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業務委託のハラスメント相談窓口でやること|時期ごとの14項目
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- フリーランス法第14条は、社員がいる発注側に、業務委託でのハラスメントの相談に応じる体制の整備などを求めています。
- 発注前に方針と窓口を決め、契約時に窓口の連絡先と不利益な扱いをしない旨を書面で知らせます。
- 相談を受けたら事実を確かめ、被害を受けた人と行為者への措置をとり、再発を防ぐまでを進めます。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
フリーランスのエンジニアに開発を頼むことになった。社員向けのハラスメント相談窓口はあるが、業務委託の人にも同じ窓口を案内してよいのか。契約書に何か書く必要があるのか。2024年11月に施行されたフリーランス法で、発注側にもハラスメント対策の体制づくりが求められるようになりました。
本記事では、発注側が整えることを、発注を始める前・契約を結ぶとき・相談を受けたときの3つの時期に分け、14項目のやることとして並べます。根拠は、条文と厚生労働省の指針、Q&Aに書かれていることに絞っています。
目次
業務委託のハラスメント相談窓口とは
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の第14条は、業務委託をする側に、相手から相談を受けて適切に対応するための体制の整備などを求めています。対象になる発注側は、従業員を使用する事業者か、役員が2人以上いる法人です。*1 ここでいう従業員の使用は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの労働者を雇うことを指します。*3 厚生労働省は、都道府県労働局での施行状況として、第14条の体制整備の義務の違反に関する指導が最も多いとしています。*4
条文が防ぐよう求めている言動は、次の3つです。*1
- 性的な言動と、それへの対応を理由に業務委託の条件で不利益を与えること
- 妊娠や出産に関する事由についての言動で、就業環境を害すること
- 取引上の優越的な関係を背景に、業務を進めるうえで必要かつ相当な範囲を超えた言動で、就業環境を害すること
厚生労働省のQ&Aは、求められる措置を①〜⑩の10個に整理しています。*3 対象は相手の作業場所での言動に限らず、電話やメール、業務の延長と考えられる打ち上げの場なども含まれます。本記事では、この10個の措置に、対象かどうかの確認と望ましいとされる取組を加え、時期ごとに14項目のやることとして並べます。
法律の全体像はフリーランス新法とはで扱っています。本記事はハラスメント対策だけに絞ります。
発注を始める前にやること
最初の時期は、フリーランスに声をかける前の体制づくりです。方針と窓口を契約より先に決めます。

| 番号 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 自社が特定業務委託事業者に当たるかを確かめる | 法第2条第6項 |
| 2 | 業務委託でのハラスメントの内容と、行ってはならない旨の方針を文書にする | Q&A 問102の① |
| 3 | 行為者には厳正に対処する方針と対処の内容を就業規則などに書く | Q&A 問102の② |
| 4 | 相談窓口を決める(担当者を決める・外部に委託する・社員向けの窓口を使えるようにする) | Q&A 問103・問104 |
| 5 | 窓口の担当者が人事部門や契約担当部門と連携できる仕組みと対応マニュアルを用意する | 指針 第4の5(2)ロ |
| 6 | 相談者と行為者のプライバシーを守る手順をマニュアルに定める | Q&A 問102の⑨ |
方針は、就業規則などの服務規律の文書に書くほか、社内報や社内のホームページに載せるやり方も指針の例に挙がっています。厚生労働省は、就業規則に禁止の条を置き、詳しい中身を別の規定に定める例も公表しています。*5
窓口は新しく作らなくても構いません。社員向けに置いている相談窓口が第14条の措置の中身を満たしているか確かめたうえで、フリーランスも使えるようにすることも考えられるとされています。メールや専用のアプリで受け付けるなら、相談が受け付けられたことを相手がはっきり把握できる仕組みにします。*3
窓口の担当者は、ハラスメントが起きている場合だけでなく、起きるおそれがある場合や該当するか微妙な場合も広く相談に応じるよう求められています。*2
契約を結ぶときにやること
次の時期は、契約を結んで仕事を始めるときです。窓口と方針を相手と社内の両方に届けます。
| 番号 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 7 | 契約の書面やメールに相談窓口の連絡先を書く | Q&A 問103 |
| 8 | 相談したことを理由に契約の解除などの不利益な扱いをしない旨を同じ書面に書く | Q&A 問102の⑩ |
| 9 | 契約担当者・検収をする人・一緒に働く社員に方針を周知し研修する | 指針 第4の5(1)イ |
| 10 | 取引先の現場に常駐してもらう場合は、取引先との契約に連携の内容を入れる | Q&A 問105 |
窓口の知らせ方は、契約の書面やメールに連絡先を書くか、相手が定期的に見るイントラネットなどに載せる方法が例に挙がっています。*3 相手に漏れなく届く形が求められているため、受け入れの手続きに組み込むと抜けにくくなります。受け入れの手続き全体は業務委託エンジニアの受け入れで決める5つの手続きで扱っています。
社内への周知は、社員一般だけでなく、契約担当者や事業の担当者、成果物の確認や検収をする人、フリーランスと協力して働く人まで含めるよう指針に書かれています。*2 開発の現場なら、レビューで指摘を伝える人や進み具合を確かめる人が当たります。
契約の条件を話し合っている段階の相手への言動にも、同じ方針を示すことが望ましいとされています。*2 面談を受け持つ人にも前もって伝えておきます。
相談を受けたときにやること
3つ目の時期は、相談が来たときです。事実の確認から再発の防止までを順に進めます。
| 番号 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 11 | 相談者と行為者の双方から事実を確かめ、食い違えば第三者からも聞く | 指針 第4の5(3)イ |
| 12 | 事実が確認できたら、被害を受けた人への配慮の措置をとる | Q&A 問102の⑥ |
| 13 | 事実が確認できたら、行為者への措置をとる | Q&A 問102の⑦ |
| 14 | 事実が確認できなかった場合も含め、方針を改めて周知して再発を防ぐ | 指針 第4の5(3)ニ |

事実の確認がうまく進まないときは、中立な第三者機関に紛争の処理を委ねることも、指針の例に挙がっています。被害を受けた人への配慮の例には、関係の改善への援助、就業場所の変更、行為者の謝罪のほか、取引条件の不利益の回復も含まれます。*2
相談したことや事実の確認に協力したことを理由に、契約の解除などの不利益な扱いをすることは、条文で禁じられています。*1 相談の後に契約の更新や作業量を見直すときは、相談と切り離した理由を説明できるようにします。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
14項目を自社だけで回すのが難しいと感じたら、相談対応を外部の機関に委託することも窓口を定めるやり方の1つです。*3相談の前に、次の点を書き出しておきます。
- 範囲:任せる開発の中身と、フリーランスと一緒に働く社員の顔ぶれ
- 期間:契約の期間と、方針や窓口を知らせる受け入れの時期
- 体制:社内の相談窓口の担当者と、連携する人事部門・契約担当部門
- 費用の決まり方:報酬の額と支払期日、仲介を通す場合の手数料の扱い
- 引き継ぎ:契約が終わるときに受け取る資料と、相談の記録の扱い
フリーランスの側には、厚生労働省の委託事業「フリーランス・トラブル110番」という相談先もあります。*4 自社の規定や契約の書面が措置を満たしているかの個別の判断は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や社会保険労務士に確かめてください。
まとめ:業務委託のハラスメント相談窓口でやること
業務委託のハラスメント対策でやることは、時期ごとに3つに分かれます。第一に、発注を始める前に、自社が対象かを確かめ、ハラスメントを行ってはならない方針と対処の方針を文書にし、相談窓口と担当者の動き方を決めること。第二に、契約を結ぶときに、窓口の連絡先と、相談を理由に不利益な扱いをしない旨を書面やメールで知らせ、検収をする人や一緒に働く社員にも方針を周知すること。第三に、相談を受けたら事実を確かめ、被害を受けた人と行為者への措置をとり、再発を防ぐことです。
よくある質問
社員向けのハラスメント相談窓口をそのまま使えますか
厚生労働省のQ&Aは、社員向けに置いている窓口が第14条の措置の中身を満たしているか確かめたうえで、フリーランスも使えるようにすることも考えられるとしています。どちらの方法でも、窓口をフリーランスに知らせ、使いやすい体制にしておくことが必要です。
相談窓口を外部の機関に委託してもよいですか
指針は、相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例の1つに、外部の機関に相談への対応を委託することを挙げています。委託した場合も、窓口の連絡先を契約の書面やメールなどでフリーランスに知らせます。
業務の時間外の飲み会での言動も対象になりますか
厚生労働省のQ&Aは、業務を行う時間以外の懇親の場でも、実質上、業務の延長と考えられるものは対象に当たるとしています。当たるかどうかは、業務との関連性や参加者などを考えて個別に判断するとされています。
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出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:第2条(定義)、第14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)、第15条(指針)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *2 参考:厚生労働省「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001318005.pdf)。出典:第4の5(講ずべき措置の内容)(1)〜(4)、第4の6(契約交渉中の者に対する言動)を参照(令和8年2月26日改正の版・確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *3 参考:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)Q&A」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001358289.pdf)。出典:問3(従業員を使用)、問99、問102〜問105(第14条 ハラスメント対策に係る体制整備)を参照(令和8年10月23日時点版・確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *4 参考:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく就業環境整備のポイント」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/bunya/freelance_00006.html)。出典:都道府県労働局での法施行状況の説明と、フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業)の案内を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)
- *5 参考:厚生労働省「ハラスメント対策を講じるにあたっての対応例(あらまし抜粋版)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001583287.pdf)。出典:例1(就業規則に禁止の規定を設け、詳細を別規定に定める例)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年11月確認)