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2026.09.20 採用支援コラム

CTO不在の会社で外部エンジニアに任せる範囲と取締役会の決定

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

楕円形の木の会議テーブルを、茶色い革張りの椅子が囲む無人の会議室の写真。人も読める文字も写っていない

この記事の結論

  • 会社の業務をどう行うかの重要な決定は、取締役会が取締役に任せられないと会社法第362条第4項が定めています。
  • 任せられない決定には業務の適正を確保する体制の整備も含まれ、その体制を会社法施行規則第100条が5つに分けています。
  • 外部エンジニアに頼む前に、取締役会で決めることと、お願いする作業を分けておくと進めやすくなります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

CTOがいないので、開発は外部エンジニアにお願いしたい。けれど、技術のことをどこまで任せてよいのか、社内で決めておくべきことは何なのかがはっきりしない——。CTO(技術部門の責任者)を置かずに開発を進める会社では、こうした迷いが起こりがちです。手がかりになるのが、会社法第362条第4項の「取締役会が取締役に任せられない決定」の定めです。重要な業務執行の決定は、取締役会が自ら行わなければなりません。*1

この定めを知っておくと、お願いする作業と社内で決める事柄を分けて考えやすくなります。ただしこの定めだけで全部が決まるわけではなく、会社法が定めているのは取締役会と取締役の関係で、社外の人に何を任せてよいかまでは定めていません。本記事では、CTO不在で外部エンジニアに開発を頼む経営者や担当者に向けて、取締役会が決めること、取締役に任せられない決定、業務の適正を確保する体制、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

取締役会が決めることとは

会社法第362条は、取締役会の権限を定めた条文です。第2項は取締役会の職務として、業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職の3つを挙げています。*1 言い換えると、会社の業務をどう行うかを決めること、取締役の仕事ぶりを監督すること、代表取締役を選んだり辞めさせたりすることの3つです。このうち外部エンジニアに頼む話に関わるのは、1つめの業務執行の決定です。

この条文が当てはまるのは取締役会設置会社です。第2条第7号は、取締役会を置く株式会社を取締役会設置会社と定めていて、会社法の規定により取締役会を置かなければならない株式会社もここに含まれます。*1 取締役会を置いていない会社には、第362条そのものが当てはまりません。では、業務執行の決定のうち、取締役会が自分で決めなければならないものは何か。それを定めているのが、次に見る第4項です。

取締役に任せられない決定とは

第4項は「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」と定め、7つの事項を挙げています。*1 「その他の」とあるので、任せられないのは7つだけではありません。表に名前が出ていない決定も、重要なものであれば含まれます。

会社法第362条第4項が取締役に委任できないとする事項(2026年9月20日確認)
号 条文が挙げている事項
第1号 重要な財産の処分及び譲受け
第2号 多額の借財
第3号 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
第4号 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
第5号 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
第6号 業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
第7号 第426条第1項の定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除

ここでいう委任は、取締役会がその決定を取締役に任せることで、外部エンジニアと結ぶ業務委託の契約とは法律上は別のものです。それでも、取締役にさえ任せられない決定を社外の人に決めてもらう形は避けたいところです。外部エンジニアに何を頼むかを整理するときは、頼む中身をこの表と照らし合わせておくと役に立ちます。

7つのうち、CTOを置くかどうかに関わりそうなのは、第3号の「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」です。ただし第3号が挙げているのは使用人(会社に雇われて働く人)で、取締役は含まれていません。*1 CTOを社員として迎えるのか、取締役として迎えるのかによって、この号との関係も変わってきます。CTOを置くことを考え始めたら、あわせて確かめておくとよいでしょう。

業務の適正を確保する体制とは

7つのうち、システムや開発の話にいちばん近いのが第6号です。条文は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」です。*1 長い条文ですが、「法務省令で定める体制」の具体的な中身は、会社法施行規則が決めています。

会社法第362条第4項が取締役に委任できないとする事項と、その第6号が指す体制を並べた図。第4項には第1号の重要な財産の処分及び譲受け、第2号の多額の借財、第3号の重要な使用人の選任及び解任、第4号の重要な組織の設置、変更及び廃止、第5号の社債を引き受ける者の募集、第7号の責任の免除が並ぶ。第6号は業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備で、会社法施行規則第100条第1項が5つに分けている。5つは情報の保存及び管理に関する体制、損失の危険の管理に関する規程その他の体制、取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保する体制、使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保する体制、企業集団における業務の適正を確保するための体制である。大会社である取締役会設置会社では、第362条第5項により第6号を決定しなければならない。

会社法施行規則第100条第1項は、その体制を次の5つに分けています。*2

  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 企業集団における業務の適正を確保するための体制

施行規則が定めているのは、それぞれの体制で何を確保するかで、どんな仕組みで実現するかまでは定めていません。たとえば情報の保存及び管理に関する体制なら、どの情報をどれだけの期間保存し、誰が管理するかを社内で決めておきます。その決まりに沿って文書を保存するシステムを作ったり、設定を変えたりする作業を外部エンジニアにお願いする、という分け方ができます。

体制の整備を決める義務がある会社

第362条第5項は「大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない」と定めています。*1 第4項は取締役に任せることを禁じる定めで、第5項は決めること自体を義務にする定めです。同じ第6号の体制でも、この2つの項は役割が違います。

大会社は、第2条第6号で定められています。最終事業年度の貸借対照表で、資本金が5億円以上か、負債の合計額が200億円以上の株式会社です。*1 どちらか一方に当てはまれば大会社になります。資本金は小さくても、負債の合計額で大会社に当たる場合がある点には気をつけておきたいところです。

大会社でない取締役会設置会社には、第5項の決める義務はありません。一方で、第4項の委任の禁止は、取締役会設置会社であれば規模を問わず当てはまります。*1

外部エンジニアへの頼み方をどう決めるのか

CTO不在の会社が外部エンジニアに開発を頼むときは、次の3つの順で確かめていくと整理しやすくなります。1つめは、自社が取締役会設置会社かどうか。2つめは、大会社である取締役会設置会社に当たるかどうか。3つめは、頼む相手に渡そうとしているものが、決定なのか作業なのかです。

1つめを先に確かめるのは、取締役会を置いていなければ、第362条そのものが当てはまらないからです。2つめを次に確かめるのは、それによって第6号の体制の整備を決める義務があるかどうかが変わるからです。どちらも、定款と直近の貸借対照表があれば社内で確かめられます。

3つめでは、外部エンジニアにお願いしたい作業を一つずつ書き出し、その中に取締役会で決めるべき事柄が混ざっていないかを見ます。たとえば「社内の文書をどれだけの期間保存するかを決め、保存のシステムも作ってほしい」という頼み方は、決定と作業が一緒になっています。保存の期間と管理する人は取締役会で決め、システムの設計と構築を外部エンジニアに頼む、という形に分けておくと進めやすくなります。

合併や事業譲渡で会社そのものが変わるときに、業務委託の契約が元の会社と相手の会社のどちらに残るかは、記事「合併と事業譲渡の違いは承諾の要否」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、表の7つに当たらないから任せてよいと考えてしまうことです。7つに名前が出ていないことは、任せてよい理由にはなりません。重要かどうか迷う決定は、取締役会で決めておくほうが無難です。

二つ目は、決定と作業を一緒に外部エンジニアへ渡してしまうことです。CTOがいない会社では、技術に詳しい人に考えてもらったほうが早いと感じやすいものです。けれど、第6号の体制の整備を決めるのは取締役会です。外部エンジニアには選択肢や注意点を出してもらい、そのうえで取締役会が決める、という順にしておくと、後で誰が決めたのかがはっきりします。

三つ目は、大会社ではないから体制の話は関係ないと考えてしまうことです。先に見たとおり、第4項の委任の禁止は規模を問わず当てはまります。体制を整える必要が出てきたときに、取締役の誰か1人の判断で進めてしまわないよう、先に取締役会で決める段取りを組んでおくと進めやすくなります。

まとめ:外部エンジニアに頼む前の3つの点

CTO不在のまま外部エンジニアに開発を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社が取締役会設置会社か、さらに大会社に当たるかを定款と貸借対照表で確かめること。第二に、取締役会が取締役に任せられない決定には、表の7つだけでなく、そのほかの重要な業務執行の決定も含まれると押さえておくこと。第三に、外部エンジニアにお願いする作業を書き出し、取締役会で決めるべき事柄と分けてから渡すことです。この3点を踏まえておけば、「気づいたら大事なことまで外部エンジニア任せになっていた」という事態を避けやすくなります。決定と作業の分け方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

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CTO不在のまま開発を進める段階から、社内に残す決定と外部にお願いする実装の切り分けをご相談いただけます。体制がまだ決まっていない段階で構いません。

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よくある質問

第4項の第7号にある「責任の免除」とは何ですか

役員等が会社に負う損害賠償の責任を、取締役会の決議で一部免除することです。第423条第1項は、取締役や監査役などの役員等が任務を怠ったときに会社へ損害を賠償する責任を負うとし、第426条第1項は、その責任の一部を取締役会の決議で免除できる旨を定款で定められるとしています。*1 この免除も、取締役に任せられない決定の一つです。

子会社がある場合、体制には何が含まれますか

会社法施行規則第100条第1項の5つめ、企業集団における業務の適正を確保するための体制が当てはまります。この体制はさらに4つに分けられていて、子会社の取締役等の職務の執行に係る事項の報告、子会社の損失の危険の管理、子会社の取締役等の職務の執行の効率、子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを、それぞれ確保する体制です。*2

監査役を置いているかどうかで、体制の中身は変わりますか

変わります。会社法施行規則第100条第2項は、監査役設置会社以外の株式会社では、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含むとしています。第3項は、監査役設置会社では、監査役の職務を補助すべき使用人に関する事項や、監査役への報告に関する体制など7つを含むとしています。*2 監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社は、監査役設置会社に含まれません。*1

決定と実装の切り分けから相談したいとき

社内に残す決定と、外部にお願いする作業の整理からご相談いただけます。

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出典

  1. *1 参考:会社法(平成17年法律第86号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)。出典:会社法(平成17年法律第86号)。第2条第6号(大会社)、第2条第7号(取締役会設置会社)、第2条第9号(監査役設置会社)、第362条第1項から第5項まで(取締役会の権限等)、第423条第1項(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)、第426条第1項(取締役等による免除に関する定款の定め)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012)。出典:会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)。第100条第1項から第3項まで(業務の適正を確保するための体制)を参照(2026年9月確認)




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