LASSIC Media らしくメディア
システム開発の品質はなぜ崩れる?ベンダーのスキル不足が過半数
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 要因の首位はベンダーのスキル不足:品質が崩れた172社のうち、59.9%がベンダーのスキル不足を挙げました。*1
- 社内側も44.8%が挙げている:社員のスキル不足は44.8%で、仕様変更の多発の30.2%を上回ります。*1
- 大きい案件ほど崩れやすい:品質に不満と答えた割合は、10人月未満で5.4%、500人月以上で29.6%でした。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
テストは一通り終えたのに、リリースの翌週になっても不具合の報告が止まらない。あるいは、原因を聞かれても「いろいろ重なって」としか答えられない——。システム開発を続けていると、多くの現場が品質の崩れに突き当たります。その原因を一つに絞る手がかりになるのが、JUASが毎年公表している「企業IT動向調査」です。品質が予定どおりにならなかったと答えた企業だけに、その要因を選んでもらった設問が置かれています。*1
調査の数字は、自社の感触が思い込みでないかを確かめる物差しになります。ただし万能ではなく、要因の順位が分かるだけで、どう手を打てばよいかまでは書かれていません。本記事では、開発の現場を預かるマネージャに向けて、何が要因に挙がっているのか、なぜ社内側も要因になるのか、どう切り分けるのか、つまずきやすい点、そして外注の勘所を整理します。
何が要因に挙がっているのか
JUASの「企業IT動向調査2026」は、東証上場企業とその子会社を対象に、2025年9月5日から10月24日にかけて実施されました。回収数は957社、有効回答率は21.3%です。*1 このうち品質が予定どおりにならなかったと答えた172社が、要因の設問に回答しています。*1 対象が崩れた案件に限られているため、うまくいった案件との比較ではなく、崩れたときに何が挙がるのかを見る資料だと考えてください。
| 要因 | 25年度 | 22年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ベンダーのスキル不足 | 59.9% | 54.4% | 5.5ポイント増 |
| 計画時の考慮不足 | 48.8% | 42.5% | 6.3ポイント増 |
| 想定以上の現行業務・システムの複雑さ | 48.8% | 43.1% | 5.7ポイント増 |
| 社員のスキル不足 | 44.8% | 35.6% | 9.2ポイント増 |
| 仕様変更の多発 | 30.2% | 33.1% | 2.9ポイント減 |
| 開発体制のリソース不足 | 28.5% | 29.4% | 0.9ポイント減 |
| 想定外の外的要因 | 9.3% | 7.5% | 1.8ポイント増 |
| その他 | 3.5% | 3.1% | 0.4ポイント増 |
172社が挙げた要因で最も多かったのは、ベンダーのスキル不足でした。59.9%がこの項目を選んでいます。*1 続くのが計画時の考慮不足と、想定以上の現行業務・システムの複雑さで、どちらも48.8%です。*1 委託先の技量と、着手前の見積り、そして既存システムの読みにくさ。この三つが上位に並びます。
ベンダーのスキル不足は、22年度の54.4%から5.5ポイント上がっています。ただし、なぜ上がったのかは調査に書かれていません。委託する範囲が広がったのか、求める技術が変わったのか、いずれの理由も今回参照した資料からは読み取れませんでした。この設問は複数回答なので、1社がいくつ選んだかも示されておらず、合計は100%になりません。順位と割合は読めますが、どの要因が最も深刻だったかまでは分からない。ここは押さえておいてください。
なぜ社内側も要因になるのか
要因の首位がベンダーのスキル不足なら、委託先を替えれば済みそうに見えます。ところが同じ調査で、社員のスキル不足を挙げた企業も44.8%ありました。*1 仕様変更の多発の30.2%を14.6ポイント上回っており、委託先を替えるだけでは届かない範囲が残ります。仕様の意図を読み、どこを確かめるべきかを決める作業は、結局のところ発注側に残るためです。
4年分を並べると、この項目の動きがはっきりします。社員のスキル不足は22年度の35.6%から9.2ポイント上がり、8つの要因のなかで上げ幅が最も大きくなりました。一方、開発体制のリソース不足は0.9ポイント下がっています。人手が足りないという回答が減り、技量が足りないという回答が増えた計算です。増員で取り返すという前提は、他社でも崩れつつあると読めます。
崩れやすさは案件の大きさとも結びついています。品質に不満と答えた割合は、10人月未満の688社では5.4%にとどまる一方、500人月以上の223社では29.6%に達しました。*1 この開きは24.2ポイント、倍率にすると約5.48倍です。なお14.6ポイント、9.2ポイント、24.2ポイント、約5.48倍は、いずれも資料が印字した値ではなく、示された割合から筆者が算出しました。
どう切り分けるのか
切り分けは、案件を1件に絞るところから始めます。品質が予定どおりにならなかった案件のうち、直近で報告の場に出たものを選んでください。複数をまとめて振り返ると、要因が混ざって決められなくなるためです。
次に、その案件の要因がスキルと計画のどちらに当たるかを決めます。確認すべき観点そのものが抜けていたならスキル、着手前に決めておくべきことが決まっていなかったなら計画です。どちらとも言えるときは、先に手を打てるほうを選べば十分です。ここまでは社内の記録と関係者の記憶で判断できます。
スキルだと決まったら、その技術を持つ人が社内にいるかを確かめます。いなければ育てるところから始めることになりますが、社員のスキル不足を挙げた企業が4年で9.2ポイント増えたことを踏まえると、育成が案件の進行に追いついていない現場は少なくないと考えられます。
つまずきやすい難所
一つめは、要因の順位を深刻さの順位と取り違えることです。この設問は複数回答なので、挙げた企業が多い要因が、被害の大きい要因とは限りません。
二つめは、スキル不足の中身まで読もうとすることです。どの技術が足りなかったのか、どの工程で足りなかったのかは調査に含まれていません。ベンダー側と社員側のどちらが主因かも、25年度の回答が172社にとどまるため決められません。*1
三つめは、他社の割合をそのまま自社の答えにすることです。調査が示すのは崩れた企業全体の分布であって、自社の案件の診断ではありません。自社の記録と突き合わせて初めて使える数字になります。
外注時に確認しておきたい点
スキル側の不足を外部の要員で埋めると決めたら、任せる作業と期間を1行で書き出します。「結合テストの設計を、来月末まで」といった粒度で構いません。範囲と期間が決まっているほど、外部の要員(フリーランスを含む業務委託)は合わせやすい調達の仕方になります。
書き出したら、レビューまで任せるのか、決まった仕様の実装だけを任せるのかを分けます。前者なら設計の判断ができる経験が要りますし、後者なら手数を出せる人で足ります。この区別を曖昧にしたまま声をかけると、着任後に範囲を詰め直すことになり、社内の確認工数がかえって増えます。
一方、合否を判断する基準づくりは社内に残してください。基準まで社外に委ねると、受け取った成果物を評価する物差しが社内からなくなります。正社員の採用と外部の要員のどちらを選ぶかも、この基準が社内にあるかどうかで変わってきます。
工期が予定どおりにならなかった場合の要因は、開発遅延の要因は社員のスキル不足が46.5%を占めるで扱っています。
テストの人手が足りないときの切り分けは、外部エンジニアのテスト体制、IPAが定める4つの区分にあります。
遅れの原因を絞る前の段階については、開発の遅延の原因、変更管理ができているのは51.9%で整理しました。
社内に誰がどの技術を持っているかの把握は、スキルマップの整備の違い、未対応42.8%と整備済み33.7%で扱っています。
まとめ:品質の要因で押さえる3つの視点
システム開発の品質は、委託先の技量と、社内に残る判断の両方で崩れます。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、要因の首位はベンダーのスキル不足であり、品質が崩れた172社のうち59.9%がこれを挙げていること。*1 第二に、それでも社員のスキル不足が44.8%あり、仕様変更の多発の30.2%を上回るため、委託先を替えるだけでは届かない範囲が残ること。*1 第三に、案件が大きいほど崩れやすく、品質に不満と答えた割合は10人月未満の5.4%から500人月以上の29.6%まで上がることです。*1 この3点を踏まえておけば、「委託先を替えたのに、次の案件でも同じところでつまずいた」という事態を避けやすくなります。案件を1件に絞り、要因がスキルと計画のどちらに当たるかを決めるところまでは社内でできます。その先、必要な技術を持つ人が社内にいなければ、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
品質が崩れた要因として最も多いのは何ですか
JUAS「企業IT動向調査2026」では、ベンダーのスキル不足が59.9%で最も多い回答でした。*1 回答したのは、品質が予定どおりにならなかったと答えた172社に限られます。*1 確認日は2026年9月18日です。
委託先を替えれば品質は戻りますか
社員のスキル不足を挙げた企業も44.8%あり、仕様変更の多発の30.2%を上回りました。*1 この割合を見るかぎり、委託先を替えるだけでは届かない範囲が残ります。確認日は2026年9月18日です。
案件の大きさで品質の崩れ方は変わりますか
10人月未満の688社では5.4%、500人月以上の223社では29.6%が品質に不満と答えました。*1 この開きは24.2ポイント、倍率は約5.48倍で、いずれも筆者が算出しています。確認日は2026年9月18日です。
社内で育てれば足りますか
社員のスキル不足は22年度の35.6%から9.2ポイント上がり、8つの要因のなかで上げ幅が最も大きい項目でした。*1 この上げ幅から、育成が案件の進行に追いついていない現場は少なくないと考えられます。期限のある案件では、社外から借りる判断も要ります。確認日は2026年9月18日です。
どの要因が最も深刻かは分かりますか
深刻さの順位は読み取れません。この設問は複数回答のため、挙げた企業が多い要因が被害の大きい要因とは限らないからです。しかも25年度の回答は172社にとどまります。*1 確認日は2026年9月18日です。
任せる作業が決まったら相談
「結合テストの設計を来月末まで」といった形で作業と期間が書けていれば、そのままご相談いただけます。まだ要因がスキルと計画のどちらか決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、結合テストの設計から任せる要員も、渡した仕様どおりに実装する要員も、作業と期間を決めたうえでお探しいただけます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)報告書(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会発行。調査期間2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とその子会社、25年度の回収数957社・有効回答率21.3%、図表7-1-6(システム開発の品質が予定どおりにならなかった要因)、図表7-1-4(プロジェクト規模別のQCD不良の割合)の一次情報として。この記事は資料に示された数値をもとに図と表を筆者が作成した。資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:JUAS 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(https://juas.or.jp/)。発行元の確認として(2026年9月確認)