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SESパートナーの追加要員、要員確保の見通しは早めに伝える
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 追加要員が要りそうだと分かった時点で、時期・人数の幅・確度をSESパートナーに伝え、見込みが変わるたびに更新します。
- 頼むときは担当する作業、必要な技術、開始時期と期間を書いて渡し、候補を出せる見通しは約束ではなく見込みとして聞きます。
- 追加の人を迎える前に説明役と情報保護のルールを決め、既存メンバーの残業だけで間をつながないようにします。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
開発の後半になって作業が膨らみ、SESパートナーに追加要員を頼んだものの、候補がなかなか出てこない。ようやく加わった人への説明に既存のメンバーが追われ、かえって進みが鈍る——。SESパートナーと進める開発では、こうした状況が起こりがちです。SESパートナーに追加要員を頼むとは、すでに技術者を出してもらっている取引先に、契約の途中で人数や役割を増やしてもらうことを指します。
追加要員の確保はパートナーの側だけで決まるものではなく、発注する側がいつ、何を伝えたかで見通しが変わります。ただし、早く伝えても人が集まらないことはあります。本記事では、経済産業省のガイドラインと振興基準を手がかりに、急な追加が起きやすい理由、前もって伝える見通し、頼むときに書く条件、要員確保の見通しの聞き方、既存メンバーとの関係、受け入れの準備を整理します。
目次
急な追加で起きやすいこと
経済産業省の「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」(令和7年12月最終改訂)は、システム開発の取引で起きやすい問題を業界向けにまとめた文書です。その中で、発注する側の仕様があいまいなまま進むと、特にプロジェクトの後半に当初の見積もりを大きく超える作業量が出る事例が散見されると書いています。
そのうえで、受託する側が人手不足などで「追加の人員を補充できないと、従業員の労働時間が増大し、生産性の低下・長時間労働につながる」と続けます。*1 追加要員を頼む場面は、たいてい作業が膨らんだ後です。パートナーにとっても、手の空いた技術者がすぐに見つかるとは限りません。社内の別の案件から人を回すか、新たに探すことになり、その間はすでに参画しているメンバーが残業で埋めることになりがちです。
ガイドラインは発注する側に、「できる限り急な追加発注がないよう配慮する」ことを求めています。*1 やむを得ず短い納期や追加の発注をするときは、受託する側に増える残業代などのコストを負担することが望ましい、ともしています。費用の水準は本記事では扱いませんが、追加を頼むときは作業の範囲と人数だけでなく、費用の扱いも同じ場で話し合う、という順番を押さえておきます。
振興基準が求める発注の仕方
もう一つの手がかりが、受託中小企業振興法にもとづいて経済産業大臣が定めた振興基準(令和8年6月24日)です。委託する事業者と受託する中小企業が「よるべき一般的な基準」と位置づけられ、発注の在り方が項目ごとに並んでいます。*2
追加要員の頼み方に関わるのは、第2の6「発注の安定化、リードタイムの確保等」です。発注量をできる限り平準化し、「将来の発注に関する事前情報の精度の向上」に努めること、受託する側が準備に要する時間(リードタイム)を十分に考えて発注すること、発注の予定を示した後に実際の発注と大きく食い違ったときは十分に協議することが書かれています。*2 製造業の在庫や材料を念頭に置いた書き方ですが、追加要員に置き換えると、追加の見込みを早く正確に伝え、パートナーが人を探す時間を見込んで頼み、見込みが外れたら話し合う、という読み方ができます。
第2の7(3)は、発注後の内容の変更や追加の発注で納期が無理なものになったときは、納期を変更するなどの措置を講じるとしています。*2 第4の7(3)は、委託する側が受託する側の「人員、業務量の状況をできる限り把握することに努める」としています。*2
なお、自社とパートナーとの取引がこの法律や中小受託取引適正化法の対象になるかどうかは、資本金や従業員の数、取引の内容によって決まります。当てはまるかどうかは契約の内容を見て、必要なら専門家に確かめてください。対象にならない取引でも、頼み方を考える目安として使えます。
追加の見通しは早めに伝える
追加の可能性が見えた時点で伝えたいのは、いつごろ、何人くらい、どの工程に要りそうかの3つです。人数は「2人」と言い切れなくても、「1〜2人」のような幅で構いません。あわせて、どのくらい確かな話なのかを伝えます。「来月からの追加はほぼ決まっている」「残りの作業を見積もり直したら要るかもしれない」のどちらなのかで、パートナーが今から動くかどうかが変わるからです。
見込みは一度伝えて終わりにせず、作業量の見通しが変わるたびに更新します。振興基準が事前情報の「精度の向上」と書いているのは、早く伝えることと、正確にしていくことの両方を指していると読めます。定例の打ち合わせに、人数の見込みを確かめる項目を一つ置いておくと、伝え忘れを防げます。
見込みが外れることもあります。追加が要らなくなったときに、パートナーが候補者を押さえるために動いていた場合の扱いは、見込みを伝える段階で話しておくと後でもめにくくなります。どこまでを費用として扱うかは、契約の定めを確かめて決めます。
頼むときに書いておく条件
追加を正式に頼むときは、口頭で済ませずに条件を書いて渡します。振興基準の第2の8(1)は、発注に際して示すべき仕様書などの内容を明確にするよう求めています。*2 追加要員の場合、パートナーが候補者を探すために要るのは、おおむね次のような項目です。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 担当する作業 | 受注画面の改修のうち詳細設計から単体テストまで、など工程と範囲 |
| 必要な技術と経験 | 欠かせないものと、あればよいものを分けて書く |
| 開始の時期と期間 | いつから、いつまでの見込みか。延びる可能性もあわせて |
| 稼働の時間と場所 | 稼働の時間帯、出社かリモートか、出社の頻度 |
| 体制の中の位置 | どのチームに入り、誰と一緒に作業するか |
| 受け入れの条件 | 貸与する端末、守ってもらう情報保護のルール |
技術と経験を「欠かせないもの」と「あればよいもの」に分けておくのは、候補の幅を広げるためです。全部を必須にすると、パートナーの社内に当てはまる人がいないまま時間だけが過ぎます。どこまでなら加わった後に覚えてもらえるかを、既存のメンバーと相談して決めておきます。
追加が今の契約の変更として扱われるのか、新たな個別の契約になるのかは、基本契約の定めによって違います。どちらになるかを先に確かめておくと、書面のやり取りで迷わずに済みます。
要員確保の見通しの聞き方
条件を渡したら、要員確保の見通しを聞きます。聞いておきたいのは、社内に当てはまりそうな人がいるのか、これから探すのか。候補を示せるまでにどのくらいかかりそうか。条件のうちどこが難しく、どこを緩めれば候補が増えそうか、の3点です。パートナーの協力会社から人を出す場合は、そのことも聞いておきます。
候補を示せるまでの期間は、約束ではなく見込みとして聞きます。人が見つかるかどうかは相手にも読み切れないことが多く、日付を言わせると、条件に合わない人でも間に合わせで出てくるおそれがあります。代わりに、「この日までに候補の有無を教えてほしい」と区切りを置きます。その日に見通しが立たなければ、条件を見直すか、別の探し方を併せて考えます。
すでに参画しているメンバーの状況も聞いておきます。ガイドラインは、委託する側が受託する側の人員や業務量の状況を「可能な限り把握することに努め」るよう書いています。*1 追加が決まるまでの間、今のメンバーにどのくらい負荷がかかっているかを知らないまま待つと、気づいたときには残業が続いていた、ということになりかねません。
既存メンバーとの関係
追加の人が加わると、最初のうちは既存のメンバーの時間が説明にとられます。誰が説明役になるのかを先に決め、その時間も作業として見込んでおきます。説明役をパートナー側の既存メンバーに頼むなら、その人の担当作業がどのくらい遅れそうかもあわせて話しておきます。人を加えたときに縮む作業と縮まない作業の見分け方は、開発遅延の立て直し、開発要員の増員で縮む作業と縮まない作業で扱っています。
体制を組み直すときに避けたいのが、全体の進め方の管理まで相手に任せきりにすることです。ガイドラインは、本来は発注元が担うべきプロジェクトの管理やユーザーへの説明を受託する側に丸投げすると、品質や生産性の低下につながる事例が散見されるとし、「発注者としての管理監督責任を適切に果たすことが求められる」としています。*1 追加の人をどの作業に充てたいのかという方針は発注する側が決めて伝え、日々の作業の伝え方は契約で定めた窓口を通します。どの窓口を通すかは契約の形によって変わるので、契約書で確かめておきます。
追加が間に合わない間を、既存メンバーの残業だけでつなぐ前提にしないことも大切です。振興基準の第4の7(2)は、やむを得ず短い納期や追加の発注をするときは、受託する側が支払う残業代などの増加コストを負担するとしています。*2 残業でしのぐ期間が出そうなら、その扱いも含めてパートナーと話し合います。
受け入れの準備
ガイドラインは、情報保護の対策や監督の方法を委託する側と受託する側で事前に十分確かめなかった場合、後から追加の業務が生じてトラブルになることもあるとし、ルールを「事前にしっかりと共有しておくことが望まれる」としています。*1 追加の人にも、最初から参画しているメンバーと同じルールを守ってもらいます。頼むときの条件に書いておき、参画の前に本人へ伝わっているかをパートナーに確かめます。
参画の日までに用意しておきたいのは、アカウントと端末、作業に使う資料、体制図と連絡の窓口です。初日に渡す資料が決まっていれば、説明役の負担も軽くなります。アカウントの渡し方と権限の範囲は、業務委託エンジニアの受け入れ時の権限管理で手順を整理しています。
加わってからしばらくは、任せた作業が予定どおり進んでいるかを短い間隔で確かめます。条件に書いた技術と実際の作業がずれていれば、早いうちに分かれば担当を入れ替えるなどの手を打てます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
追加要員を頼む前に、残りの作業を書き出し、どの作業に何人が要りそうかを見積もっておきます。そのうえで、パートナーに伝える見込みの時期と人数、頼むときに渡す条件、候補の有無を教えてもらう期限の3つを決めておくと、話が早く進みます。今のパートナーだけでは確保が難しいときに備えて、ほかの探し方も検討しておきます。
受注した案件の要員確保でパートナーに頼む工程と探し方は、SESパートナーで受注案件の要員確保、頼む工程と探し方を決めるで扱っています。パートナーにどこまでの範囲を任せるかの線の引き方は、SESパートナーの対応範囲の記事にまとめました。
まとめ:追加要員で確かめておきたい3つの点
SESパートナーに追加要員を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、追加が要りそうだと分かった時点で、時期と人数の幅と確度を伝え、見込みが変わるたびに更新すること。第二に、頼むときは担当する作業や必要な技術、開始の時期と期間を書いて渡し、要員確保の見通しは期限を区切って見込みとして聞くこと。第三に、説明役と情報保護のルールを先に決め、既存メンバーの残業だけで間をつながないことです。この3点を押さえておけば、「頼んだのに候補が出ないまま、今のメンバーの残業が続いていた」という事態を避けやすくなります。今のパートナーだけで要員確保が難しいときは、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
追加要員の見込みは、どのくらい前から伝えればよいですか
ガイドラインも振興基準も、何日前という期間は示していません。振興基準は、受託する側の準備に要する時間を十分に考えて発注することと、将来の発注に関する事前の情報の精度を上げることを求めています。*2 追加の可能性が見えた時点で幅のある見込みとして伝え、確かになってきたら更新する形が扱いやすい方法です。
候補が出てこないときは、どうすればよいですか
最初に決めた期限の時点で、条件のどこが難しいのかをパートナーに聞きます。必須にしている技術や経験を絞る、開始の時期をずらす、リモートでの参画を認めるなど、緩められる条件があれば見直します。それでも難しい場合は、別の探し方を併せて考えます。
追加の人には、最初からいるメンバーと同じ説明が要りますか
情報保護のルールや作業の進め方は、同じものを伝えます。ガイドラインは、情報保護のルールを委託する側と受託する側で事前に共有しておくことが望まれるとしています。*1 体制図や作業の一覧を初日に渡せるようにしておくと、説明にかかる時間を減らせます。
追加で頼みたい作業が決まったら相談
追加で頼みたい作業と、必要な技術や開始の時期が分かっていれば、そのままご相談いただけます。人数の見込みがまだ幅のある段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」(令和7年12月最終改訂)(PDF)(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline/06_info-services_soft.pdf)。出典:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」(平成19年6月策定・令和7年12月最終改訂)。3.1「中小受託事業者の生産性向上等と委託事業者の協力」、3.7「個人情報保護及び情報セキュリティ対策に係る取組について」を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
- *2 参考:経済産業省「振興基準」(令和8年6月24日)(PDF)(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/shinkoukijyun/zenbun.pdf)。出典:受託中小企業振興法(昭和45年法律第145号)第3条第1項の規定にもとづく振興基準(令和8年6月24日 経済産業大臣)。前文、第2の6「発注の安定化、リードタイムの確保等」(2)〜(4)、第2の7(3)、第2の8(1)、第4の7「働き方改革の推進を阻害する取引慣行の改善」(2)(3)を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)