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外部エンジニアとCTO不在の進め方、決定は取締役会に残る
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 取締役会の決定には、取締役に委任できないものがある:会社法第362条第4項は、取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができないとしています。*1 名指しされている事項が7つあり、そのほかの重要な業務執行の決定も含むという書き方です。*1
- その第6号は体制の整備で、中身は条文と法務省令に分かれる:第6号は、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制と、その他の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備です。*1 後者を会社法施行規則第100条第1項が5つに分けています。*2
- 大会社である取締役会設置会社は、決めなければならない:大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は第4項第6号に掲げる事項を決定しなければなりません。*1 大会社は、最終事業年度に係る貸借対照表で資本金5億円以上か負債合計200億円以上の株式会社です。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
CTO不在のまま開発を進めることになり、外部エンジニアの手を借りる会社があります。このとき迷うのは、どこまでお願いしてよいのかという線の引き方です。技術の判断は任せられるのか、それとも社内に残るのか。
会社法と会社法施行規則が書いているのは、この線のうち社内側だけです。*1*2 取締役会の決定のうち取締役に委任できないものが名指しされている一方で、社外の人に任せてよいかは書かれていないからです。*1
この記事は、その条文が何を委任できないとしているかと、条文が答えていない部分を読みます。CTO不在の体制をどう組むか、どの会社に頼むかは書きません。外部エンジニアとの契約の形にも踏み込みません。
この記事でいう委任は、取締役会がその決定を取締役に任せることです。*1 外部エンジニアへの発注の契約とは別の話です。取締役会を置いていない会社の扱いも、CTOという語も、今回参照した条文には出てきません。
目次
取締役会の職務は3つに分かれている
先に取締役会の側から確かめます。会社法第362条第1項は、取締役会はすべての取締役で組織すると定めています。*1 第2項は取締役会の職務を3つ挙げていて、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職です。*1
第3項は、取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければならないとしています。*1 取締役会設置会社は第2条第7号で、取締役会を置く株式会社か、この法律の規定により取締役会を置かなければならない株式会社と定められています。*1 後者がどの会社かは、今回参照した条文には書かれていません。
第2項第2号の、取締役の職務の執行の監督も取締役会の職務です。*1 この条が監督の相手として挙げているのは取締役で、外部エンジニアは出てきません。外部エンジニアの働きぶりをどう見るかは、今回参照した条文には書かれていません。
問題は第2項第1号の業務執行の決定です。この決定をどこまで任せられるのかを、第4項が絞っています。*1
委任できない決定は、7つの名指しで終わらない
第362条第4項は「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」です。*1 名指しされているのは7つですが、柱書はそのほかの重要な業務執行の決定も含む書き方なので、7つに限られてはいません。*1
| 号 | 条文が挙げている事項 |
|---|---|
| 第1号 | 重要な財産の処分及び譲受け |
| 第2号 | 多額の借財 |
| 第3号 | 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 |
| 第4号 | 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 |
| 第5号 | 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 |
| 第6号 | 業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備 |
| 第7号 | 第426条第1項の定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除 |
第7号の責任の免除は、条番号だけでは中身が分かりません。第423条第1項は、取締役や監査役などの役員等が任務を怠ったときに会社へ損害を賠償する責任を負うとしています。*1 第426条第1項は、株式会社がその責任の一部を取締役会の決議で免除できる旨を定款で定められるとしています。*1
第4項が相手として挙げているのは取締役です。*1 社外の人に任せてよいかどうかについて、この条文は何も定めていません。判断の材料はこの条文の外にあります。これはこの記事の読み方です。
7つのうち、CTOを置く話に近いのは第3号の支配人その他の重要な使用人の選任及び解任です。*1 ただし第3号が挙げているのは使用人で、取締役は含まれていません。*1 CTOがここでいう重要な使用人に当たるかも、取締役として置く場合の扱いも、今回参照した条文には書かれていません。
この記事が追うのは第6号です。これはこの記事の読み方です。
第6号の体制は、施行規則が5つに分けている
7つのうち、システムの話に近いのが第6号です。条文は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」です。*1
第6号は2つの部分でできています。*1 前半の取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制は、条文が直接に挙げています。*1 後半のその他の体制について、法務省令にあたる会社法施行規則第100条第1項が5つに分けています。*2
5つは、取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制、損失の危険の管理に関する規程その他の体制、取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、企業集団における業務の適正を確保するための体制です。*2
5つめの企業集団の体制は、さらに4つに分けられています。*2 子会社の取締役等の職務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制、子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制、子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制です。*2
施行規則が挙げている5つは、どれも何を確保するかで書かれていて、どう作るかは書かれていません。*2 条文が求めているのは体制であって、それを支える実装ではありません。これはこの記事の読み方です。
会社の形で、決める義務と含める体制が変わる
第362条第5項は「大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない」です。*1 第4項が委任を禁じているのに対し、第5項は決定そのものを義務にしています。*1
大会社は第2条第6号で定められていて、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社です。*1 どちらかに当たれば大会社です。*1
監査役設置会社かどうかでも、第1項の5つに加える体制が変わります。監査役設置会社は第2条第9号で、監査役を置く株式会社のうち、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除いたものと定められています。*1 施行規則第100条第2項は、監査役設置会社以外の株式会社の場合、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含むとしています。*2
第3項は、監査役設置会社の場合に7つを含むとしています。*2 監査役の職務を補助すべき使用人に関する事項、その使用人の取締役からの独立性に関する事項、監査役のその使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項、監査役への報告に関する体制、報告をした者が不利な取扱いを受けないことを確保するための体制、監査役の職務の執行について生ずる費用の処理に係る方針、その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制です。*2
CTO不在で外部エンジニアに頼むときの手順
CTO不在の体制で外部エンジニアに頼むときに、この条文から確かめられる点を3つ、この順に挙げます。この整理はこの記事のものです。
1つめは、自社が取締役会設置会社かどうかです。取締役会を置いているかどうかは、自社の定款や登記で確かめることになります。これはこの記事の読み方です。置いていない会社の扱いは、今回参照した条文には書かれていません。
2つめは、大会社である取締役会設置会社に当たるかどうかです。取締役会設置会社であって、最終事業年度に係る貸借対照表で資本金5億円以上か負債合計200億円以上なら、第5項により第4項第6号の決定が義務になります。*1 当たらない会社に第5項の義務はありませんが、第4項の委任の禁止は取締役会設置会社であれば規模を問わず適用されます。*1
3つめは、頼む相手に渡しているのが実装なのか決定なのかです。施行規則第100条第1項の5つは体制で、実装ではありません。*2 この5つを社外に委ねてよいかどうかは条文にないので、5つを社内で決めてから渡すかどうかは条文の外の判断になります。これはこの記事の読み方です。
順序としては、1つめと2つめが自社の形の確認で、3つめが相手に渡すものの確認です。1つめが先なのは、取締役会を置いていなければ第362条そのものが当たらないからです。*1 2つめが次なのは、大会社である取締役会設置会社かどうかで第6号の決定が義務になるかが変わるからです。*1
なお、合併や事業譲渡で会社そのものが変わるとき、業務委託の契約が元の会社と相手の会社のどちらに残るかは、記事「合併と事業譲渡の違いは承諾の要否」で扱っています。
まとめ:条文が書いているのは取締役への委任まで
CTO不在で外部エンジニアに頼むときに、今回参照した条文から読み取れることは5つです。第一に、会社法第362条第4項は、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができないとしています。*1 第二に、名指しされているのは7つですが、柱書はそのほかの重要な業務執行の決定も含みます。*1 第三に、第6号は条文が直接に挙げる体制と、施行規則第100条第1項の5つに分かれています。*1*2 第四に、大会社である取締役会設置会社では、第362条第5項により第6号の決定が義務になります。*1 第五に、監査役設置会社かどうかで、施行規則第100条第2項と第3項により加える体制が変わります。*2 社外の人に任せてよいかどうかは、いずれの条文にも書かれていません。
よくある質問
第362条第4項の7つ以外は、委任してよいのですか
7つ以外なら委任してよい、とは読めません。条文は「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定」を委任できないとしていて、*1 7つのほかの重要な業務執行の決定も禁止の側に入る書き方だからです。これはこの記事の読み方です。
外部エンジニアに体制の整備を任せられますか
第4項が禁じているのは取締役への委任です。*1 社外の人に任せてよいかどうかは、今回参照した条文には書かれていません。施行規則第100条第1項が挙げているのは体制であって、作業の担い手ではありません。*2
大会社でなければ、第6号を決めなくてよいのですか
第362条第5項が決定を義務づけているのは大会社である取締役会設置会社なので、それ以外の会社にこの項の義務はありません。*1 ただし第4項の委任の禁止は、取締役会設置会社であれば規模を問わず当たります。*1
監査役設置会社に当たらないと、何が変わりますか
会社法施行規則第100条第2項は、監査役設置会社以外の株式会社の場合、第1項の体制に、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含むとしています。*2 監査役設置会社の場合に含めるものは第3項に7つ挙げられています。*2 監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社は、監査役設置会社に含まれません。*1
決定と実装の切り分けから相談したいとき
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出典
- *1 参考:会社法(平成17年法律第86号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)。出典:会社法(平成17年法律第86号)。第2条第6号(大会社)、第2条第7号(取締役会設置会社)、第2条第9号(監査役設置会社)、第362条第1項から第5項まで(取締役会の権限等)、第423条第1項(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)、第426条第1項(取締役等による免除に関する定款の定め)の一次情報として参照(2026年9月確認)
- *2 参考:会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012)。出典:会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)。第100条第1項から第3項まで(業務の適正を確保するための体制)の一次情報として参照(2026年9月確認)