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2026.09.10 採用支援コラム

プロジェクト管理の体制、増員の前に決めておく4つのこと

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

橋げたを支える円柱の橋脚が並んでいるところ

この記事の結論

  • IPAの調査の回答データから計算すると、プロジェクト管理の体制でいちばん多い取り組みは、知識や経験のある人を割り当てることで、34.9%でした。
  • 7つの取り組みのどれも選ばなかった企業は48.9%で、プロジェクト憲章を挙げた企業は14.1%にとどまります。
  • 増員の前に、作業の追加や中止を決める人とその権限、任せる作業と期間を文書にし、社員と外部の人材の分担を決めておくと進めやすくなります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

人を増やすと決めたのに、加わった人に誰が作業を割り振るのかが決まっていない。質問が既存の担当者に集まり、その人が自分の作業を進められなくなる——。開発の現場では、こうした事態が起こりがちです。プロジェクト管理の体制とは、プロジェクトの進め方を誰が決め、誰が責任を持ち、何を文書に残すのかを定めた仕組みを指します。

体制が決まっていれば、人を追加するときに、任せる作業と期間をすぐに示せます。ただし万能ではなく、体制を整えただけで開発が速くなるわけではありません。本記事では、エンジニアの採用や増員を担う実務担当者に向けて、企業がどんな体制に取り組んでいるか、いくつ取り組んでいるか、増員の前に決めておきたいこと、そして外部の人材に加わってもらうときに確認したい点を整理します。

プロジェクト管理の体制とは

IPA(情報処理推進機構)の「2024年度ソフトウェア動向調査」は、ソフトウェアやシステムの開発を実施する際のプロジェクトマネジメント体制について、7つの取り組みを選択肢に挙げています。*3 7つとは、相応の知識、スキル、経験を有した人の割り当て、プロジェクトマネジャー(プロジェクトの責任者)等の実施責任体制の明確化(責任者を決めること)、プロジェクトマネジャーの権限と責任の明確化、プロジェクトガバナンス体制の確立、プロジェクトマネジメントに関する教育の推進、組織としての標準、そしてプロジェクト憲章です。

7つは、人に関するものと仕組みに関するものに分けると整理しやすくなります。本記事では、人の割り当て、実施責任体制、権限と責任の3項目を人に関するもの、ガバナンス体制、標準、教育、憲章の4項目を仕組みに関するものとして見ていきます。前者は誰に何を任せるかを決める取り組み、後者は人が入れ替わっても同じやり方で進められるようにする取り組みです。

聞き慣れない語が2つあります。資料では、プロジェクトガバナンス体制を「開始・中止・完了、PM任命解任、予算承認等を決定する責任者または委員会」と説明しています。プロジェクト憲章は「プロジェクトの目的・目標、制約等明記した文書」です。*3 PMはプロジェクトマネジャーの略です。

企業はどこまで取り組んでいるのか

この調査は2024年12月から2025年2月にかけて行われ、企業799件の回答データが公開されています。*1 設問は当てはまるものを全て選ぶ形式です。回答データから計算すると、いちばん多いのは人の割り当てで279件、34.9%でした。実施責任体制の明確化が242件で30.3%、権限と責任の明確化が194件で24.3%、ガバナンス体制の確立が182件で22.8%と続きます。*2

IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」企業向けQ2-10の企業799件の回答データから計算した、プロジェクトマネジメント体制の取り組みの図。人の割り当て279件34.9%、実施責任体制の明確化242件30.3%、権限と責任の明確化194件24.3%、ガバナンス体制の確立182件22.8%、教育の推進149件18.6%、組織としての標準141件17.6%、プロジェクト憲章113件14.1%で、上端と下端の差は20.8ポイント・約2.47倍。特に取り組みを行っていない245件30.7%、わからない115件14.4%、その他32件4.0%。7つのうち選んだ個数は0個391件48.9%、1個137件17.1%、2個68件8.5%、3個47件5.9%、4個34件4.3%、5個32件4.0%、6個40件5.0%、7個50件6.3%で、中央値1個・平均1.63個。1個だけ選んだ137件では人の割り当てが64件46.7%、憲章は1件。人に関する3項目を1つ以上357件44.7%、仕組みに関する4項目を1つ以上269件33.7%、人だけ139件17.4%、仕組みだけ51件6.4%、両方218件27.3%、どちらもなし391件48.9%。人の割り当て279件のうち権限も選んだのは149件53.4%、仕組み4項目をどれも選んでいないのは104件37.3%。あわせて、作業の追加や中止を決める人と会議を決める、その人の権限と責任を書き出す、任せる作業と期間を文書にする、社員と外部の人材で受け持つ作業を分ける、の4つを示す。

残りの3つは2割を切ります。教育の推進が149件で18.6%、組織としての標準が141件で17.6%、プロジェクト憲章が113件で14.1%です。いちばん多い人の割り当てと、いちばん少ないプロジェクト憲章の差は20.8ポイントで、件数では約2.47倍になります。人に関する取り組みほど割合が高く、仕組みに関する取り組みほど低い結果です。

プロジェクトマネジメント体制の取り組み(企業799件、公開されている回答データから計算。複数選択のため合計は100%を超える)
選択肢 件数 割合
相応の知識、スキル、経験を有した人の割り当て 279件 34.9%
プロジェクトマネジャー等の実施責任体制の明確化 242件 30.3%
プロジェクトマネジャーの権限と責任の明確化 194件 24.3%
プロジェクトガバナンス体制の確立 182件 22.8%
プロジェクトマネジメントに関する教育の推進 149件 18.6%
プロジェクトマネジメントに関する組織としての標準 141件 17.6%
プロジェクト憲章 113件 14.1%
特に取り組みを行っていない 245件 30.7%
わからない 115件 14.4%
その他 32件 4.0%

見落とせないのは、「特に取り組みを行っていない」が245件、30.7%で2番目に多いことです。*2 7つの取り組みのうち、人の割り当てを除くすべてより多くなっています。「わからない」も115件で14.4%ありました。プロジェクト管理の体制に何も取り組んでいない企業は、決して少なくありません。

いくつ取り組んでいるのか

項目ごとの割合だけでは、1社がどれだけ取り組んでいるかは見えません。そこで、7つのうち何個を選んだかで企業を分けました。いちばん多いのは0個の391件、48.9%で、半分近くの企業が7つのどれも選んでいません。次が1個の137件で17.1%です。2個から6個はどれも68件以下で、7つすべてを選んだ企業は50件、6.3%でした。*2

選んだ個数を少ない順に並べると、真ん中の企業は1個です。0個の391件の内訳は、「特に取り組みを行っていない」が245件、「わからない」が115件、「その他」だけを選んだ企業が31件です。1個以上を選んだ企業は408件で51.1%になり、そのうち7つすべてを選んだ50件は12.3%にあたります。

1個だけを選んだ137件の中身を見ると、いちばん多いのは人の割り当ての64件で、46.7%を占めます。ガバナンス体制の確立が24件、権限と責任の明確化が16件と続き、プロジェクト憲章だけを選んだ企業は1件でした。*2

人の割り当てだけで足りるのか

人に関する3項目を1つ以上選んだ企業は357件で44.7%、仕組みに関する4項目を1つ以上選んだ企業は269件で33.7%でした。両方を選んだのが218件で27.3%、人に関するものだけが139件で17.4%、仕組みに関するものだけが51件で6.4%です。*2

人の割り当てを選んだ279件に絞ると、権限と責任の明確化も選んだのは149件で53.4%でした。同じ279件のうち、仕組みに関する4項目をどれも選んでいない企業が104件、37.3%あります。*2 人を割り当てた企業の3分の1強は、仕組みに関する取り組みを1つも挙げていないことになります。

こうした体制では、任せる作業や、どこまで自分で決めてよいかを示す文書がないまま人が加わります。判断はそのたびに既存の担当者に戻りがちです。増員を決める前に、人に関する取り組みと仕組みに関する取り組みの両方を、少なくとも1つずつ決めておくことをおすすめします。

増員の前に決めておくこと

調査の結果をもとに、人を追加する前に決めることを順に並べると、次の4つです。

  • 作業の追加や中止を決める人と会議を決める
  • その人の権限と責任を書き出す
  • 加わった人に任せる作業と期間を文書にする
  • 社員と外部の人材で受け持つ作業を分ける

作業の追加や中止を決める人と会議を最初に決めるのは、その場で決められる人がいなければ、加わった人は指示を待つしかないためです。ガバナンス体制の確立を挙げた企業は182件、22.8%で、4社に1社を下回ります。次にその人の権限と責任を書き出すのは、人の割り当てを選んだ企業でも、権限と責任の明確化まで選んだのは半分強にとどまるためです。どこまで1人で決めてよいかを1行で書いておくだけでも、判断が既存の担当者に戻る回数は減らせます。

3つ目に文書を作るのは、プロジェクト憲章が113件、14.1%と7つの中でいちばん少なく、後回しになりやすいためです。憲章というと大がかりに聞こえますが、増員の前に要るのは、加わった人に任せる作業、その作業の期間、終わったと判断する条件の3つです。最後に、社員が受け持つ作業と外部の人材に任せる作業を分けます。先に文書にした作業のうち、判断が絡まないものが外部の人材に任せやすい作業になります。

外部の人材に加わってもらうときに確認しておきたい点

フリーランスを含む業務委託の人材は、作業と期間を区切って依頼できるため、文書にした作業をそのまま任せやすい働き方です。依頼する前に、任せる作業の中身、期間、終わったと判断する条件が文書になっているかを確かめます。この3つが書けていれば、候補者を選ぶときにも、その作業の経験があるかどうかで比べられます。

一方で、作業の追加や中止を決める役割とその権限は、社内の担当者が受け持ちます。外部の人材には、決められた作業を進めるうえで判断に迷ったとき、誰に相談すればよいかを最初に伝えておきます。

同じ調査の別の設問も、体制を決めるときの参考になります。人材の不足にどう対応しているかは「IT人材不足への対応」、人の稼働や契約期間をどう管理しているかは「人的リソースの管理」、リリース前に何を確認しているかは「リリース前の確認事項」、IT人材を増やすか減らすかの方針は「IT人材の増減」で扱っています。

まとめ:増員の前に確かめておきたい3つの点

人を追加する前にプロジェクト管理の体制を整えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、作業の追加や中止を決める人と会議を決め、その人の権限と責任を書き出しておくこと。第二に、加わった人に任せる作業、期間、終わったと判断する条件を文書にすること。第三に、社員が受け持つ作業と外部の人材に任せる作業を分け、決める役割は社内に置くことです。この3点を踏まえておけば、「人を増やしたのに、質問が既存の担当者に集まって開発が速くならない」という事態を避けやすくなります。体制の決め方や任せる作業の切り分けに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

任せる作業を文書にして、社員と外部の人材が受け持つ作業を分けたあとは、その作業を誰に任せるかが残ります。体制を整えながら人を増やす段階では、常に置く人員を先に増やすより、作業と期間を区切って任せるほうが後戻りが少なくなります。

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よくある質問

この調査は、いつ、どんな企業を対象にしたものですか

IPAの「2024年度ソフトウェア動向調査」は、2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われました。2025年4月7日時点で企業799件と個人74件の計873件の回答があり、本記事では企業向けの799件を集計しています。*1 回答は匿名化され、オープンデータとして公開されています。

割合を足すと100%を超えるのはなぜですか

設問が、当てはまるものを全て選ぶ複数選択の形式だからです。*3 1社が複数の取り組みを選べるため、延べの選択数は1692件になり、799件で割ると211.8%になります。

プロジェクト憲章には何を書けばよいですか

資料では「プロジェクトの目的・目標、制約等明記した文書」と説明されています。*3 増員の前であれば、これに加えて、加わった人に任せる作業、その期間、終わったと判断する条件を書き添えておくと、依頼の内容がそのまま伝わります。

体制を整えると、開発は速くなりますか

この調査は取り組みの有無を尋ねたもので、体制と開発の成果との関係は公表されていません。ただ、決める人と権限、任せる作業が文書になっていれば、加わった人が指示を待つ時間は減らしやすくなります。

プロジェクト管理の体制を相談したいとき

加わった人に任せる作業と期間の切り分けから、一緒に検討します。

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出典

  1. *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」の公開ページ。公開日2025年2月27日・最終更新日2025年4月25日、調査期間、2025年4月7日時点の回答件数(企業799件・個人74件)、回答を匿名化してオープンデータとして公開していることを参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。出典:企業向けの回答データ(CSV)。Q2-10の件数と割合、差と倍率、選んだ個数の分布、中央値と平均、人と仕組みに分けた件数は、このデータから計算した値(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。出典:企業向けの設問一覧。Q2-10の設問文と選択肢、プロジェクトガバナンス体制とプロジェクト憲章の説明、回答の種別(必須の複数選択)、すべての企業種別が回答対象であることを参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:IPA「ソフトウェア開発関連調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/index.html)。出典:IPAのソフトウェア開発関連調査の一覧ページ。調査群の構成を参照(2026年9月確認)




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