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レガシー移行に必要な人材|直せる人が見つからないときの探し方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの2024年度の調査では、レガシー移行に最も必要な人材として、移行の手段を設計する技能を43.8%の企業が挙げました。
- システムを作る技能にあたる「製造」は7.3%で、選択肢の中で4番目にとどまりました。
- いまのシステムの中身を調べる作業は、期間を区切って外部の専門人材に任せると進めやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
担当者が辞めた古いシステムを引き継ぐことになった。プログラムを直せる人を探そうとしたものの、そもそも何がどこにつながっているのかを説明できる人が社内にいない——。長く使い続けてきた古いシステム(レガシーシステム)を新しい仕組みへ移す現場では、こうした行き詰まりが起こりがちです。レガシー移行に必要な人材とは、古いシステムを移すときに確保しておきたい技能を持つ人のことです。
どんな技能を持つ人が最も必要とされているかは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「2024年度ソフトウェア動向調査」で、企業に尋ねた設問から確かめられます。ただし万能ではなく、設計する人さえいれば移行が進むわけではありません。本記事では、レガシーシステムの移行を担当する方に向けて、企業が最も必要とした人材、その背景にあるシステムの古さと規模、引き継ぎの進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
レガシー移行に必要な人材とは
IPAの調査には、レガシーシステムを移行する際に最も必要と考えられる人材の技能の種類(スキル種別)を、1つだけ選ぶ設問があります。*3 調査は2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われ、2025年4月7日時点で企業799件、個人74件の回答がありました。*1 本記事で扱うのは企業向けの799件で、件数と割合は公開されている回答データから集計した値です。*2
この設問に答えたのは、799件から2段階で絞り込まれた企業です。まず、答える対象はシステムを使う側のユーザー企業662件と、ユーザー系情報システム子会社(親会社のシステムを担う子会社)20件を合わせた682件で、開発を請け負うシステム会社などのベンダー系117件は対象に入りません。*2 そのうえで、レガシーシステムを保有している322件と、過去に保有していた62件を合わせた384件が答えています。
答える前には、経営上及びビジネス上最も重要と考えられるシステムを一つ思い浮かべるよう指示されています。*3 過去に保有していた企業は過去の移行時のシステムを想定し、既に移行が完了している企業は、特に重要な役割を果たした人材を選ぶよう求められています。つまり、どの数値も企業が持つシステム全体ではなく、選ばれた1つのシステムについての回答です。
企業が最も必要とした人材
384件のうち最も多かったのは「ビジネスアーキテクト、ITアーキテクト」で、168件、43.8%でした。*2 設問の説明では、業務の流れやシステム全体、システムの移行や刷新の手段を設計する技能とされています。*3 2番目は、計画を立て、進み具合や人の配置を管理する「プロジェクト管理」で108件、28.1%、3番目は運用の設計やシステムの保守を担う「運用」で43件、11.2%です。
システムの開発や構築の技能にあたる「製造」は28件、7.3%で、4番目にとどまりました。残りは「わからない」が26件、6.8%、「その他」が6件、1.6%、データの構造や使い方を設計する「データサイエンティスト」が5件、1.3%です。*2
集計値から計算すると、1番目の設計する技能と製造の差は割合で36.5ポイント、件数では168件と28件で6.00倍になります。移行でまず必要とされているのは、プログラムを書く人よりも、何をどう置き換えるかを設計できる人です。
なぜ設計できる人が先なのか
設計できる人が先に必要とされる理由の手がかりは、同じ384件にシステムの古さと大きさを尋ねた設問にあります。選ばれたシステムの稼働年数は「21年以上」が143件、37.2%で最も多く、「11~20年」が130件、33.9%で続きます。*2 2つを足すと273件、71.1%で、7割のシステムが11年以上動いていることになります。「わからない」は54件、14.1%、「6~10年」は44件、11.5%でした。
規模の設問では、「わからない」が249件、64.8%で最も多くなりました。*2 規模はKSLOC(1,000行単位のコード行数)で尋ねられており、数字で答えた中では「1,000KSLOC以上」の89件、23.2%が最多です。*3 経営上最も重要だとして自ら選んだシステムでも、3分の2近くの企業がその大きさを答えられていません。
長く動いていて、大きさも分からないシステムを移すときは、プログラムを書き始める前に、いまのシステムが何をしていて、ほかのどのシステムとつながっているかを調べ、どこまでを置き換えるかを決める作業が要ります。この調べて決める作業を担うのが、設計する技能を持つ人です。作る人を先に確保しても、何を作るかが決まるまでは作業を始められません。
移行が1つで終わらない場合
同程度の規模のレガシーシステムを他にも保有しているかという設問では、「1~5システム」が132件、34.4%で最も多くなりました。*2 「6~10システム」は42件、10.9%、「11システム以上」は39件、10.2%です。ほかにも1つ以上持つと答えた3区分を足すと213件、55.5%で、半分を超える企業が、同じくらいの大きさのシステムをほかにも抱えています。
「他には保有していない」は105件、27.3%、「わからない」は66件、17.2%でした。1つのシステムを移し終えても、次の移行が控えている場合は、そのたびに一から調べ直さないよう、1つ目で調べた内容を文書に残しておくと、2つ目以降の作業を始めやすくなります。仕様を文書にまとめる手順は「レガシーの仕様書を引き継ぐ手順」で扱っています。
どう進めるのか
担当者が辞めたシステムを引き継いで移行まで進めるときは、次の4つの段階で進めると整理しやすくなります。
- 引き継ぐシステムを1つに絞る
- そのシステムの稼働年数と規模が分かるかを確かめる
- 調べる作業と、どの機能をどこまで移すかを決める作業を分けて書き出す
- 調べる作業を期間を決めて外部の人に任せ、結果を文書で受け取る
1段目で1つに絞るのは、同程度のシステムをほかにも持つ企業が55.5%あり、すべてを同時に調べ始めると、どれも途中で止まりやすいためです。2段目で稼働年数と規模を確かめるのは、規模を答えられない企業が64.8%に上るためです。稼働年数は社内のシステム一覧に残っていても、コードの行数は誰も把握していないことがあります。
3段目で2つの作業を分けるのは、どの機能をどこまで新しくするかは自社の事業に関わる判断で、社内に残したい部分だからです。調べる作業には、プログラムの中身、データの流れ、ほかのシステムとのつながりを書き出すことが含まれます。4段目で期間と受け取る文書を決めておくと、調べた結果が口頭の説明だけで終わらず、2つ目以降の移行でも見返せます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
3段目で書き出した調べる作業と、4段目で決めた期間は、そのまま外部の専門人材に頼む作業の単位になります。フリーランスを含む業務委託は、作業と期間を区切って頼めるので、この進め方に合っています。委託先には、対象のシステム、調べてほしいこと、期間、受け取りたい文書の形を最初に伝えておきます。
一方で、1段目の対象の絞り込みと、3段目の移し方の判断は社内で行います。この2つまで委託すると、どのシステムをどこまで新しくするかという判断まで委託先に移ってしまうためです。IT人材が足りないときに企業がとっている対応は「IT人材不足の対応」で、担当者が辞める前に確かめておきたいことは「担当者の離脱に備える確認」で扱っています。
なお、この調査は任意の回答で、答えた企業が全体を代表するように選ばれたものではありません。また、最も必要な技能を1つ選ぶ形式なので、何人をどれだけの期間といった体制の大きさは分かりません。数値は、自社で最初に確保する技能を考える目安として使うのが向いています。
まとめ:レガシー移行で確かめておきたい3つの点
レガシー移行に必要な人材を考えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、企業が最も必要とした技能は設計する側の43.8%で、製造の7.3%を大きく上回ること。第二に、移すシステムの稼働年数と規模が分かるかを先に確かめ、調べる作業と、どの機能をどこまで移すかを決める作業を分けること。第三に、社内に担当者がいない調べる作業は、期間を区切って任せ、結果を文書で受け取ることです。この3点を踏まえておけば、「プログラムを直せる人を採用したのに、何を直せばよいかが決まらず作業が始まらない」という事態を避けやすくなります。引き継ぎの体制づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査の回答データは、自社でも集計し直せますか
集計し直せます。IPAは回答を匿名化してオープンデータとして公開し、そのデータを使った分析レポートを募集しています。*1 本記事の件数と割合も、公開されている企業向けの回答データから集計した値です。
KSLOCはどのような単位ですか
設問の定義では、SLOCはソフトウェアのコード行数のことです。KSLOCは、その1,000行を1つの単位として表します。*3 1,000KSLOC以上と答えたシステムは、コードが1,000行の1,000倍以上ある大きさです。
同じ調査の別の記事と、同じ数値が出てくるのはなぜですか
同じ384件の企業に、別の設問も尋ねているためです。本記事の稼働年数「21年以上」の143件、37.2%と同じ数字が、仕様の可視化を扱った「レガシーの仕様書を引き継ぐ手順」にも出てきますが、そちらは別の設問の値です。
移行や刷新が止まる理由も調べられていますか
IPAの別の年度の調査に、刷新が止まる理由を尋ねた設問があります。本記事とは年度も設問も違うため、「レガシー刷新を止める理由」で別に扱っています。
レガシー移行の体制を相談したいとき
調べる作業と決める作業を分けたあと、どこから任せるか。作業と期間の区切り方からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:独立行政法人情報処理推進機構。公開日2025年2月27日・最終更新日2025年4月25日、調査期間2024年12月17日〜2025年2月14日、2025年4月7日時点の回答件数(企業799件・個人74件)、回答を匿名化してオープンデータとして公開し分析レポートを募集していることを参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。Q5-14・Q5-7・Q5-5・Q5-6の回答の元データ。件数・割合、区分を足した値、差と倍率はこのデータから集計・計算した値(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。Q5-3からQ5-14の設問文・選択肢の説明・単一選択であること、回答対象の企業種別、経営上及びビジネス上最も重要と考えられるシステムを一つ思い浮かべて答える形式、過去保有企業と移行完了企業への指示、SLOCとKSLOCの定義を参照(2026年9月確認)