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2026.09.04 採用支援コラム

担当者の離脱に備えるシステムの個人依存の洗い出し方と手順

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

机越しにノートPCと手順書のファイルを手渡している2人の手元

この記事の結論

  • IPAの調査の公開データを集計すると、最新の技術情報の収集を、社員個人か特定の担当者に任せている企業は76.8%でした。
  • IT資産の一覧も開発のガイドラインも、仕組みとして整っている企業は半分前後にとどまります。
  • 担当者が受け持つシステムを書き出し、使えなくなると業務が止まるものから手順書の有無を確かめます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

システムを任せていた担当者が、来月で辞めることになった。引き継ごうとしたら、どこに何があるのかを知っているのがその人だけだった——。社内のシステムを少人数で運用している会社では、こうした事態が起こりがちです。IPAの2025年度ソフトウェア動向調査の公開データを集計すると、技術情報の収集を社員個人に依存している企業は41.2%でした。*2 個人依存とは、仕事に必要な情報や判断のよりどころが、会社の仕組みではなく特定の人に結びついている状態を指します。

担当者の離脱に備えるには、後任に渡す一覧や手順書が残っているかを、先に確かめておくことが欠かせません。ただし万能ではなく、渡せるものがそろっていても、引き取る人を確保できなければ仕事は止まります。本記事では、社内のシステムを管理する部門の責任者に向けて、離脱のときに必要になる3つのもの、調査で見た整備の状況、備える順番、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

担当者の離脱で困ることとは

担当者が抜けたあと、後任が仕事を引き取れるかどうかは、渡せるものが残っているかで決まります。渡せるものは大きく3つあります。担当者が受け持っているシステムや契約を並べた対象の一覧、作業の進め方を書いた手順の文書、そして担当者が集めてきた技術の情報や仕様の背景といった知識です。どれか1つが欠けても、後任は何から始めればよいのかを決められません。

IPAの2025年度ソフトウェア動向調査のオープンデータを集計した図。公開2025年11月25日・最終更新2026年5月13日、2026年2月9日時点の回答は362件、Q10-1とQ11-2とQ14-1はいずれも回答条件が付いておらず母数は362社で共通であること、この調査は退職や離脱を聞いておらず読めるのは渡せる材料の整備状況だけであること、件数と割合は公開されている調査結果CSVから集計した値であること、Q14-1の最新技術情報の収集状況は社員個人の自主的な情報収集に依存しているが149件41.2パーセント・特定の担当者やプロジェクトが中心となって収集が129件35.6パーセント・収集や分析をする専任の組織があるが37件10.2パーセント・技術情報の収集は特に行っていないが29件8.0パーセント・わからないが14件3.9パーセント・その他が4件1.1パーセントであること、技術情報の収集を個人か特定の担当者に頼っているのは合わせて278件76.8パーセントであること、Q10-1のIT資産の可視化状況はIT資産管理ツールを導入や運用しているが151件41.7パーセント・表計算ソフトや紙台帳など簡易的な方法で管理が126件34.8パーセント・自社開発のシステムで管理が35件9.7パーセント・管理は行っていないが26件7.2パーセント・わからないが15件4.1パーセント・外部委託により管理が7件1.9パーセント・その他が2件0.6パーセントであること、Q11-2の開発ガイドラインの整備状況はソフトウェア開発が全社統一111件30.7パーセント・部署単位69件19.1パーセント・今後整備する予定37件10.2パーセント・整備していない54件14.9パーセントで整備済みの計が180件49.7パーセント、セキュア開発が全社統一109件30.1パーセント・部署単位66件18.2パーセント・今後整備する予定67件18.5パーセント・整備していない42件11.6パーセントで整備済みの計が175件48.3パーセントであること、離脱に備える順番は担当者が持つ対象の一覧を出し・使えなくなると業務が止まるものを選び・手順が文書にあるかを確かめ・文書が無いものの担当者を決める4段であること、この集計から読めないのは退職や離脱の発生率・引き取りにかかった期間・ガイドラインの中身や分量・設問をまたいだかけ合わせであることをまとめた図

この3つが企業でどれくらい整っているかは、IPA(情報処理推進機構)の「2025年度ソフトウェア動向調査」から集計できます。調査のページによると、2026年2月9日時点で362件の回答を得ており、結果は2025年11月25日に公開、2026年5月13日に最終更新されています。*1 本記事では、公開されている設問一覧と調査結果のCSVをもとに、技術情報の収集(Q14-1)、IT資産の管理(Q10-1)、開発ガイドラインの整備(Q11-2)の3つの設問を数えました。

3つの設問は、回答した362社すべてが答える設問です。*3 どれも362社を分母にしているので、割合をそのまま比べられます。数えているのは回答した企業の件数で、人数ではありません。なお、この調査は退職や離脱そのものを尋ねていないため、離脱が起きたときに何が止まったかまでは分かりません。ここで見られるのは、渡せるものがどこまで整っているかの状況です。

技術情報の個人依存とは

Q14-1は、国内外の最新技術情報を会社としてどのように集めているかを1つ選ぶ設問です。いちばん多かったのは「社員個人の自主的な情報収集に依存している(会社として体系的な取組はない)」で、149社、41.2%でした。次いで「特定の担当者やプロジェクトが中心となって情報を収集している」が129社、35.6%です。*2

この2つを合わせると278社、76.8%になります。一方、「最新技術情報を収集・分析する専任の組織(部署・チーム)がある」は37社、10.2%にとどまりました。「技術情報の収集は特に行っていない」は29社、8.0%、「わからない」は14社、3.9%、「その他」は4社、1.1%です。*2

社員個人に依存する場合も、特定の担当者が中心になる場合も、情報を持っているのは会社ではなく特定の人です。その人が抜けると、技術を選んだ理由や仕様の背景を尋ねる相手がいなくなります。自社の情報が文書にあるのか、人の記憶にあるのかは、次の問いで確かめられます。「このシステムでこの技術を選んだ理由は何か」と聞かれたとき、文書を示せるなら会社の仕組みがある側、特定の人の名前が挙がるなら個人依存の側です。

IT資産の一覧はどう管理されているのか

担当者が受け持つものを書き出すとき、土台になるのがIT資産の一覧です。Q10-1は、IT資産の可視化と管理の状況を1つ選ぶ設問で、対象にはハードウェア、ソフトウェア、クラウド利用契約などが挙げられています。*3 いちばん多いのは「IT資産管理ツールを導入・運用している」で151社、41.7%でした。次が「表計算ソフトや紙台帳など、簡易的な方法で管理している」で126社、34.8%です。*2

自社開発のシステムで管理している企業は35社、9.7%で、管理ツールと合わせると186社、51.4%になります。「外部委託により管理している」の7社、1.9%も含めると、何らかの仕組みで一覧を持っている企業は193社、53.3%です。反対に、仕組みで一覧を持っていない企業は、簡易的な方法の126社に、「管理は行っていない(IT資産の全体状況を把握できていない)」の26社、7.2%と「わからない」の15社、4.1%を合わせると167社、46.1%になります。*2

表計算ソフトの一覧でも、きちんと更新されていれば引き継ぎに使えます。困るのは、一覧を更新していたのが抜ける担当者本人だった場合です。いつの時点の一覧なのか、載っていない契約やアカウントが無いかを、後任は確かめられません。一覧を作り直す作業の進め方は「IT資産の棚卸しを外注する進め方」で扱っています。

開発の手順は文書になっているか

Q11-2は、社内の指針やガイドラインの整備状況を、ソフトウェア開発(設計・実装・テスト等)とセキュア開発(脆弱性対策、セキュリティ要件の実装等)のそれぞれについて1つ選ぶ設問です。*3 ソフトウェア開発では「全社統一でガイドライン等を整備している」が111社、30.7%、「部署単位でガイドライン等を整備している」が69社、19.1%でした。整備済みを合わせると180社、49.7%で、半分をわずかに下回ります。*2

Q11-2 開発ガイドラインの整備状況(IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」の調査結果CSVから集計。母数は362社)
整備状況 ソフトウェア開発 セキュア開発
全社統一で整備している 111件 30.7% 109件 30.1%
部署単位で整備している 69件 19.1% 66件 18.2%
今後整備する予定 37件 10.2% 67件 18.5%
整備していない・未検討 54件 14.9% 42件 11.6%
開発を実施する必要がない 58件 16.0% 48件 13.3%
わからない 33件 9.1% 30件 8.3%

セキュア開発の整備済みは175社、48.3%で、ソフトウェア開発との差は1.4ポイントです。違いが出るのは「今後整備する予定」で、セキュア開発では67社、18.5%と、ソフトウェア開発の37社、10.2%より8.3ポイント多くなります。「整備していない/未検討」はセキュア開発が42社、11.6%で、ソフトウェア開発の54社、14.9%より少なくなりました。*2

引き継ぎのときに注意が要るのは、手順書が部署ごとにしか無い場合と、まだ作る予定の段階にある場合です。部署をまたいで仕事を引き取ると、渡される手順の書き方が部署ごとに違うことがあります。予定の段階なら、後任に渡せる文書はまだありません。工程ごとに何を自社に残し、何を委託しているかの分布は「工程別の内製化と委託の分布」で扱っています。

離脱にどう備えるのか

自社で確かめる順番は、次の4つです。1つ目は一覧です。担当者が受け持っているシステム、契約、アカウントを書き出します。ここで書き出せない項目が多いなら、引き継ぎより先に一覧を作る作業が要ります。2つ目は、書き出したもののうち、使えなくなると業務が止まるものを選ぶことです。担当者が受け持つものをすべて同時に引き継ごうとすると、後任の作業が追いつきません。

3つ目は、選んだものについて、手順が文書にあるか、担当者の記憶にしかないかを1つずつ確かめることです。判定に迷ったら、文書は無いものとして数えます。あると思っていた手順書が古い版だった、という事態を避けるためです。4つ目は、文書が無いものだけを対象に、手順を書き出しながら運用も受け持つ担当者を決めることです。

一覧より先に人を追加しても、何を引き継ぐのかが決まっていないため、加わった人に任せる作業がはっきりしません。また、4つ目の担当者を社内の別の仕事から回すと、今度はその人が受け持っていた仕事で同じ状態が生まれがちです。抜けた担当者の仕事を誰が受け持つのかを、一覧の段階で決めておくと進めやすくなります。

外部に委託するときに確認しておきたい点

手順書づくりは、書き終われば終わる、期間の限られた作業です。そのため、期間を決めて、業務委託の専門人材に加わってもらう方法が合います。フリーランスの技術者に依頼する場合も含め、委託する前に次の点を決めておくと進めやすくなります。

  • 委託する作業(どのシステムの、どの手順を文書にするか)
  • 期間と、文書がそろったと判断する条件
  • 書き出した文書を社内で誰が受け取り、更新を続けるか

見落としやすいのは3つ目です。委託先が文書を書き終えても、社内で更新を続ける人がいなければ、次に担当者が抜けたときに同じ状態に戻ります。文書を受け取る人を社員の中から先に決めておけば、委託の期間が終わっても手順は社内に残ります。技術情報の収集についても同じで、委託先が集めた情報を社内のどこに残すかを決めておくと、個人依存の状態に戻りにくくなります。

まとめ:担当者の離脱で確かめておきたい3つの点

担当者の離脱に備えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、担当者が受け持つシステム、契約、アカウントの一覧があり、いまの状態に合っていること。第二に、使えなくなると業務が止まるものについて、手順が文書になっていること。第三に、技術を選んだ理由や仕様の背景を、特定の人ではなく文書で示せることです。IPAの調査の公開データを集計すると、技術情報の収集を個人か特定の担当者に頼っている企業は76.8%でした。*2 この3点を踏まえておけば、「担当者が辞めてから、何を引き継げばよいのか誰も説明できない」という事態を避けやすくなります。引き継ぎの進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

引き継ぐものの一覧ができても、手順の文書が無い作業を任せられる人を社内で確保できないことがあります。一覧と文書がそろうまでの期間だけ、外部の専門人材に加わってもらう方法も選べます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

IT資産の一覧には、何を載せればよいですか

IPAの調査の設問では、IT資産の例としてハードウェア、ソフトウェア、クラウド利用契約などが挙げられています。*3 引き継ぎに使うなら、これに加えて、各システムに入るためのアカウントと、そのアカウントを誰が管理しているかも書いておくと、後任が迷わずに済みます。

開発をしていない会社でも、手順の文書は要りますか

要ります。調査でも、ソフトウェア開発のガイドラインについて「開発を実施する必要がない」と答えた企業が58社、16.0%ありましたが、*2 開発をしていなくても、システムの運用や契約の更新の手順は残るため、その部分を文書にしておくと引き継ぎに使えます。

引き継ぎの準備は、いつ始めればよいですか

退職や異動が決まる前から始めておくのがおすすめです。決まってからでは、残りの期間で一覧と文書の両方をそろえるのが難しくなります。まずは一覧の更新を担当者本人以外も行えるようにしておくと、急な離脱にも対応しやすくなります。

担当者の離脱への備えを相談したいとき

引き継ぐ作業の洗い出しから、その作業を任せる人の探し方までご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。出典:公開日・最終更新日・2026年2月9日時点の回答362件を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-result-data-str.csv)。出典:Q10-1・Q11-2・Q14-1の回答を集計した元データ。件数と割合はこのCSVから集計した値(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-c-questions.xlsx)。出典:各設問の回答条件・選択肢・回答種別を参照(2026年9月確認)




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