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LIMSとは?試験検査データを管理する仕組みと選び方を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- LIMSは試験の依頼・検体・結果・判定・成績書の記録を1つにつなぐ試験検査情報管理システムです。
- QMSは品質の問題への対応、CDSは機器の測定データを扱い、LIMSとは受け持つ範囲が違います。
- 選ぶときは機器との連携、権限と記録、保存とバックアップ、ほかの仕組みとの連携を確かめます。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
試験の結果をExcelに手で書き写していて、転記の誤りが心配だ。成績書を作るたびに、何枚もの記録を突き合わせなければならない——。医薬品や化学品、食品を扱う会社の試験室では、こうした手間と不安が積み重なりがちです。LIMS(ライムス)は、試験の依頼から結果の判定、成績書の発行までの記録をまとめて管理するためのシステムです。
散らばった試験データを1か所に集め、誰が何を記録したかを追えるようにします。ただし万能ではなく、分析機器とのつなぎ方や規制への対応を決めずに入れると、かえって手間が増えることもあります。本記事では、試験室の仕組みづくりを任された担当者に向けて、LIMSでできること、QMSやExcelとの違い、試験データの流れと選び方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
LIMSとは
LIMSは「Laboratory Information Management System」の略で、日本語では試験検査情報管理システムと呼ばれます。医薬品の製造では、GMP省令(製造管理と品質管理の基準を定めた厚生労働省令)が、品質部門に試験検査を計画的に行わせ、その記録を作って保管するよう求めています。*1 省令が求める主な記録は次のとおりで、LIMSはこれらをまとめて扱います。

- 検体の採取と受付を、ロットごとに記録する
- 試験の指示を文書で出し、試験の結果を記録する
- 試験に使う設備・器具の点検と計器の校正を記録する
- 結果を規格と照らして判定し、製造部門へ文書で報告する
- 規格に合わない結果が出たら、原因の究明と是正措置の記録を残す
厚生労働省のガイドラインの質疑応答集は、HPLCやGCといった試験検査設備をまとめて制御・管理するシステムの例としてLIMSを挙げています。*2 規格値との照合や試験成績書の発行を行うシステムも同じ範囲に入ります。LIMSは、試験の依頼から成績書までの記録を1つにつなぐ仕組みです。
QMSやExcelとの違い
LIMSと混同されやすいのが、品質管理システム(QMS)とExcelの台帳です。どれも品質に関わるデータを扱いますが、得意な範囲が違います。分析機器のデータを処理するクロマトグラフィーデータシステム(CDS)も並べて比べます。
| 仕組み | 主に扱うもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Excelの台帳 | 試験結果の一覧や計算 | 試験の種類が少なく、担当者が限られるとき |
| LIMS | 試験の依頼・検体・結果・判定・成績書 | 試験室全体の記録を1か所にまとめたいとき |
| CDS | 分析機器ごとの測定データとその処理 | 機器の生データを正確に残したいとき |
| QMS | 不適合・是正処置・変更・文書の管理 | 品質の問題を再発防止まで追いかけたいとき |
LIMSは試験室の中の記録、QMSは品質の問題が起きたあとの対応、と分けて考えると整理しやすくなります。規格外の結果が出たらQMSで是正処置を始める、というように2つをつなぐ場面もあります。QMSの開発については品質管理システム(QMS)の開発を外注する進め方で扱っています。
試験データの流れ
LIMSの中で試験データは、依頼から報告までの5つの段階を順に流れます。どの段階で誰が入力し承認するかを決めることが、設計の土台です。
- 依頼:製造部門などが、どのロットに何の試験が要るかを登録する
- 受付:採取した検体に番号を付け、保管場所とともに記録する
- 試験:分析機器の結果を取り込み、計算と記録を残す
- 判定:規格と照らし合わせ、品質部門の責任者が承認する
- 報告:試験成績書を作り、出荷の判断に使えるようにする
つまずきやすいのは「試験」の段階です。PMDAの研修資料が紹介するOECDの文書は、CDSや表計算からLIMSへのデータの受け渡しについて、つなぎ目はすべて誤りの元になり、欠落や破損につながりうると注意しています。*3 機器との連携は、手で転記しない仕組みにしたうえで、送った値と届いた値が一致するかを確かめる手順まで含めて設計します。
LIMSの選び方
LIMSを選ぶときは、製品の機能表を比べる前に、自社の試験の流れと規制の要件を整理しておくと迷いません。医薬品の製造に使う場合は、品質試験の結果を管理するシステムとして、厚生労働省のコンピュータ化システム適正管理ガイドラインの対象になります。*2
- 作り方:パッケージをそのまま使うか、業務に合わせて設定するか、一から作るか
- 機器との連携:使っている分析機器やCDSから、結果を自動で取り込めるか
- 権限と記録:入力・修正・削除の権限を人ごとに分け、不正なアクセスを防げるか*2
- 保存とバックアップ:記録を決められた期間残し、障害時に元へ戻せるか*2
- ほかの仕組みとの連携:生産管理や基幹システム、QMSと品目やロットの情報を共有できるか
作り方の選択は、検証の手間にも響きます。岐阜県医薬品等GXP研究会の報告書は、業務に合わせて構成設定したパッケージの例にLIMSを挙げ、一部のソースコードを変更したものはカスタムソフトウェアに分類しています。*2 手を加える範囲が広いほど、作る文書と確かめる項目が増えます。また、GMP省令は記録を原則5年間保管するよう定めているので、*1 その期間を通してデータを読み出せる形で残せるかも確かめておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
ガイドラインの質疑応答集は、開発や運用を外部の供給者に委託する場合も、ガイドラインに基づいて適切に業務を行わせる必要があり、委託契約で取り決めておくのが望ましいとしています。*2 頼む側に責任が残る、という前提で次の点を見積もりの前に確かめます。

- 範囲:要件の整理、パッケージの設定、機器連携の開発、データ移行のどこまでを頼むか
- 文書:要求仕様書や機能仕様書、テストの記録を誰が作り、誰が承認するか
- データ移行:古いデータを移すとき、元のデータと同じであることをどう確かめるか*3
- 変更の管理:運用を始めたあとの設定変更や版の更新を、どの手順で行うか
- 運用後の見直し:システムが検証された状態を保てているかを定期的に見直す場を設けるか*3
見落としやすいのは運用開始後の変更で、判定に関わる設定なら小さな変更でも記録と承認が要ります。医薬品の製造でGMPに対応したシステム全体を見直す場合はGMP対応システムの選び方も参考になります。
まとめ:LIMSで確かめておきたい3つの点
LIMSを選び、自社の試験室に入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、依頼・受付・試験・判定・報告のどの段階で誰が入力し承認するかを、導入の前に決めること。第二に、分析機器やCDSとのつなぎ目で値が変わらないことを、確かめる手順まで含めて設計すること。第三に、運用を始めたあとの変更とデータの保存を、誰がどの手順で受け持つかを契約と文書で決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「システムを入れたのに、結局Excelへの転記が残ってしまった」という事態を避けやすくなります。機器連携や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
GMPの対象ではない試験室でもLIMSは役に立ちますか
役に立ちます。化学品や食品の品質試験でも、検体の受付から成績書までの記録を1か所にまとめる利点は同じです。GMPの対象でなければ、ガイドラインに沿った検証の文書は求められないため、導入の負担は軽くなります。ただし取引先から記録の管理方法を求められる場合もあるので、事前に確かめておきます。
いまのExcelの計算シートは使い続けられますか
使い続けることはできますが、医薬品の製造に使う場合は扱いが変わります。岐阜県医薬品等GXP研究会の報告書は、複雑な関数を使った表計算を構成設定したソフトウェアに、マクロを使ったものをカスタムソフトウェアに分類しています。*2 計算の中身によっては、LIMSと同じように検証の準備をしておきます。
LIMSを入れたら紙の記録はすべてなくせますか
すぐにすべてをなくすのは難しいでしょう。自動で取り込めない機器があれば、紙と並べて運用する期間が生まれます。紙から電子へ切り替える範囲と時期を段階ごとに決め、切り替えた部分から記録の確かめ方を見直していくと進めやすくなります。
LIMSの導入・連携開発のご相談
LIMSの要件整理から分析機器や基幹システムとの連携開発、データ移行と運用保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:厚生労働省「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成十六年厚生労働省令第百七十九号)e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100179)。出典:第11条(品質管理:検体の採取と記録、試験検査の文書による指示、設備・器具の点検整備と計器の校正、結果の判定と文書による報告、規格外結果の原因究明と是正措置・予防措置)、第20条(文書及び記録の管理:原則5年間の保管)を参照(2026年11月確認)
- *2 参考:厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインについて」(平成22年10月21日 薬食監麻発1021第11号)及び同ガイドラインに関する質疑応答集(岐阜県医薬品等GXP研究会「平成23年度 GXP研究会活動報告書」に関係通知として収録)(https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/4863.pdf)。出典:ガイドライン2.(適用の範囲)、6.4(セキュリティ管理)、6.5(バックアップ及びリストア)、質疑応答集の回答5(外部の供給者への委託)・回答11(LIMSの例)、研究会報告書第1章のカテゴリ分類例を参照(2026年11月確認)
- *3 参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)第24回GLP研修会資料(OECDのGLP文書第17号「コンピュータ化システムのGLP原則への適用」の運用について)(https://www.pmda.go.jp/files/000228544.pdf)。出典:資料が引用するOECDのGLP文書(第17号)のうち、システム間のデータ受け渡し(para 70)、データ移行(para 67)、定期的な見直し(para 89)の記述を参照(2026年11月確認)