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要求仕様があいまいな案件は27.1%、引き取る前に確かめる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- あいまい側は27.1%:回答した877件のうちの割合です*2。
- 6項目でここだけ2割超:他の5項目は15%未満でした*2。
- 未回答が602件ある:水準は断定せず順序で読みます*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、引き取る人は要求仕様を読みます。
そこがあいまいだと、読んでも引き取り範囲が決まりません。
手がかりは、要求仕様の明確さを4段階で聞いた分布です。
IPAの資料では、ややあいまいが24.5%、非常にあいまいが2.6%でした*1*2。合わせて27.1%です*2。
ただし未回答が602件あります*2。水準は断定せず、項目どうしの順序として読みます*2。
目次
引き取る人が最初に読むのは要求仕様
引き取りの重さは、コードの量では決まりません。何を作るはずだったかが書き残されているかで決まります。
その状態を業界の分布として測れる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
業種編の対象も示されています*1。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています*1。
該当する表はA3-2-7です*2。発注側の要求と関与について、6つの項目が4段階の選択肢で集計されています*2。
表記について1つ書いておきます*2。この節の項目名には短縮した表記が使われているため、この記事では言い換えて記載しています*2。
選択肢の並びも示されています*2。aが良い側、dが悪い側で、表には矢印つきでその向きが書かれています*2。
要求仕様の選択肢はこうです*2。aが非常に明確、bがかなり明確、cがややあいまい、dが非常にあいまいです*2。
数値の扱いを書きます*2*3。件数と比率は本編の表に示された値をそのまま引き、合計と差と回答率は表の値から筆者が算出しました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
まず要求仕様の値を見ます*2。
ややあいまいが24.5%、非常にあいまいが2.6%
表A3-2-7の1行目が要求仕様の明確さです*2。Nは877です*2。
非常に明確は220件で25.1%でした*2。4件に1件です*2。
かなり明確は419件で47.8%でした*2。ここが最も多い区分です*2。
ややあいまいは215件で24.5%です*2。非常にあいまいは23件で2.6%でした*2。
あいまい側を合わせると27.1%です*2。238件にあたります*2。
本編は明確な側で記述しています*2。非常に明確とかなり明確を合わせると7割強であるとされています*2。
筆者が算出すると72.9%になります*2。裏返した27.1%が、この記事で見たい側の数字です*2。
つまり4件に1件を超える割合で、引き取る人は「はっきりしない仕様」を読むことになります*2。
過去との比較も添えられています*2。本編はこれらについて、2014年度から2019年度と比較してほぼ同様であると記しています*2。
図表の対応も記されています*2。この表は過去のデータ白書2018の図表4-6-2に対応するとされています*2。
ここで注意が1つあります*2。これは受託した側が自己評価した値で、基準は示されていません*2。
要求と要件の区別そのものは別に整理されています。要件定義と要求定義の違いが参考になります。
次に、ほかの5項目と並べます*2。
6項目のうち2割を超えるのはここだけ
表A3-2-7には6つの項目があります*2。要求仕様の明確さのほか、5つは発注側の担当者に関する項目です*2。
それぞれの悪い側を筆者が算出しました*2。cとdを合わせた割合です*2。
担当者のシステム経験は14.5%でした*2。107件で、Nは739です*2。
担当者の設計内容の理解度は11.7%です*2。86件で、Nは737です*2。
担当者の要求仕様への関与は10.2%でした*2。83件で、Nは814です*2。
担当者の受け入れ試験への関与は9.6%です*2。68件で、Nは706です*2。
役割分担と責任所在の明確さは8.3%でした*2。64件で、Nは773です*2。
並べると位置が見えます*2。6項目のうち2割を超えるのは要求仕様の明確さだけで、ほかの5項目はいずれも15%未満です*2。
ただしNは項目ごとに違います*2。706から877まで幅があるので、差の大きさを細かく論じることはしません*2。
それでも読める点があります*2。人の関与や理解度は9割前後が良い側なのに、書き残された仕様の明確さだけが下に落ちる形です*2。
本編もこの2つを分けて記述しています*2。関与や経験や理解度は8割から9割を超えると書かれ、要求仕様の明確さは7割強と書かれています*2。
良い側も筆者が算出しました*2。役割分担と責任所在の明確さが91.7%、受け入れ試験への関与が90.4%、要求仕様への関与が89.8%、設計内容の理解度が88.3%、システム経験が85.5%です*2。
資料は理由を説明していません*2。なぜ仕様の明確さだけ低いのかは書かれていません*2。
次に、未回答の大きさを押さえます*2。
未回答が602件ある
この節の表には未回答の列があります*2。要求仕様の明確さは602件です*2。
Nと足すと1,479になります*2。回答した877件と、答えていない602件の合計です*2。
この1,479は6項目すべてで一致します*2。どの項目もNと未回答を足すと1,479になります*2。
つまり同じ母集団に対して、項目ごとに答えた数が違う形です*2。回答した割合は要求仕様の明確さで59.3%でした*2。
ほかの項目はもっと低いです*2。担当者の受け入れ試験への関与はNが706、未回答が773で、未回答のほうが多くなります*2。
システム経験も同じ形です*2。Nが739、未回答が740です*2。
設計内容の理解度も未回答が上です*2。Nが737、未回答が742です*2。
だから水準は断定できません*2。答えなかった案件がどうだったかは、この表からは読めません*2。
読み方を限定します*2。この記事では項目どうしの順序と、回答した案件の中での割合までにとどめます*2。
逆に言えば、順序は比較の材料になります*2。どの項目も同じ母集団から抜き出されているため、悪い側の並び順は見る意味があります*2。
回答した割合の低さも情報です*2。仕様の明確さは6項目の中で回答した割合が高い項目にあたります*2。
ドキュメントを整える作業を外に出す進め方は別に整理されています。技術ドキュメント整備を外注する進め方をご覧ください。
次に、別の表で要求の水準を見ます*2。
要求レベルは保守性の6割が中位か低い
本編の表A3-2-8は、要求レベルを7つの項目で示しています*2。選択肢はaが極めて高い、bが高い、cが中位、dが低いです*2。
信頼性は高い側が多いです*2。aが16.1%、bが42.8%で、Nは795です*2。
セキュリティも同じ方向です*2。aが15.6%、bが36.1%で、Nは735です*2。
保守性は形が違います*2。aが8.8%、bが31.2%で、cが55.1%、dが5.0%です*2。Nは683です*2。
cとdを合わせると6割です*2。筆者が算出すると60.0%になります*2。
つまり保守性の要求レベルは、中位か低いに置かれている案件が多い形です*2。
ここで因果は書きません*2。要求レベルと引き取りやすさの関係を示すクロス集計は、今回参照した資料に記載はありません*2。
読めるのは水準の分布だけです*2。作るときにどれだけ求められていたか、という記録にあたります*2。
ランニングコスト要求も中位が多いです*2。cが61.8%で、7項目の中で高い値です*2。Nは617です*2。
使用性と性能・効率性も中位が半分を超えます*2。使用性のcが51.7%、性能・効率性のcが49.8%です*2。
この表も未回答が大きいです*2。保守性はNが683、未回答が796で、未回答のほうが多くなります*2。
信頼性は高い側が6割近くです*2。筆者が算出すると58.9%で、7項目の中では高い位置にあります*2。
要員が足りない状態で刷新に踏み込んだ場合の集計は別にあります。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
次に、移植性と選択肢の扱いを押さえます*2。
移植性は「低い」が22.1%/「不明」はNに入らない
表A3-2-8で形が際立つのは移植性です*2。aが2.4%、bが15.1%、cが60.4%、dが22.1%でした*2。
dの22.1%は7項目の中で高い値です*2。ほかの6項目はいずれも1桁の%です*2。
Nは624です*2。未回答は855で、7項目の中では回答した割合が低い項目にあたります*2。
回答した割合を筆者が算出すると42.2%です*2。要求レベルの7項目はいずれも6割に届きません*2。
選択肢についても書いておきます*2*3。要求レベルの項目には「不明」という選択肢があり、この選択はNに含まれていません*2*3。
確かめ方も書きます*2*3。表のaからdを足すとNに一致するため、それ以外の選択はNの外に置かれている形です*2*3。
だから未回答の中身も一様ではありません*2。答えなかった案件と、不明を選んだ案件が同じ列に入っています*2。
この点は割合の読み方に関わります*2。分母は「4段階のどれかを選んだ案件」だけです*2。
図表の対応も記されています*2。この表は過去のデータ白書2018の図表4-6-4に対応するとされています*2。
読めないことも押さえます*2。あいまいさの中身や箇所、評価の基準、明確さと引き取りやすさの関係は含まれていません*2。
自己評価であることも忘れないようにします*2。何をもって明確とするかの基準は示されていません*2。
だから使い方は1つです*2。自社の案件を同じ4段階で置いてみて、業界の分布と並べる形です*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の別の指標を扱っています。
引き取る前に確かめる順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 項目(言い換え) | a | b | c | d | c+d | N |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 要求仕様の明確さ | 25.1 | 47.8 | 24.5 | 2.6 | 27.1 | 877 |
| 担当者のシステム経験 | 33.7 | 51.8 | 12.3 | 2.2 | 14.5 | 739 |
| 担当者の設計内容の理解度 | 30.7 | 57.7 | 11.3 | 0.4 | 11.7 | 737 |
| 担当者の要求仕様への関与 | 39.1 | 50.7 | 8.2 | 2.0 | 10.2 | 814 |
| 担当者の受け入れ試験への関与 | 39.4 | 51.0 | 7.8 | 1.8 | 9.6 | 706 |
| 役割分担・責任所在の明確さ | 33.2 | 58.5 | 7.6 | 0.6 | 8.3 | 773 |
1段目は自己評価です。自社の案件の要求仕様を、同じ4段階のどれに当たるか置きます。
2段目は書き出しです。cかdに当たると判断した箇所を、一覧にして残します。
3段目は順番付けです。発注元に確認する順番を、後の工程に響く順に決めます。
4段目は範囲の確定です。確定した分だけを引き取り範囲に入れ、残りは保留のまま扱います。
この順番が成り立つのは担当者がいるうちだけです。あいまいな箇所を聞き出せる相手が社内にいる期間に、2段目まで終えておく必要があります。
逆にすると止まります。範囲を先に決めてしまうと、あとから出てくるあいまいさが全部追加の作業になります。
4段階で置く作業そのものは重くありません。仕様書を章ごとに見て、どちらに寄っているかを書くだけで一覧になります。
ただし読む量は残ります。引き取る対象の仕様書が数百ページある場合、1人で読み切るのは現実的ではありません。
実務では、判断と読み込みを分けることになります。あいまいかどうかの判定は社員が持ち、章ごとの読み込みと一覧化は外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。引き取りの数か月だけ読む人を足し、範囲が確定したら戻す形にします。
並べる相手も忘れないようにします*2。業界の分布では4件に1件を超える案件があいまい側にあるので、自社が同じ側だったとしても例外ではありません*2。
最後に時点を添えておきます*1。2022年公開の資料なので、直近の相場ではなく比較の基準として使う形になります*1。
まとめ:順序で読む
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。件数と比率は本編の表に示された値で、合計と差と回答率は表の値から筆者が算出しました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、項目名です。この節の項目名には短縮した表記が使われているため、この記事では言い換えて記載しています。第三に、要求仕様の明確さです。非常に明確が25.1%、かなり明確が47.8%、ややあいまいが24.5%、非常にあいまいが2.6%で、Nは877でした。あいまい側を合わせると27.1%、238件です。本編は明確な側を合わせると7割強であると記しています。第四に、6項目の並びです。悪い側の割合はシステム経験が14.5%、設計内容の理解度が11.7%、要求仕様への関与が10.2%、受け入れ試験への関与が9.6%、役割分担と責任所在の明確さが8.3%でした。2割を超えるのは要求仕様の明確さだけで、ほかの5項目はいずれも15%未満です。ただしNが706から877まで違うため、差の大きさは細かく論じていません。第五に、未回答です。要求仕様の明確さは未回答が602件で、Nと足すと1,479になります。この1,479は6項目すべてで一致します。受け入れ試験への関与やシステム経験や設計内容の理解度では未回答のほうが多いため、水準は断定せず順序として読みます。第六に、要求レベルです。保守性はaが8.8%、bが31.2%、cが55.1%、dが5.0%で、cとdを合わせると6割です。移植性はdが22.1%で7項目の中で高い値でした。要求レベルには不明という選択肢があり、この選択はNに含まれていません。第七に、限界です。あいまいさの中身や箇所、評価の基準、明確さと引き取りやすさの関係、未回答の案件がどうだったかも今回の内容には含まれていません。
よくある質問
要求仕様があいまいな案件はどれくらいありますか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の表A3-2-7では、ややあいまいが24.5%、非常にあいまいが2.6%で、合わせて27.1%でした。Nは877で238件にあたります。本編は明確な側を合わせると7割強であると記しています(確認日2026年9月4日)。
ほかの項目と比べて悪いのですか。
6項目のうち2割を超えるのは要求仕様の明確さだけです。悪い側の割合はシステム経験が14.5%、設計内容の理解度が11.7%、要求仕様への関与が10.2%、受け入れ試験への関与が9.6%、役割分担と責任所在の明確さが8.3%でした。ただしNが706から877まで違うため、差の大きさは論じていません。
未回答はどれくらいありますか。
要求仕様の明確さでは602件です。Nの877と足すと1,479になり、この1,479は6項目すべてで一致します。受け入れ試験への関与はNが706で未回答が773、システム経験はNが739で未回答が740と、未回答のほうが多い項目もあります。
保守性の要求レベルはどうなっていますか。
表A3-2-8では極めて高いが8.8%、高いが31.2%、中位が55.1%、低いが5.0%でした。Nは683です。中位と低いを合わせると6割になります。ただし要求レベルと引き取りやすさの関係を示すクロス集計は、今回参照した資料に記載はありません。
この数字から仕様の質は判断できますか。
判断できません。これは受託した側の自己評価で、何をもって明確とするかの基準は示されていません。あいまいさの中身や箇所も集計に含まれていないため、読めるのは4段階のどこに置かれたかの分布だけです。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表A3-2-7・表A3-2-8の件数・比率・N・未回答・選択肢の区分・IPAの記述として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。件数の確認と、要求レベルに不明の選択肢が別にあることの確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成と、2005年からのデータ収集の沿革の記述として(2026年9月確認)