています。エンジニアが含まれる専門的・技術的職業では、1,320社のうち67.2%が「専門分野の一定度の知識・スキルがある」人を求め、「高度な知識・スキルがある」人は45.9%でした。*3 次いで多いのは「ポテンシャルがある」人の26.1%です。
業種で見ても傾向は同じです。情報通信業の113社では、「専門分野の一定度の知識・スキルがある人」が50.4%、「専門分野の高度な知識・スキルがある人」が39.8%、「ポテンシャルがある人」が36.3%でした(無回答・非該当を含めた割合)。*4 どの切り口で見ても、高度な知識・スキルより一定度の知識・スキルを求める企業のほうが多いことが分かります。調査の時期は少し前で、職業の区分もエンジニアだけを取り出したものではありませんが、採用の現場で実際に求められている水準を知る材料になります。
求人票に置き換えると、必須要件は「一定度」の水準、つまり任せる仕事を始められる程度の知識と経験にとどめ、「高度」の水準は歓迎要件に回す書き方が、この結果とも合っています。
なぜ必須要件を絞るのか
必須要件は、書いた項目のすべてを満たす人だけを残す条件です。項目が1つ増えるごとに、その条件を満たさない人が応募の段階で外れていきます。たとえば、クラウドでのシステムの設計、コンテナを動かす基盤の運用、3人以上のチームを率いた経験を並べて必須にすると、その3つを同時に持つ人だけが選考に残ります。一つひとつは珍しくない経験でも、組み合わせると当てはまる人は限られてきます。
そこで、必須に置く前に1項目ずつ「この経験が無い人が入社したら、任せる仕事を始められないか」を確かめます。入社後の数か月で身につけられる技術や、社内の手順を覚えれば済むものは、必須から外して歓迎に移します。反対に、入社した日から一人で進めてもらう作業に欠かせない経験は、必須に残します。
必須を絞ることは、選考の手間を減らすことにもつながります。必須要件は書類選考と面接で満たしているかを確かめる前提の条件なので、項目が多いと、面接の時間の多くが条件の確認に使われます。任せる仕事を本人がどう進めるつもりかといった、面接でしか聞けない話に時間を回すためにも、必須の数は絞っておくほうが進めやすくなります。
必須要件を書きすぎたときに起きること
必須要件を書きすぎると、まず、応募してほしい人が自分から応募を見送ることがあります。求人票を読む側は、必須の欄を満たすかどうかで応募するかを決めることが多く、1つでも当てはまらない項目があると、ほかの経験が十分でも応募をためらいます。歓迎に置いておけば応募してきた人を、必須の書き方で逃してしまう形です。
次に、求人票と実際の選考が食い違います。必須に書いた条件を満たさない応募者でも、話を聞いてみたら採りたいと思える人がいれば、現場は条件を緩めて選考を進めたくなります。そうなると、求人票を読んで応募を見送った人と、応募して選考に進んだ人とで扱いが変わり、条件を満たさず不採用にした応募者にも説明がしにくくなります。条件を緩めるなら、求人票のほうを先に書き直すのが筋です。
さらに、面接する人によって判断がそろわなくなります。必須の項目が多いと、面接官ごとに重く見る項目が変わり、同じ応募者でも評価が分かれます。書類選考と面接で確かめる項目は、必須に置いたものとそろえておきます。面接で確かめる質問と評価の基準の決め方は、エンジニア採用のミスマッチを採用要件で防ぐで扱っています。
経験年数の書き方
経験年数は、求人票の必須要件によく使われる書き方です。労働施策総合推進法の第9条は、事業主に、労働者の募集と採用について「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めていて、求人票に年齢の上限を書けるのは例外に当たる場合に限られます。*5 先のJILPTの調査では、中途採用を行った企業の31.7%が求める人材像に「若年層の人」を挙げていますが、*2 その希望を年齢の条件として書くことはできません。例外に当たる場合の扱いは、年齢制限が認められる6つの例外事由と設定できる範囲で扱っています。
経験年数そのものは条件にできます。厚生労働省のQ&Aは、「年齢不問の求人について、業務経験の有無や一定の経験年数を条件とすることは問題ありません」と答えています。*6 ただし、「合理的な理由がなく、かつ、非常に長い期間が設定されている場合などは事実上の年齢制限をすることが意図されていると解される」ため、適当ではないとしています。*6 若い人を採りたいという思いを長すぎる経験年数に置き換えるのではなく、任せる仕事から年数を決めることが求められます。
年数を決めるときは、任せる仕事を一人で進められるようになるまでに、どんな作業を何回経験している必要があるかから考えます。たとえば、既存の業務システムの改修を任せるなら「設計書をもとに機能を追加し、テストまで担当した経験」が必須の中身で、年数はその経験の量を示す目安にすぎません。必須の欄には経験の中身を書き、「目安として3年程度」のような年数は歓迎の欄に添える書き方にしておくと、年数は足りないが同じ作業を経験している人も応募しやすくなります。
書き分けの例
ここでは、社内の業務システムの改修と、クラウドへの移し替えを担当するエンジニアを募集する場合を例に、必須・歓迎・不問の書き分けを示します。
| 項目 | 必須 | 歓迎(あれば尚可) | 不問 |
|---|---|---|---|
| 開発の経験 | Javaで業務システムの機能を追加し、テストまで担当した経験 | 設計書を自分で書いた経験 | 業界・業種 |
| データベース | SQLで検索と更新の処理を書いた経験 | 処理の遅い検索を調べて直した経験 | 製品の種類 |
| クラウド | ― | AWSなどでサーバーを構築・運用した経験 | ― |
| チーム | ― | 数人のチームで進捗をまとめた経験 | 役職の経験 |
| 資格 | ― | 情報処理技術者試験の合格 | 資格の有無 |
表の必須は2項目だけです。どちらも、入社した日から任せる改修の作業に欠かせない経験で、ハローワークの資料がパソコンのスキルについて求めているように、何をする経験なのかまで書いています。*1 クラウドの経験は、移し替えの作業が始まるまでに社内で覚えてもらう前提で歓迎に置きました。設計書を書いた経験や、処理の遅い検索を直した経験は、JILPTの調査でいう「高度」の水準に近いものとして歓迎に回しています。
不問の欄は空けておいてもかまいませんが、業界や資格のように応募者が気にしやすい点は、不問と書いておくと応募をためらう理由を一つ減らせます。求人票の業務内容の欄の書き方は、エンジニア採用の求人票、IPAの4項目で業務内容を書くで扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、必須から外した項目を、そのまま歓迎の欄に並べ直すことです。歓迎の項目が10を超えると、応募者はどれが重く見られるのかが分からず、必須と同じように受け取ってしまいます。歓迎に置くのは、面接で聞いて評価に加えるつもりのあるものに限り、重く見るものから順に並べます。
二つ目は、現場と人事で必須の線引きが違ったまま求人票を出すことです。現場のマネージャーは技術の経験を、人事は経験年数や転職の回数を重く見る、といったずれがあると、書類選考の段階で判断が割れます。求人票を出す前に、必須に置いた項目のそれぞれについて、書類と面接のどちらで何を見て確かめるかまで決めておきます。
三つ目は、応募が集まらないときに、必須要件だけを削って済ませることです。必須を絞っても、賃金や働き方の条件が合わなければ応募は増えません。求人票を見直すときは、必須要件と一緒に、業務内容の書き方や賃金、リモートワークの可否といった働き方の条件も確かめます。
まとめ:必須要件で確かめておきたい3つの点
エンジニア採用の求人票で必須要件と歓迎要件を書き分けるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、必須は満たさない人を選考の対象にしない条件、歓迎はあれば評価に加える条件として分け、それぞれ何をする経験なのかまで書くこと。第二に、必須は任せる仕事を始められる程度の水準にとどめ、高度な知識や経験は歓迎に回すこと。第三に、経験年数を必須にするなら仕事から決めた理由のある年数にし、年齢の代わりに長い年数を置かないことです。この3点を踏まえておけば、「条件を並べすぎて応募が来ず、結局は選考の途中で条件を緩めた」という事態を避けやすくなります。必須要件の線引きに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
必須要件は、いくつまでにすればよいですか
決まった上限はありません。任せる仕事を始めるのに欠かせない経験だけを残すと、多くの場合は2〜3項目に収まります。項目ごとに、書類と面接のどちらで確かめるかを決められる数にしておくと、選考で判断がそろいます。
歓迎要件を1つも満たさない応募者は、不採用にしてよいですか
歓迎要件は、満たしていれば評価に加える条件なので、満たさないことだけを理由に不採用にすると、必須に書いたのと同じ扱いになります。必須要件を満たしていれば選考に進め、歓迎要件は面接での評価の差として扱います。どうしても外せない条件なら、求人票の必須の欄に移します。
学歴を必須にしてもよいですか
ハローワークの入力画面では、学歴は「必須」か「不問」の2つから選ぶ形になっています。*1 エンジニアの仕事は学歴よりも経験で確かめられることが多いため、任せる仕事に特定の専攻の知識が欠かせない場合を除けば、不問にしておくと応募の幅を狭めずに済みます。
募集を始めた後に必須要件を変えてもよいですか
変えてもかまいませんが、先に求人票を書き直し、選考中の応募者にも変更を伝えます。求人票を直さないまま選考だけで条件を変えると、求人票を読んで応募を見送った人との間で扱いが変わってしまいます。求人サイトや人材紹介会社に同じ求人を出している場合は、すべての掲載先をそろえて直します。
エンジニアの求人票を相談したいとき
任せる仕事の整理から、必須要件と歓迎要件の書き分けまでご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「求人情報の入力のしかた」(PDF)(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyuujinnjouhounonyuuryokunosikata.pdf)。出典:ハローワークインターネットサービスで求人を申し込むときの入力の手引き。「3.仕事内容」の【学歴・専攻】【必要な経験等】【必要なPCスキル】の説明を参照(2026年9月確認)(2026年9月確認)
- *2 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号「企業の多様な採用に関する調査」(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/179.html)。出典:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号(2018年3月)。調査の方法(常用労働者30人以上の民営法人20,000社、調査期間2017年7月11日〜7月28日、回収数4,366社)と、図表2-121(正社員の中途採用で求める人材像・イメージ。非該当を除く、複数回答可、合計N=3,752)を参照(2026年9月確認)(2026年9月確認)
- *3 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号 第2章(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/179_01.pdf)。出典:同調査 図表2-156(平成28(2016)年度の正社員の中途採用に求める人材。無回答・非該当を除く、複数回答可)。専門的・技術的職業 N=1,320(2026年9月確認)(2026年9月確認)
- *4 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号 第2章(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/179_01.pdf)。出典:同調査 図表2-122(正社員の中途採用で求める人材像・イメージ。複数回答可、業種別)。情報通信業 N=113、無回答・非該当16.8%を含む母数(2026年9月確認)(2026年9月確認)
- *5 参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)。出典:同法(昭和41年法律第132号)第9条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)を参照(2026年9月確認)(2026年9月確認)
- *6 参考:厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A(令和7年4月1日現在)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001474761.pdf)。出典:同Q&A Q1-12(「○○業務の経験○年以上」といった業務経験の条件)を参照(2026年9月確認)(2026年9月確認)