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事業場外みなし労働時間制が使えない3例
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 前提は算定が困難であること:指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な場合に、算定義務を免除する制度です*1。
- 指示を受けていれば適用できない:随時指示を受ける場合や指示どおりに従事する場合は対象外とされています*1。
- 残業代も深夜割増もなくならない:休憩・深夜業・休日等の規定は適用され、割増賃金の支払いが必要です*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
求人票の労働時間欄に「事業場外みなし労働時間制」と書けるかどうかは、働く場所では決まりません。決めるのは、労働時間を算定できるかどうかです。
東京労働局の解説はこう定義しています。労働基準法第38条の2による事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です*1。
外勤だから適用できる、在宅勤務だから適用できるという制度ではありません。同じ解説は使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできませんとして、3つのケースを挙げています*1。
本記事では制度の前提、適用できない3つのケース、在宅勤務での要件、時間の数え方、そして割増賃金の扱いを整理します。個別の適用可否は労働基準監督署の判断ですが、求人票に書く前に押さえておく必要があります。
目次
前提は「算定が困難」であること
まず制度の位置づけを確認します。
対象となる業務の範囲は限定されています。事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です*1。
制度の効果は「算定義務の免除」です。労働時間そのものが消えるわけではなく、実際に何時間働いたかを問わずに特定の時間で計算してよいという扱いになります*1。
算定の方法も条文で決まっています。厚生労働省のQ&Aはこう説明しています。みなし労働時間制の場合、所定労働時間労働したものとみなすのが原則ですが、当該業務のために所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合には、そのような「通常必要となる時間」がみなし時間となります*3。
所定労働時間でみなすのは原則の側です。実態として所定を超えるのが通常なら、その時間でみなすことになります*1*3。
労働時間制度そのものを条件として打ち出す場合の整理はフレックスタイム制と通常勤務、残業代の違いで扱いました。
適用できない3つのケース
東京労働局の解説は、事業場外で働いていても適用できない場合を3つ挙げています*1。
- 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
- 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
- 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合
3つ目が実務では最も見落とされます。朝礼で訪問先と帰社時刻を指示し、そのとおりに回って戻ってくる運用は、外勤であっても算定が可能とみなされます*1。
2つ目は表現が古いものの、判断の軸は変わりません。随時使用者の指示を受けながら働いている状態が問題であり、通信手段の種類ではなく指示の受け方が基準です*1。
営業職なら使える、という前提で就業規則を書くと外れます。同じ営業職でも、指示の出し方によって適用の可否が変わります。
解説は判断の材料についても触れています。労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制の適用の可否についての判断にあたっては、民事裁判例が参考となります*1。行政の解釈だけで決め切れる論点ではないという扱いです。
在宅勤務に適用するには3つの要件
自宅で働く場合の要件は、別に整理されています。
東京労働局の解説は3要件を挙げています。次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます*1。
- 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
- 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
- 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
テレワークガイドラインは、2つ目の要件について解釈例を示しています。情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはないとしたうえで、次の場合は要件を満たすと認められるとしています*2。
- 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
- 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
- 会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合
会社支給のスマートフォンを持たせること自体は障害になりません。問題は、応答のタイミングを本人が決められるかどうかです*2。
3つ目の要件についても解釈が示されています。使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合が該当します*2。
逆に適用されない例も明記されています。労働契約において、午前中の9時から12時までを勤務時間とした上で、労働者が起居寝食等私生活を営む自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、当該措置の下で随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず適用されません*1。
一部でも事業場内で働いた日は合算する
数え方でつまずくのは、内勤と外勤が混ざる日です。
算定方法は3つに整理されています。所定労働時間、事業場外の業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間、そして労使で協定したときです*1。
そのうえで重要な制約があります。労働時間の一部を事業場内で労働した場合には、その時間については別途把握しなければならず、「みなす」ことはできません*1。
内勤の時間は実測が必要です。その日の労働時間は別途把握した事業場内における時間とみなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間を合計した時間になります*1。
解説には具体例もあります。所定労働時間が7時間30分の会社で、内勤4時間のあとに外勤へ出て直帰する場合、外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)と内勤の時間(4時間)を合計すると7時間となり、所定労働時間以内であるので、外勤については内勤と合わせて所定労働時間労働したとみなし、1日の労働時間は7時間30分となります*1。
一方で外勤の通常必要時間が例えば5時間のとき、内勤の時間の4時間を加えると9時間となり所定労働時間を超えるので、この外勤は5時間労働したものとみなして、別途把握した内勤の時間の4時間を加えて、1日の労働時間は9時間になります*1。
労使協定についても方針が示されています。突発的に生ずるものは別として、常態として行われている場合は、できる限り労使協定を結ぶことが望まれます*1。
常態化しているなら協定を結ぶという整理です。賃金の算定単位が事業場ごとに決まる点は最低賃金は勤務地ではなく事業場で決まるで扱いました。
残業代も深夜割増もなくならない
ここが求人票で誤解を生みやすい部分です。
解説は適用範囲を限定しています。事業場外労働のみなし労働時間制は労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定に適用することとされていますので、同章の規定であっても労働時間に関する規定ではない休憩、深夜業、休日等に関する規定の適用はあります*1。
時間外労働については明確です。みなし労働時間と別途把握した事業場内の業務に従事した時間の合計が1日8時間を超えるなど法定労働時間を超える場合には、法定労働時間を超えた時間は時間外労働となり、2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります*1。
休日労働も適用されます。法定休日に労働させた場合、労働時間の全部が事業場外で業務に従事してその労働時間の算定が困難であり、通常必要時間が所定労働時間以内であるときには、所定労働時間労働したものとみなしますので、この所定労働時間に対して3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります*1。
深夜労働は実際の労働時間で判定されます。深夜労働の規定は適用されますので、午後10時から午前5時までの間に実際に労働したときは、その時間については2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります*1。
深夜だけは「みなし」ではなく実測になります。夜間に作業した記録が残れば、その分の割増賃金が発生します*1。
| 区分 | 判定に使う時間 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | みなし労働時間+別途把握した事業場内の時間 | 2割5分増以上 |
| 法定休日労働 | みなした所定労働時間(一部内勤なら通常必要時間+内勤時間) | 3割5分増以上 |
| 深夜労働 | 午後10時から午前5時までに実際に労働した時間 | 2割5分増以上 |
所定休日の扱いも書かれています。法定休日以外の所定休日労働の場合も法定休日と同様に、所定休日労働の時間を算定して、法定労働時間を超える時間は時間外労働となるため、2割5分増以上の割増賃金が必要です*1。法定休日か所定休日かで割増率が変わります。
年少者と妊産婦にも別の扱いがあります。事業場外労働のみなし労働時間制に関する規定は、労働基準法第6章の年少者及び同法第6章の2の妊産婦等に関する規定における労働時間の算定には適用されないため、同章における年少者及び妊産婦等に関する規定における労働時間は実際の労働時間となります*1。
法定休日の考え方そのものは完全週休2日制と週休2日制、年間休日での違いにまとめています。
求人票に書く前に確認する順番
ここまでを踏まえて、確認の順番を4つに整理します。
第1に、指示の出し方を見ます。訪問先や帰社時刻を当日に指示しているなら、外勤でも適用できません*1。指示を業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどめられるかが分かれ目です*2。
第2に、通信の切り方を決めます。常時通信可能な状態におくことを求めているなら要件を満たしません*1。応答のタイミングを本人が判断できる運用にしておく必要があります*2。
第3に、内勤が入る日の扱いを決めます。一部でも事業場内で働く日は、その時間を別途把握して合計します*1。勤怠システムの設定を先に確認したほうが早いでしょう。
第4に、みなし時間の水準を実態に合わせます。ガイドラインは必要に応じて、実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこととしています*2。
求人票の労働時間欄には、この結果を書くことになります。記載と実際がずれたときに何が起きるかは求人情報の的確な表示、企業に課される義務で扱いました。明示すべき項目そのものはエンジニア求人票の書き方と必須14項目にまとめています。
働き方の条件を組み立て直すときのご相談
制度の適用可否と募集の条件は、別々に決められません。任せたい職責と必要な稼働の形から、担当が一緒に整理できます。
最後に制度の整備が募集に間に合わないと判断したときの分岐を1つだけ挙げておきます。就業規則の変更と労使協定の締結には時間がかかります。その間の実務を業務委託で回し、制度を整えてから正社員の募集に戻すという順番も現実的な選択肢です。適用が曖昧なまま求人票に書いてしまう前の検討として有効でしょう。
まとめ:事業場外みなしで押さえる3点
第一に、制度の前提です。事業場外労働のみなし労働時間制は、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために労働時間の算定が困難な場合に、使用者の算定義務を免除して特定の時間を労働したとみなす制度です。所定労働時間労働したものとみなすのが原則で、所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合はその通常必要時間がみなし時間になります。第二に、適用できない場合です。グループで事業場外労働に従事しメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合、訪問先や帰社時刻等の当日の業務の具体的指示を受けた後に指示どおりに従事してその後事業場に戻る場合は、指揮監督が及んでいるため適用できません。在宅勤務に適用するには、業務が起居寝食等私生活を営む自宅で行われること、情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないことの3要件を満たす必要があります。第三に、割増賃金です。労働時間に関する規定ではない休憩、深夜業、休日等の規定は適用されるため、みなし時間と別途把握した事業場内の時間の合計が1日8時間を超えれば時間外労働として2割5分増以上、法定休日の労働には3割5分増以上、午後10時から午前5時までに実際に労働した時間には2割5分増以上の割増賃金が必要です。年少者および妊産婦等に関する規定における労働時間は実際の労働時間で判断します。まずは当日の指示の出し方と、内勤が入る日の集計方法を確認してください。
よくある質問
事業場外みなし労働時間制はどんな場合に使えるのですか。
労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために労働時間の算定が困難な場合に使える制度です。対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です。事業場外で働いていることだけが条件ではなく、指揮監督が及んでいて労働時間の算定が可能な場合には適用できません。
外勤の営業職なら適用できますか。
指示の出し方によります。東京労働局の解説は、グループで事業場外労働に従事する場合でメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合、事業場において訪問先や帰社時刻等の当日の業務の具体的指示を受けた後に事業場外で指示どおりに業務に従事してその後事業場に戻る場合を、適用できない例として挙げています。
在宅勤務で適用するには何が必要ですか。
3つの要件をすべて満たす必要があります。業務が起居寝食等私生活を営む自宅で行われること、情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないことです。テレワークガイドラインは、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって制度が適用されないことはないとし、応答を行うか否かや折り返しのタイミングについて労働者が判断できる場合は要件を満たすと認められるとしています。
内勤と外勤が混ざる日はどう数えるのですか。
労働時間の一部を事業場内で労働した場合、その時間については別途把握しなければならず、みなすことはできません。その日の労働時間は、別途把握した事業場内における時間と、みなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間を合計した時間になります。外勤の通常必要時間と内勤の時間の合計が所定労働時間以内であれば所定労働時間労働したとみなし、超える場合は通常必要時間と内勤の時間を合計した時間がその日の労働時間になります。
みなし労働時間制なら残業代は発生しないのですか。
発生します。この制度は労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定に適用されるもので、労働時間に関する規定ではない休憩、深夜業、休日等に関する規定は適用されます。みなし労働時間と別途把握した事業場内の時間の合計が1日8時間を超えるなど法定労働時間を超える場合は2割5分増以上、法定休日に労働させた場合は3割5分増以上、午後10時から午前5時までの間に実際に労働した時間には2割5分増以上の割増賃金が必要です。
出典
- *1 参考:東京労働局・労働基準監督署「事業場外労働のみなし労働時間制」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf)。労働基準法第38条の2による制度の定義と算定義務の免除、対象となる業務の範囲、適用できない3つのケース(労働時間の管理をする者がいるグループ/随時指示を受けながらの事業場外労働/当日の具体的指示を受けた後に指示どおり従事して戻る場合)、在宅勤務に適用するための3要件と適用されない例(勤務時間帯と日常生活時間帯が混在しない措置の下で随時具体的な指示に基づく場合)、算定方法3つ(所定労働時間/通常必要時間/労使協定)、労働時間の一部を事業場内で労働した場合は別途把握して合計する旨と具体的な算定例、常態として行われている場合は労使協定を結ぶことが望まれる旨、時間外労働2割5分増以上・法定休日3割5分増以上・深夜労働2割5分増以上の割増賃金、年少者および妊産婦等に関する規定では実際の労働時間で判断する旨の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf)。事業場外みなし労働時間制の位置づけ(使用者の具体的な指揮監督が及ばない事業場外で業務に従事することとなる場合に活用できる制度)、テレワークに適用するための①②の要件、①の解釈として情報通信機器の所持のみで適用されないことはない旨と3つの例(自分の意思で通信回線を切断できる/情報通信機器から自分の意思で離れられ応答のタイミングを判断できる/会社支給の携帯電話等の応答や折り返しのタイミングを判断できる)、②の解釈として使用者の指示が業務の目的・目標・期限等の基本的事項にとどまる場合、事業場外みなしが適用される場合に実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し業務量等を見直すこととされている旨の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト「自宅でテレワークを行う場合、「事業場外労働のみなし労働時間制」を利用できますか。」(https://telework.mhlw.go.jp/info/qa/021/)。自宅でのテレワークでも一定の要件を満たせばみなし労働時間制の対象となる旨(労働基準法第38条の2)、所定労働時間労働したものとみなすのが原則であり所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合は通常必要となる時間がみなし時間となる旨、自宅でのテレワークに適用するための①②の要件とその解釈例の確認先として(2026年8月確認)