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2026.08.24 採用支援コラム

AI人材を採っても仕事が進まない|採用基準は業務から書く

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

オフィスの机に並んで座り、コードが表示されたノートパソコンとモニターに向かって作業する2人のエンジニア

この記事の結論

  • AI導入・運用上の課題では「専門人材が不足している」が50.1%で、最も多く挙がっています。
  • 不足が高いまま残るのは、現場の業務とAIの基礎を併せ持つ人と、データマネジメントの人材です。
  • 採用基準は、AIで変える業務を1つ決め、必要な役割と業務の知識の補い方を決めてから書きます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

「AI人材」の募集を出したのに、応募者の経歴を見ても任せられる人かどうか決められない。採用してみたら、社内のデータが整っておらず、期待していた仕事に取りかかれない——。AIを業務に取り入れようとする会社の採用では、こうした食い違いが起こりがちです。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」でも、AI導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」が50.1%と最も多く挙がっています。*1 ただ、同じ調査を人材の種別ごとに見ると、不足が続いているのはAIの専門家というより、自社の業務やデータを理解したうえでAIを取り入れられる人です。

採用で解決できる不足を見分けるには、この種別ごとの違いが手がかりになります。ただし採用は万能ではなく、AIの効果やリスクへの理解を社内に広げることや、利用のルールを決めることは、人を採用しても片づきません。本記事では、AI人材の採用を担当する人事や事業部門の方に向けて、AI導入の課題の分け方、不足が続いている人材の種別、採用基準の組み方、そして募集の段階で決めておきたい点を整理します。なお、ここでは社員として雇用する採用を前提にしています。

AI導入の課題とは

IPAの調査で、AI導入・運用上の課題としていちばん多く挙がったのは「専門人材が不足している」の50.1%でした。次いで「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」が45.8%、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%です。報告書はこれを、人材不足・リテラシー不足(AIへの理解の不足)・ガバナンス整備の遅れ(ルールづくりの遅れ)の三大課題と整理しています。*1

AI導入・運用上の課題の上位3項目が「専門人材が不足している」50.1パーセント、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」45.8パーセント、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」39.7パーセントであること、AI関連人材のうち「AIに理解がある経営・マネジメント層」と「AIツールを活用して自社の事業に活かせる従業員」は不足の回答率が他と比べて減少した一方、「現場の知見と基礎的AI知識を持ち自社へのAI導入を推進できる従業員」と「データマネジメントの知見があり社内で企画・推進できる人材」は高いままであること、およびAI導入効果を実感している企業ほど業務とスキルの把握に着手していることを整理した図

3つは並んで見えますが、採用で解決できるのは1番目の人材不足だけです。生成AIの効果やリスクへの理解は社内の教育で広げるものであり、利用のルールや基準は、決める権限を持つ社内の人が作るものです。採用を考える前に、自社の課題がこの3つのどれに当たるのかを分けておくと、採用に期待しすぎずに済みます。

データの側にも同じ傾向があります。データの整備・管理・流通(受け渡し)の課題では「人材の確保が難しい」が51.2%と最も高く、「データの標準化が難しい」36.8%、「管理システムが整備されていない」32.6%が続きます。システムや組織の間でデータをやり取りする「データ連携」の課題でも、「社内にデータ連携を企画・推進・実装できる人材が不足している」が45.7%で最も多く挙がりました。*1 AIの課題として語られる人材不足は、データを扱う人材の不足と重なっています。

どの人材が不足しているのか

IPAはAI関連人材の充足状況を人材の種別ごとに集計しており、多くの種別で「不足している」が過半数を占めています。ただし、種別によって動きが違います。「AIに理解がある経営・マネジメント層」と「AIツールを活用して、自社の事業に活かせる従業員」は、「不足している」の回答率の減り方が、他の種別より大きくなっています。ただし、この2つも、「現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」「データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材」の2つと同じく、不足しているとの回答率は高いままです。*1

表1:AI関連人材の種別ごとの不足の動きと、採用要件への意味
人材の種別 不足の動き 採用要件への意味
AIに理解がある経営・マネジメント層 不足の回答率が他と比べて減少 社内の理解が進んできた層。中途採用で社外から探す対象としては優先度が下がる
AIツールを活用して、自社の事業に活かせる従業員 不足の回答率が他と比べて減少 社内の教育で広げる領域。中途採用での優先度は下がる
現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員 高いまま 業務の理解とAIの基礎を併せ持つ人。要件の中心に置く候補
データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材 高いまま データの整備・管理を設計できる人。AIに使わせるデータを整える役割

表1の下の2つの種別に共通しているのは、AIの技術そのものではなく、自社の業務やデータを理解したうえでAIを取り入れる役割だという点です。「現場の知見と基礎的AI知識を持ち」とあるように、求められているのは高度なAI研究の能力ではありません。現場の業務を知っていて、そのうえでAIの基礎が分かるという組み合わせです。業務に詳しい人とAIに詳しい人はそれぞれいても、両方を持つ人は少ないのでしょう。

データマネジメントの人材も、業務とAIの間に立つ役割です。AIに学習させたり参照させたりするデータが整っていなければ、AIを導入しても思うようには動きません。

データマネジメントとは

IPAの「デジタルスキル標準」は、DX(デジタル技術による業務や事業の変革)を進める人材の役割と、身につけたいスキルをまとめたものです。2026年4月16日にver2.0が公開されました。*2 改訂履歴によると、生成AIの活用が進む中で、AIに学習させるデータの収集・整備・管理の重要性が高まっていることを背景に、人材の類型の一つとして「データマネジメント」が追加されています。*3

これにより、DXを進める人材の類型は、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティと合わせて6つになりました。データマネジメントは、データの安全性と信頼性を保ち、データを継続して受け渡せる仕組みを設計・構築・運用して、組織全体でデータを活用し、価値を生み出すことを進める役割と定義されています。*3

類型の下には、より細かい役割(ロール)が置かれています。その一つのデータアーキテクトは、組織や事業全体のデータの構造や流れ、利活用のあり方を見渡し、事業戦略に沿ってデータアーキテクチャ(データの持ち方と流れの設計)を作り、見直し続ける役割とされています。*3

調査で不足が高いまま残る種別と、標準に新しく加わった類型は、どちらもデータマネジメントです。採用要件を組むときは、「AI人材」とひとまとめにして募集するより、データマネジメントの役割として募集するほうが、候補者に意図が伝わります。どのくらいの深さのスキルを求めるかは、エンジニア求人票の書き方と必須14項目で扱ったように、重要度を段階に分けて示せます。

効果を実感している企業との違い

AIの効果を感じている企業とそうでない企業では、AIの影響を踏まえた人材育成・確保への取りかかり方に差があります。まず全体では着手が進んでおらず、ほとんどの項目で「検討の予定はない」と答えた企業が3割以上を占めます。項目別では「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」に「着手している」が19.0%と相対的に高いものの、他の項目は1割に満たない状態です。*1

これを、AI導入の効果が高かった企業と低かった企業に分けると、はっきりした差が出ます。「AI導入効果:高」は「期待以上の効果があった」「期待どおりの効果であった」と答えた企業、「AI導入効果:低」は「一定の効果はあった」「期待した効果はまだ得られていない」と答えた企業です。

表2:AIの影響を踏まえた人材育成・確保に「着手している」割合(AI導入効果別)
項目 AI導入効果:高 AI導入効果:低
効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握 37.6% 23.8%
内容が変わる業務の把握 22.4% 10.6%
人材に必要なスキルの把握 21.5% 12.0%

報告書は、AIによる効果が高いと実感している企業ほど、業務の変化や必要なスキルの把握といった先を見据えた人材育成・確保に取り組んでいると整理しています。*1 これは相関を示す結果で、把握すれば効果が出るという因果までは言えません。ただ、採用要件を書くために必要な材料は、まさに「業務の把握」と「必要なスキルの把握」です。どの業務がAIで変わるのかが分かっていなければ、必要なスキルも書けません。

採用基準をどう組むのか

ここまでの結果を、採用基準を組む手順にまとめます。手順は次の3つです。DX人材の採用でつまずきやすい点は、DX人材の採用、募集の前に決めておくことで扱っています。

  • 対象の業務を1つ決める。AIで効率化したい業務を具体的に1つ挙げます。効果を実感している企業が先に着手していた「業務の把握」と同じ作業です。
  • その業務に必要な類型を決める。データが散らばっていて整っていないなら、必要なのはデータマネジメントの役割です。データは整っていて、使い方の設計が課題なら、データサイエンティスト(データを分析して使い方を設計する役割)の類型に近くなります。
  • 業務の知識をどこで補うかを決める。採用する人に業務の理解まで求めるのか、社内の業務担当者と組んでもらうのかを決めます。ここがあいまいなままだと、入社後に期待と実際の仕事が食い違います。

3つ目で、採用要件がいちばん大きく変わります。不足が高いままの種別は、「現場の知見と基礎的AI知識」の両方を持つ人でした。この両方を1人に求めると、候補者は大きく絞られます。業務の知識をどこで補うかによって、採用要件は次のように変わります。

表3:業務の知識をどこで補うかによる採用要件の違い
進め方 採用要件 前提として必要なこと
1人に両方を求める 同じ業種の業務経験と、AI・データの実務経験 候補者が少なく、提示する給与も上がる。時間がかかる前提で計画する
社内の業務担当者と組んでもらう AI・データの実務経験を主軸に置く。業務の理解は入社後に身につけてもらう 組む相手を先に決めておく。業務側の担当者の時間を確保する
社内の業務担当者を育てる 採用ではなく育成の計画になる 目指す水準を言葉にする。研修の計画と期間を確保する

手順の2つ目で必要な類型に迷ったときは、データの現状を1つ確かめると見分けがつきます。「AIに読ませたい情報が、どのシステムのどのテーブル(データを保存している表)にあるか」を、業務側の担当者がすぐに答えられるかどうかです。答えられないなら、先に必要なのはデータの整備を設計できる人で、AIの仕組みそのものを扱える人ではありません。情報のありかがはっきりしていて品質も分かっているなら、使い方の設計に進める段階です。

表の2行目を選ぶ場合は、組む相手を先に決めておくことが条件になります。「入社後に現場と話しながら覚えてもらう」という説明だけで進めると、現場の担当者に時間が確保されておらず、入社した人が仕事を始められません。受け入れの準備は、なぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで整理した点と重なります。3行目の育成には、公的な助成の制度が使える場合があります。DX人材は採用か育成か、助成金を含めて比較するで扱いましたが、手続きに期限があるため、急ぎの採用には向きません。

つまずきやすい点

一つ目は、「AI人材募集」「生成AIに詳しい方」のような書き方で募集することです。対象が広すぎて、候補者は自分が当てはまるのかを決められません。前の節で決めた業務と類型を使い、「どの業務をどう変えるために、どの役割を担ってほしいのか」を書きます。

二つ目は、社内で使う言葉をそのまま求人票に載せることです。デジタルスキル標準の類型名は社内で認識を合わせるための区分で、そのまま職種名として社外に通じるとは限りません。*3 「データマネジメント担当を募集します」とだけ書くのではなく、担ってもらう責任と主な業務を具体的に書きます。

三つ目は、AIの利用ルールづくりを採用した人に任せきりにすることです。「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」は39.7%の企業が挙げた課題ですが、ルールを決める権限は社内にあります。採用した人にルールづくりを主導してもらうなら、どこまでの権限を渡すのかを募集の段階で決めておきます。

四つ目は、要件より先に委託を決めてしまうことです。採用が決まるまでの期間を業務委託の専門人材で補う方法もありますが、要件が固まっていない段階で社外に委託すると、何を基準に判断したのかが社内に残りません。対象の業務と類型、業務の知識の補い方を先に決めてから、募集や委託に進むのが無理のない順序です。

まとめ:AI人材の採用で確かめておきたい3つの点

AI人材の採用基準を組むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、AI導入の課題のうち採用で解決できるのは人材不足で、生成AIへの理解やルールづくりは社内で取り組むこと。第二に、不足が高いまま残っているのは、現場の業務とAIの基礎を併せ持つ人と、データマネジメントの人材だと押さえること。第三に、AIで変える業務を1つ決め、必要な類型と業務の知識の補い方を決めてから募集に入ることです。この3点を踏まえておけば、「AI人材を採用したのに、任せる仕事が決まっていなかった」という事態を避けやすくなります。採用基準の組み方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

採用する役割が決まっても、採用が決まるまでの間、AIやデータの作業を誰に任せるかという問題が残ります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

データマネジメントの人材は、どんな職種名で募集すればよいですか

職種名は目安にとどめ、担当する業務を具体的に書くのがおすすめです。デジタルスキル標準のロールにはデータエンジニアやデータアーキテクトがあり、*3 候補者が自分の経験と比べる手がかりになります。そのうえで「AIに使う社内データを集めて整える」のように、任せる作業を添えます。

経営層や従業員のAIへの理解も、採用で補うべきですか

採用よりも、社内の教育で広げるほうが向いています。この2つの種別は、不足の回答率が他の種別と比べて減っています。採用では、業務とAIの基礎を併せ持つ人やデータマネジメントの人材を優先するとよいでしょう。

採用が決まるまで、AIやデータの作業はどう進めればよいですか

業務委託の専門人材に一部の作業を任せる方法があります。その場合も、対象の業務と判断の基準は社内で決め、任せる作業と期間を書き出してから依頼します。判断の根拠が社内に残り、採用した人に引き継ぎやすくなります。

AI・データ領域の人材像の整理からご相談ください

どの業務を変えたいのか、どの役割が必要なのか。決まっていない段階から、担当者が一緒に言葉にします。

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出典

  1. *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2025年度調査。調査期間 2026年4月中旬〜6月中旬)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。AI導入・運用上の課題、データ整備・管理・流通およびデータ連携推進の課題、AI関連人材の充足状況の種別ごとの動き、AIの影響を踏まえた人材育成・確保への着手状況とAI導入効果別の差の一次情報として(2026年9月確認)
  2. *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」(更新履歴:2026年4月16日 デジタルスキル標準ver2.0の公開に伴う更新)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about_dss-p.html)。6つの人材類型の名称と役割の定義、およびデータマネジメントの位置づけの確認として(2026年9月確認)
  3. *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構「デジタルスキル標準 ver.2.0」(2026年4月16日公開)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/rcu1hd000000j76k-att/dss_ver2.0.pdf)。ver2.0の改訂履歴(データマネジメント類型の追加とその背景)、類型・ロール・共通スキルリストの構成、データアーキテクト等のロール定義の確認として(2026年9月確認)




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