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業務委託の交通費の扱い|源泉徴収とインボイスの9つの疑問
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 交通費を報酬に含めるか実費で精算するかを頼む前に決め、会社が負担するなら総額が分かる形で示します。
- 源泉徴収の対象の報酬なら交通費も原則として含み、会社が交通機関に直接払う通常の額なら含めなくてよいとされます。
- 実費の精算では交通機関の適格請求書と立替金精算書を残し、3万円未満の電車やバスの運賃は帳簿の記載で控除できます。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
業務委託で開発に加わっているエンジニアに出社を頼んだら、月末の請求書に交通費の行が加わっていた。報酬に含めて払ってよいのか、源泉徴収は要るのか、インボイスはどうなるのか——経理の担当者から、こうした問い合わせが現場に戻ってくることがあります。
本記事では、業務委託の交通費について発注側が迷いやすい点を、9つの問いに分けてQ&Aの形で整理します。答えは、国税庁の通達とタックスアンサー、インボイスQ&A、フリーランス法の国の考え方で言えることに限っています。
目次
業務委託の交通費で迷う点
業務委託で開発に加わるエンジニアに出社を頼むと、交通費の請求が届きます。社員の交通費なら社内の規程どおりに処理できますが、業務委託の相手は雇っている人ではないため、源泉徴収や消費税の扱いを社員と同じに考えてよいのかで手が止まりがちです。
本記事は、個人で働くエンジニアに業務委託で仕事を頼む発注側が、交通費を払うときに迷う点を9つの問いに分けて整理します。次の表で、自社の疑問がどの問いに当たるかを確かめてから読んでください。
| 問いの種類 | 主な疑問 | 答えの決め手 | Q&A |
|---|---|---|---|
| 払い方と源泉徴収 | 報酬に含めるか実費で精算するか、源泉徴収の対象か、消費税の分の扱い | 所得税基本通達204-2・204-4と国税庁のタックスアンサー | Q1〜Q4 |
| 消費税とインボイス | 社員の出張旅費と同じ扱いになるか、控除のために残す書類、相手が免税事業者のとき | 国税庁のインボイスQ&A | Q5〜Q7 |
| 請求書と出社日 | 請求書の書き分け、出社の日の交通費を契約で決めること | 国税庁のインボイスQ&Aとフリーランス法の国の考え方 | Q8・Q9 |
出社の回数や移動の時間をどう決めるかは外部人材活用のリモートとハイブリッドで、報酬そのものが給与か外注費か、源泉徴収の対象かは外部人材活用の経理処理で扱っています。本記事は、そのうち交通費の税務に絞ります。
払い方と源泉徴収のQ&A
最初に、交通費をどの形で払うかと、源泉徴収(支払いのときに所得税を差し引いて納めること)の関係を押さえます。払い方によって、源泉徴収の扱いが変わる場合があります。

Q1. 交通費は報酬に含めますか、実費で精算しますか
- 答えの要点:どちらの形もとれます。大事なのは、交通費を会社が負担するかどうかと、負担するなら精算の範囲を、仕事を頼む前に相手と決めて書面かメールで示しておくことです。
- 判断の根拠:フリーランス法の国の考え方は、交通費などの費用を発注側が負担するなら、費用を含めた総額が分かるように報酬の額を示す必要があるとしています。精算について特に示していなければ、示した報酬の額だけを払うと示したことになる点にも触れています。*6
- 国の考え方は、費用の精算の有無や範囲を、仕事を頼む前に十分に話し合って決めることが望ましいとしています。
Q2. 業務委託の交通費にも源泉徴収は要りますか
- 答えの要点:交通費だけで決まるのではなく、払う報酬が源泉徴収の対象かどうかで決まります。対象の報酬なら、交通費や旅費の名目で払うお金も原則として報酬に含めて源泉徴収します。
- 判断の根拠:国税庁は、原稿料や講演料、弁護士・公認会計士などの資格を持つ人への報酬などを源泉徴収の対象の例に挙げています。*1所得税基本通達204-2は、報酬の性質を持つものは車賃などの名義で払っても源泉徴収の対象になるとしています。*3
- システムの設計やプログラムの作成の報酬が対象になるかは、上で挙げた経理処理の記事で確かめてください。
Q3. 源泉徴収をしなくてよい交通費の払い方はありますか
- 答えの要点:あります。会社が交通機関やホテルに直接払い、金額がその移動に通常必要な範囲なら、源泉徴収をしなくて差し支えないとされています。本人に渡して精算するお金は、この扱いに当たりません。
- 判断の根拠:所得税基本通達204-4*3、国税庁 タックスアンサーNo.2795*2
- たとえば、会社が乗車券を手配して渡す形にすると、この扱いに当たる場合があります。
Q4. 交通費を含む請求額の消費税の分も源泉徴収しますか
- 答えの要点:原則は消費税の分も含めた金額が源泉徴収の対象です。請求書で報酬の額と消費税の額がはっきり分けて書かれていれば、報酬の額だけを対象にして差し支えないとされています。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサーNo.2792*1
- この扱いは、インボイス制度が始まった後も変わらないとされています。
消費税とインボイスのQ&A
次は消費税です。払った交通費の消費税を、納める消費税から差し引けるか(仕入税額控除)と、そのために何を残すかを見ます。インボイス制度では、原則として適格請求書(登録を受けた事業者が出す、決まった事項を書いた請求書)の保存が要ります。

Q5. 社員の出張旅費と同じように帳簿だけで控除できますか
- 答えの要点:社員の出張旅費のための帳簿だけで控除できる扱いは、役員や社員などに払うものが対象です。業務委託の相手は雇っている人ではないので、この扱いをそのまま当てはめるのは難しいと考えられます(本記事の整理)。
- 判断の根拠:国税庁は、国内の出張で役員や使用人に払う旅費のうち通常必要な分は課税仕入れになるとしています。*4国税庁のインボイスQ&Aは、この扱いを従業員等に払う旅費のためのものとし、採用面接に来る人は通常は従業員等に当たらず対象にならないとしています。*5
- 社員の通勤手当を帳簿だけで控除できる扱いも、同じQ&Aで従業員等に払うものとされています。
Q6. 実費で精算した交通費の控除には何を残しますか
- 答えの要点:外部人材が立て替えた運賃を会社の経費として精算するなら、交通機関の適格請求書と、本人が作る立替金精算書を一緒に残します。税込み3万円未満の電車やバスの運賃は、決まった事項を帳簿に書けば請求書がなくても控除できます。
- 判断の根拠:国税庁のインボイスQ&A問94・問105*5
- 3万円未満かどうかは、切符1枚ごとや月のまとめではなく、1回の取引の税込みの金額で判定します。
Q7. 外部人材が免税事業者のときはどうなりますか
- 答えの要点:立て替えた運賃として精算するなら、立て替えた人が登録を受けていなくても、交通機関が登録を受けていれば控除できます。報酬に含めて払うなら、登録のない人からの仕入れになり、経過措置の割合だけを控除します。
- 判断の根拠:国税庁のインボイスQ&A問94・問113*5
- 経過措置で控除できる割合は、2026年10月1日から2028年9月30日までは仕入れの消費税に当たる額の70%です。
請求書と出社日の取り決めのQ&A
最後に、ここまでの扱いを請求書と契約にどう落とすかです。次の図は、交通費の払い方ごとに源泉徴収と消費税の扱いを並べたものです。
Q8. 交通費は請求書にどう書いてもらいますか
- 答えの要点:報酬と交通費を別の行に分け、それぞれ消費税の額も分けて書いてもらいます。立て替えた運賃として精算する分は、請求書とは別の立替金精算書にまとめてもらう形もあります。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサーNo.2792*1、国税庁のインボイスQ&A問94*5
- 立替金精算書には、運賃の支払先の名前、金額と消費税の額を書いてもらいます。国税庁の記載の例では、帳簿に売り手の名前を書く必要があるため支払先の名前を載せています。
Q9. 出社の日の交通費は契約で何を決めますか
- 答えの要点:出社してもらう日の決め方、交通費を払う区間、報酬に含めるか実費で精算するか、精算するなら上限と添える書類、払う時期の5つです。報酬に含めるなら、交通費を含めた総額が分かる形で示します。
- 判断の根拠:フリーランス法の国の考え方*6
- 国の考え方は、負担すると示していた費用を払わないことを、報酬の減額に当たる例に挙げています。決めた交通費は、報酬と同じく約束どおりに払います。
ここまでの答えは、国税庁の資料と国の考え方から言えることに限っています。立て替えた運賃として扱えるかなど、個別の取引にどう当てはまるかは、税理士や所轄の税務署に確かめてください。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
交通費の扱いは、仕事を頼む前に決めておくほど、請求書が届いてから経理と現場で迷わずに済みます。業務委託の人材を探す前に、次の点を書き出しておくと話が早く進みます。
- 範囲:出社して進める作業と、リモートで進める作業
- 期間:出社が続く時期(立ち上げの時期や月1回のレビューなど)
- 体制:交通費の請求書を受け取って確かめる経理の窓口
- 費用の決まり方:交通費を報酬に含めるか実費で精算するか、区間と上限
- 引き継ぎ:契約が終わるときに精算を締める日と、残してもらう書類
仲介会社を通す場合は、エンジニアと契約している当事者がどこかを確かめ、交通費の請求書を誰が出すのかを決めておきます。請求書を出す相手によって、残す書類と消費税の扱いが変わるためです。
まとめ:業務委託の交通費で確かめる点
業務委託の交通費で確かめたい点は3つです。第一に、交通費を報酬に含めるか実費で精算するかを仕事を頼む前に決め、会社が負担するなら費用を含めた総額が分かる形で示すこと。第二に、源泉徴収の対象の報酬なら交通費も原則として報酬に含まれ、会社が交通機関に直接払う通常の額なら含めなくてよいとされていること。第三に、実費の精算では交通機関の適格請求書と立替金精算書を残し、税込み3万円未満の電車やバスの運賃は決まった事項を帳簿に書けば控除できることです。
よくある質問
業務委託の人の交通費は社員の通勤手当と同じ扱いですか
社員の通勤手当を帳簿だけで控除できる扱いは、国税庁のインボイスQ&Aで従業員等に払うものとされています。業務委託の交通費は、報酬に含めるか、立て替えた運賃として精算するかのどちらかで扱いを考えます。
交通費を定額で報酬に上乗せしてもよいですか
定額で上乗せするなら、報酬に含めて払う形になります。この場合、源泉徴収の対象の報酬なら上乗せ分も含めて源泉徴収します。総額が分かるように報酬の額と一緒に示します。
新幹線の往復で3万円を超えたら帳簿だけでは控除できませんか
3万円未満かどうかは1回の取引の税込みの金額で判定し、3万円以上なら原則として適格請求書の保存が要ります。ただし、決まった事項が書かれた乗車券が回収される場合は、帳簿の記載だけで控除できるとされています。
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出典
- *1 参考:国税庁 タックスアンサーNo.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。源泉徴収の対象の範囲、注意事項2(車代などの名目、交通機関への直接払い)、注意事項4(消費税等の額の区分)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *2 参考:国税庁 タックスアンサーNo.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2795.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。旅費や宿泊費も原則として報酬・料金等に含まれ、支払者が直接払った通常必要な範囲の金額は含めなくてよいことを参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *3 参考:国税庁「所得税基本通達」第6章 報酬、料金等に係る源泉徴収(法第204条関係・共通関係)(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/36/01.htm)。出典:国税庁。204-2(報酬、料金等の性質を有するもの)、204-4(報酬又は料金の支払者が負担する旅費)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *4 参考:国税庁 タックスアンサーNo.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。役員または使用人に支給した国内の出張旅費等のうち通常必要な部分は課税仕入れになることを参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *5 参考:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(PDF)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf)。出典:国税庁 軽減税率・インボイス制度対応室(令和8年5月改訂)。問43(3万円未満の判定単位)、問94(立替金)、問105(公共交通機関による旅客の運送)、問107・問107-3(出張旅費等)、問108(通勤手当)、問113(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *6 参考:公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001572556.pdf)。出典:厚生労働省(令和6年5月31日、令和8年10月1日改正)。第2部第1の1(報酬の額の明示・費用等について)、第2部第2の2(減額の例)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)