LASSIC Media らしくメディア
担当者の離脱に備える3つの確認、技術情報は41.2%が個人依存
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 技術情報の個人依存が41.2%:362社のうち149社です*2。
- 個人か特定担当で76.8%:専任組織は10.2%です*2。
- 資産の一覧は簡易的が34.8%:紙台帳や表計算が残ります*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
システムを触れる担当者が抜けたとき、その日から何が止まるかを言えるでしょうか。
引き取れるかどうかは、渡せるものが残っているかで決まります。対象の一覧、手順の文書、そして知識です。
IPAのオープンデータを集計すると、この3つはどれも整備が半分前後でした*1*2。
技術情報の収集を社員個人に依存している企業は149社で41.2%、特定の担当者が中心という回答を加えると278社76.8%です*2。
IT資産の一覧も、表計算ソフトや紙台帳という簡易的な方法が126社34.8%を占めます*2。
目次
引き取れるかを決める3つの材料
担当者が抜けた直後に必要になるのは、対象の一覧と手順の文書と知識の3つです。
この3つは業界の分布として測れます*1。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」で、公開は2025年11月25日、最終更新は2026年5月13日と記されています*1。
回答数も示されています*1。2026年2月9日時点で362件の回答を得たとされています*1。
実施しているのはIPAのデジタル基盤センターです*1。ソフトウェアを取り巻く国内の動向を調査することを目的に、前年度から引き続き実施したと書かれています*1。
調査群の中の位置づけも確かめられます*4。IPAはソフトウェア開発に関する国際動向やアンケート調査のほか、組込みとIoT産業の動向調査、定量データの収集と分析結果を公開していると記しています*4。
案内ページは3つの区分を並べています*4。組込みとIoT産業の動向把握等に関する調査、ソフトウェア開発に関する調査、ソフトウェア開発分析データ集です*4。今回の調査は2番目に含まれます*4。
先に設問の条件を確かめます*3。今回使うQ10-1、Q11-2、Q14-1には、いずれも回答条件が付いていません*3。
つまり母数は共通です*3。3つとも全回答者が対象で、分母は362社です*3。
同じ調査でも条件付きの設問があります*3。回答企業の種別で絞られる設問は母数が247社になるため、そちらの割合とは並べていません*2*3。
数値の作り方も先に書きます*2*3。設問一覧で列の意味と選択肢を確かめ、調査結果CSVの該当列を数えて件数と割合を出しました*2*3。
IPAが公表した集計値の引用ではありません*2。公開データから筆者が集計した値です*2。
単位も押さえます*2。数えているのは回答した企業の件数と割合で、人数でも工数でもありません*2。
3つの設問の役割を分けておきます*3。Q14-1が知識、Q10-1が対象の一覧、Q11-2が手順の文書です*3。
まず知識から見ます*2。
技術情報は41.2%が個人依存
Q14-1は、国内外の最新技術情報を会社としてどのように収集しているかを1つ選ぶ設問です*3。
選択肢は6つです*3。専任の組織、特定の担当者やプロジェクト、社員個人への依存、収集していない、わからない、その他です*3。
回答は必須でした*3。設問一覧では必須の単一選択と指定されているため、362社すべてがいずれか1つを選んでいます*3。
いちばん多いのは個人への依存でした*2。149件で41.2%です*2。
選択肢の文言も押さえます*3。「社員個人の自主的な情報収集に依存している(会社として体系的な取組はない)」と書かれています*3。
対象の範囲も設問文にあります*3。国内外の最新技術情報と書かれているため、海外の情報も含む前提の設問です*3。
次が特定の担当者です*2。「特定の担当者やプロジェクトが中心となって情報を収集している」が129件、35.6%でした*2。
専任の組織は少数です*2。「最新技術情報を収集・分析する専任の組織(部署・チーム)がある」は37件、10.2%にとどまります*2。
収集していない企業もあります*2。「技術情報の収集は特に行っていない」が29件、8.0%です*2。
「わからない」は14件3.9%、「その他」は4件1.1%でした*2。自由記述の中身はこの集計には含めていません*2。
6つを足すと母数に戻ります*2。合計は362社です*2。
情報収集の仕組みを道具から作る話は別に整理されています。FreshRSSで情報収集をセルフホスト構築・外注が参考になります。
次に、この41.2%の読み方を整理します*2。
個人か特定担当に寄っているのが76.8%
上の2つは、寄り方の程度が違うだけで同じ形です*3。
どちらも会社の仕組みではなく、人に紐づいて情報が入ってきます*3。設問文はその区別を、体系的な取組があるかどうかで置いています*3。
2つを合わせると278件になります*2。母数362社に対して76.8%です*2。
この76.8%は実数から出しています*2。41.2%と35.6%という丸めた割合を足したものではありません*2。
裏返すと、会社として体系的に集めているのは10.2%です*2。専任の組織を置いている企業は37社にとどまります*2。
ここが引き取りの難所になります。仕様の背景や採用理由が文書ではなく人の頭にある場合、その人が抜けると参照先が消えます。
ただし、この調査は退職や離脱を聞いていません*3。設問は収集の形だけを尋ねており、離脱時に何が起きたかとの対応は取れません*3。
資料は理由も説明していません*3。なぜ個人依存が多数派なのか、規模や業種で違うのかは、この設問からは読めません*3。
それでも使い道はあります*2。自社が278社の側にいるかどうかは、その場で答えられる問いです*2。
判断のしかたも決めておきます。技術の選定理由を聞かれたときに、文書を指せるなら仕組みの側、人を指すなら個人依存の側です。
要員が足りない状態で刷新に踏み込んだ場合の集計は別にあります。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
次に、渡す対象の一覧を見ます*2。
IT資産の一覧は簡易的な管理が34.8%
Q10-1は、IT資産の可視化と管理の状況を1つ選ぶ設問です*3。
対象の範囲も設問文に書かれています*3。ハードウェア、ソフトウェア、クラウド利用契約などが挙げられています*3。
選択肢は7つです*3。管理ツール、自社開発のシステム、簡易的な方法、外部委託、管理していない、わからない、その他です*3。
この設問も必須でした*3。設問一覧では必須の単一選択と指定されているため、362社すべてがいずれか1つを選んでいます*3。
いちばん多いのは管理ツールでした*2。「IT資産管理ツールを導入・運用している」が151件、41.7%です*2。
次が簡易的な方法です*2。「表計算ソフトや紙台帳など、簡易的な方法で管理している」が126件、34.8%でした*2。
自社開発のシステムは35件9.7%です*2。管理ツールと合わせると186件51.4%になります*2。
把握できていない企業もあります*2。「管理は行っていない(IT資産の全体状況を把握できていない)」が26件、7.2%です*2。
「わからない」は15件4.1%でした*2。回答者の位置から見えていない場合が想定されますが、資料に理由の記載はありません*2*3。
外部に任せている企業は少数です*2。「外部委託により管理している」は7件、1.9%にとどまります*2。
「その他」は2件0.6%です*2。7つを足すと母数の362社に戻ります*2。
簡易的な方法と未管理とわからないを合わせると167件です*2。46.1%で、半分近くになります*2。
逆側も数えておきます*2。管理ツールと自社開発のシステムと外部委託を合わせると193件53.3%で、何らかの仕組みに載っている企業がわずかに多数派です*2。
棚卸しの進め方そのものは別に整理されています。IT資産の棚卸しを外注する進め方をご覧ください。
手順の文書は整備済みが49.7%
Q11-2は、社内の指針やガイドラインの整備状況を対象ごとに1つ選ぶ設問です*3。
対象は2つです*3。ソフトウェア開発(設計・実装・テスト等)と、セキュア開発(脆弱性対策、セキュリティ要件の実装等)です*3。
選択肢は6つあります*3。全社統一、部署単位、今後整備する予定、整備していない・未検討、開発を実施する必要がない、わからないです*3。
この設問も必須でした*3。必須のマトリクス選択と指定されており、2つの対象それぞれについて362社が1つを選んでいます*3。
まずソフトウェア開発です*2。「全社統一でガイドライン等を整備している」が111件、30.7%でした*2。
部署単位も一定あります*2。「部署単位でガイドライン等を整備している」が69件、19.1%です*2。
2つを合わせると180件になります*2。整備済みの計は49.7%で、半分を下回ります*2。
整備していない側も見ます*2。「整備していない/未検討」が54件14.9%、「今後整備する予定」が37件10.2%です*2。
答えられない層も含まれます*2。「開発を実施する必要がない」が58件16.0%、「わからない」が33件9.1%でした*2。
部署単位という回答は、引き取りの観点では注意が要ります。部署をまたいで引き取る場合、渡される手順が同じ形とは限りません。
資料はその中身を聞いていません*3。ガイドラインの分量や更新頻度、実際に守られているかは、この設問からは読めません*3。
工程ごとにどこを自社に残しているかの分布は別に集計しました。工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
次に、もう1つの対象を見ます*2。
セキュア開発は「今後整備する予定」が18.5%
同じ設問のもう1つの対象が、セキュア開発です*3。
整備済みの割合はほぼ同じでした*2。全社統一が109件30.1%、部署単位が66件18.2%です*2。
合計すると175件、48.3%です*2。ソフトウェア開発の49.7%と1.4ポイントの差にとどまります*2。
違いは別の選択肢に出ます*2。「今後整備する予定」がセキュア開発では67件18.5%で、2番目に多い回答でした*2。
ソフトウェア開発では同じ選択肢が37件10.2%です*2。差は8.3ポイントで、セキュア開発のほうが予定の段階に寄っています*2。
「整備していない/未検討」は逆の向きです*2。セキュア開発が42件11.6%で、ソフトウェア開発の54件14.9%より少なくなります*2。
並べると読み方が決まります*2。セキュア開発は、未着手のまま置かれるより予定として立っている企業が多い分布です*2。
ただし資料は時期を聞いていません*3。「今後」がいつまでを指すのかは設問に含まれていないため、進み方は読めません*3。
「開発を実施する必要がない」は48件13.3%、「わからない」は30件8.3%でした*2。6つを足すと各列が362社に戻ります*2。
2つの対象で差が小さい選択肢もあります*2。全社統一は111件と109件、部署単位は69件と66件で、いずれも3件以内の違いです*2。
引き取りの場面では、この差が実務に出ます。予定の段階であれば、引き取る側に渡せる文書はまだありません。
3つの材料を並べると、いずれも整備は半分前後という並びになります*2。技術情報の仕組みが10.2%、資産の一覧が51.4%、手順の文書が49.7%です*2。
離脱に備える順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 整備状況 | ソフトウェア開発 | セキュア開発 |
|---|---|---|
| 全社統一で整備している | 111件 30.7% | 109件 30.1% |
| 部署単位で整備している | 69件 19.1% | 66件 18.2% |
| 今後整備する予定 | 37件 10.2% | 67件 18.5% |
| 整備していない・未検討 | 54件 14.9% | 42件 11.6% |
| 開発を実施する必要がない | 58件 16.0% | 48件 13.3% |
| わからない | 33件 9.1% | 30件 8.3% |
1段目は一覧です。その担当者が持っている対象を、システム名と契約とアカウントの単位で書き出します。
ここで手が止まるなら、自社は167社の側です*2。まず一覧を作る作業が、引き取りより前に来ます*2。
2段目は範囲を絞ることです。一覧のうち、止まると業務が止まるものだけを残します。
全部を引き取る前提にすると人手が合いません。優先順位は、業務が止まるかどうかで決めます。
3段目は文書の確認です。残した範囲について、手順が文書にあるか、人の頭にあるかを1つずつ判定します。
分布と比べる材料があります*2。ガイドラインの整備済みが49.7%、技術情報の専任組織が10.2%という並びです*2。
4段目は人を当てることです。文書が無い範囲だけを対象に、書き出しと運用を同時に進める人を置きます。
順番を逆にすると進みません。一覧が無いまま人を足しても、何を渡すかが決まらないので手が空きます。
3段目で判定が割れた場合は、文書が無い側に寄せて数えます。あると思っていた手順が古い版だったという事故を避けるためです。
実務では、抜けた担当者が戻らない前提で組むことになります。社員だけで埋めると、別の担当者が同じ状態になります。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。一覧と文書が整うまでの数か月だけ人を足し、整ったら戻す形が取れます。
この集計から読めないことも押さえます*2。退職や離脱の発生率、引き取りにかかった期間、ガイドラインの中身や分量、設問をまたいだかけ合わせは含まれていません*2。
それでも使い道はあります*2。渡せる材料がどこまで整っているかを、362社の分布という形で社内に示せます*1*2。
まとめ:渡せるものを先に数える
第一に、母数です。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」は2026年2月9日時点で362件の回答を得ています。今回使ったQ10-1、Q11-2、Q14-1はいずれも回答条件が付いておらず、母数は362社で共通です。件数と割合は公開されている調査結果CSVから筆者が集計した値です。第二に、知識です。技術情報の収集を「社員個人の自主的な情報収集に依存している」が149件41.2%で最も多く、「特定の担当者やプロジェクトが中心」が129件35.6%でした。合わせて278件76.8%で、この割合は丸めた足し算ではなく実数から算出しています。専任の組織があるのは37件10.2%にとどまります。第三に、対象の一覧です。IT資産管理ツールが151件41.7%、表計算ソフトや紙台帳などの簡易的な方法が126件34.8%、自社開発のシステムが35件9.7%でした。管理していないが26件7.2%、わからないが15件4.1%で、簡易的な方法と合わせると167件46.1%です。第四に、手順の文書です。ソフトウェア開発のガイドラインは全社統一が111件30.7%、部署単位が69件19.1%で、整備済みの計は180件49.7%でした。第五に、セキュア開発です。整備済みの計は175件48.3%でほぼ同じですが、「今後整備する予定」が67件18.5%で、ソフトウェア開発の37件10.2%より8.3ポイント多くなります。第六に、順番です。担当者が持つ対象の一覧を出し、止まると困る範囲に絞り、手順が文書にあるかを確かめ、欠けている範囲に人を当てる順で進めます。第七に、限界です。この調査は退職や離脱を聞いていないため、発生率、引き取りにかかった期間、ガイドラインの中身や分量、設問をまたいだかけ合わせは今回の集計に含まれていません。
よくある質問
技術情報を個人に依存している企業はどれくらいありますか。
IPAの2025年度ソフトウェア動向調査の公開データを集計すると、「社員個人の自主的な情報収集に依存している(会社として体系的な取組はない)」が149件、362社に対して41.2%でした。「特定の担当者やプロジェクトが中心となって情報を収集している」の129件35.6%を加えると278件76.8%です(確認日2026年9月3日)。
会社として体系的に情報を集めている企業はどれくらいですか。
「最新技術情報を収集・分析する専任の組織(部署・チーム)がある」は37件、10.2%です。10社に1社という水準です。なぜこの割合なのかという理由は、今回参照した公開データには書かれていません。
IT資産の一覧はどのように管理されていますか。
IT資産管理ツールが151件41.7%、表計算ソフトや紙台帳などの簡易的な方法が126件34.8%、自社開発のシステムが35件9.7%でした。「管理は行っていない(IT資産の全体状況を把握できていない)」も26件7.2%あり、簡易的な方法とわからないを合わせると167件46.1%になります。
開発のガイドラインはどれくらい整備されていますか。
ソフトウェア開発では全社統一が111件30.7%、部署単位が69件19.1%で、整備済みの計は180件49.7%です。セキュア開発は175件48.3%でほぼ同じですが、「今後整備する予定」がセキュア開発では67件18.5%、ソフトウェア開発では37件10.2%と差があります。
この数字から離脱の影響が分かりますか。
分かりません。この調査は退職や離脱の発生率も、引き取りにかかった期間も聞いていません。分かるのは、担当者が抜けたときに渡せる材料がどれくらいの企業で整っているかという分布だけです。自社の状態を業界の並びと比べる用途に限られます。
出典
- *1 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。公開日・最終更新日・回答362件・オープンデータ公開の方針の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-result-data-str.csv)。Q10-1・Q11-2・Q14-1の回答を集計した元データとして(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-c-questions.xlsx)。各設問の回答条件・選択肢・回答種別の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発関連調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/index.html)。この調査が置かれている調査群の構成と公開範囲の記述として(2026年9月確認)