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中小企業のDXの取組|専任も予算も少ない会社に合う体制
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの調査では、DXに取組んでいる企業は従業員1,001人以上で98.7%、100人以下で41.6%でした。
- 100人以下の企業では、売上に占めるDX投資の割合が「5%以上」の区分が最も多く、負担は軽くありません。
- 投資を増やした企業は51.7%、ほぼ横ばいも38.2%あり、予算が増える前提で体制を組まないのが無難です。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
他社の進め方を参考にDXの体制を考えてみたものの、専任の担当者を置く余裕がない。経営層に予算を相談すると、そこまでは出せないと言われる——。従業員の少ない会社では、こうして話が進まなくなることがよくあります。DXの取組とは、デジタル技術を使って業務や事業の進め方を変える活動に、会社として、あるいは一部の部署で取り組んでいることを指します。
手がかりになるのが、IPA(情報処理推進機構)が従業員規模別に集計した調査です。従業員規模ごとの違いを知っておくと、参考にする他社の話を自社に当てはめてよいかを判断しやすくなります。ただし万能ではなく、調査が示すのは取組の有無と投資の割合までで、取組の中身は扱っていません。本記事では、エンジニアの採用や開発の体制づくりを担う方に向けて、規模による取組の違い、投資の重さと増減、規模に合った体制の組み方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
DXの取組とは
IPAの「DX動向2026」は、2026年7月30日に公開された調査報告です。*1 日本の企業を対象に、2026年4月17日から6月12日にかけて調査が行われ、有効回答数は1,799でした。*3 この調査では、DXへの取り組み方を3つの選択肢に分けて尋ねています。
その選択肢は、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取組んでいる」です。*2 同じ「取組んでいる」でも、会社全体の方針として進めているのか、特定の部門だけが進めているのか、部署がそれぞれの判断で始めているのかで、関わる人の数も予算の出どころも大きく変わります。
体制を考えるときは、この違いを先に確かめておくと、社内での議論が食い違いにくくなります。たとえば、部署ごとに始めようとしている会社が、全社で進めている会社の事例をそのまま参考にしても、同じ体制はまず組めません。DXの取組の形と会社の規模、この2つをそろえてから他社の話を読むのが最初の手順です。
企業規模でどう違うのか
従業員規模別に見ると、DXに取組んでいる企業の回答率は、従業員1,001人以上で98.7%に達しています。*2 報告書はこの結果について、DXは「当たり前に実施する取組となりつつある」と述べています。一方、従業員100人以下の企業では41.6%にとどまり、報告書は「企業規模により二極化している状況が続いている」としています。*2
2つの値から計算すると、差は57.1ポイントで、1,001人以上の回答率は100人以下の約2.37倍です。大きな会社では、取組んでいることがほぼ前提になっており、話題は「どこまで深く進めるか」に移っています。100人以下の会社では、取組んでいない企業が半分を超えており、「そもそも始めるかどうか」がまだ論点になっている段階です。
この差は、他社の事例を読むときに関係してきます。講演や記事で紹介されるDXの体制には、専任の部署を置き、複数の担当者で進める形が多く見られます。そうした事例の多くが大きな会社のものだとすると、100人以下の会社が同じ形を目指しても、置けない役割ばかりが並んでしまいます。
投資の重さはどう違うのか
DXに使うお金についても、報告書は規模別に集計しています。売上に占めるDX投資額・費用の割合を見ると、従業員301人以上1,000人以下の企業では「1%未満」が39.3%と最も多く、報告書は「相対的に投資比率が低い傾向がある」としています。*2
一方、従業員100人以下の企業では「5%以上」が39.0%と最も多くなっています。報告書は、企業規模が小さい分、相対的な投資比率が高くなっていると説明しています。*2
ここから言えるのは、小さい会社ほど、ひとつの投資が売上に対して重くなりやすいということです。売上の5%以上をDXに使っている会社が多い100人以下の層では、いくつもの取組に少しずつ予算を配ると、どれも中途半端に終わるおそれがあります。100人以下の会社では、何に使うかを絞り込んでから投資するほうが、結果を確かめやすくなります。
投資は増えているのか
DX投資額・費用の2024年度から2025年度にかけての増減を見ると、「大幅に増加している」と「やや増加している」を合わせた回答率は51.7%でした。*2 報告書は、半数以上の企業がDX投資額・費用を増加させていると述べています。
その一方で、「ほぼ横ばい」も38.2%あり、報告書は「積極的な投資拡大には至っていない企業も多い」と付け加えています。*2 増やしている会社が半数を超えているとはいえ、4割近くの会社では予算が前の年度とほとんど変わっていないことになります。
体制を考える側から見ると、「来年度は予算が増えるはずだから、そのときに人を増やす」という計画は立てにくい状況です。予算が変わらなくても進められるように、最初は取組をひとつに絞り、必要な作業と期間をはっきりさせておくと、結果を見ながら次の年度の予算を相談できます。
規模に合った体制の組み方
ここまでの結果を踏まえて、規模に合った体制を組む手順を4つの段階に整理します。大きな会社の形をそのまま目指すのではなく、DXの取組も、自社の規模でいま置ける役割から考えるのが基本です。
| 段階 | やること | 担う人 |
|---|---|---|
| 1 | 自社の従業員規模と取組の形(全社か、一部の部門か、部署ごとか)を確かめる | 社内 |
| 2 | いま手が回っていない取組の中から、最初に進めるものを1つ選ぶ | 社内 |
| 3 | その取組を、何をするかを決める作業と、実際に作る作業に分ける | 社内 |
| 4 | 実際に作る作業のうち、作業の中身と期間を決められるものを外部に委託する | 社内と委託先 |
1段目で規模と取組の形を確かめるのは、参考にする事例との前提の違いをはっきりさせるためです。1,001人以上と100人以下では取組んでいる企業の割合が大きく違うので、事例の体制をそのまま持ち込むと、自社では置けない役割が残ります。2段目でひとつに絞るのは、前の節で見たとおり、予算がまとめて増える前提では計画しにくいからです。
3段目の「何をするかを決める作業」とは、どの業務を変えるのか、何をやらないのか、成果をどう確かめるのかを決めることです。これは自社の事業を知っている社内の人が担います。「実際に作る作業」は、システムの設計や開発、データの整理などです。こちらは、作業の中身と期間を決められれば、社外の人に加わってもらうこともできます。
4段目で外部に委託するのは、3段目で分けたうちの実際に作る作業です。たとえば「受注データを集計する仕組みの開発を3か月」のように作業と期間を決めて頼めば、終わった後に社内へ引き継ぐ時期もはっきりします。同じ調査をもとにした記事として、DXの成果指標の設定状況、DXの成果として挙がる内容、部門間連携の進め方もあわせてご覧ください。
つまずきやすい点
一つ目は、規模の違う会社の体制をそのまま持ち込むことです。大きな会社の事例では、専任の部署や複数の担当者がいることが前提になっている場合があります。100人以下の会社が同じ形を目指すと、採用も予算も足りず、計画が実行されないまま終わります。
二つ目は、いくつもの取組を同時に始めてしまうことです。売上に対する投資の割合が高くなりやすい小さな会社では、予算を分けるほど一つひとつが小さくなり、どれも結果が出る前に終わってしまいます。最初の取組で結果を確かめてから次に進むほうが、社内の理解も得やすくなります。全社への広げ方については、DXの全社展開と一部での実施の違いで別の調査をもとに扱っています。
三つ目は、何をするかを決める作業まで委託先に任せてしまうことです。委託先は作る作業には慣れていても、自社の業務のどこを変えるべきかまでは決められません。決める作業を社外に委ねると、作ったものが現場で使われないまま終わることがあります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
実際に作る作業を外部に委託するときは、頼む前に次の4点を書き出しておくと進めやすくなります。書き出したものは、そのまま委託先との打ち合わせの資料にも使えます。
- 頼む作業の名前と、いつまでに終えるか
- 作業が終わったときに受け取るもの(動く仕組み、設計書、操作の手順書など)
- 社内で質問に答え、判断する担当者は誰か
- 作業が終わった後、誰が仕組みを直したり動かしたりするか
とくに見落としやすいのが最後の点です。委託した作業が終わった後に、仕組みを直せる人が社内にいないと、少しの手直しのたびに外部に頼むことになります。委託している期間のうちに、社内の担当者が設計書を読み、手順書どおりに動かせるようにしておくと、次の取組に移るときの負担が減ります。
また、委託先を探す前に、社内の担当者がその取組に使える時間も確かめておきます。社外の人に加わってもらっても、質問への答えや判断が遅れると、作業はそこで止まります。週にどれくらいの時間を打ち合わせと確認に使えるかを先に決めておけば、委託先も作業の予定を立てやすくなります。
まとめ:DXの取組で確かめておきたい3つの点
自社の規模に合ったDXの取組を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、参考にする事例の従業員規模と取組の形を確かめ、自社との前提の違いを知っておくこと。第二に、予算が増える前提を置かず、最初に進める取組をひとつに絞ること。第三に、何をするかを決める作業は社内に残し、実際に作る作業は中身と期間を決めて外部に頼むことです。この3点を踏まえておけば、「他社と同じ体制を目指したのに、人も予算も足りずに止まってしまった」という事態を避けやすくなります。体制の組み方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査は、どのような方法で行われましたか
IPAの「DX動向2026」のデータ集によると、調査対象数は10,000で、企業データベースから業種や従業員規模で割付けてランダムに抽出しています。調査項目は60問(うち回答者属性7問)で、有効回答数は1,799でした。*3
DXに取組んでいる企業の割合は、年々増えていますか
報告書は、何らかの形でDXに取組んでいる企業の回答率について、経年で見ると大きく変わらず横ばいの状態にあるとしています。*2 取組が広がっていくかどうかは、今後の調査で見ていく必要があります。
投資額の割合は、どの企業を集計したものですか
DXへの取組の設問で、全社的に、一部の部門で、部署ごとに個別で取組んでいると答えた企業が対象です。任意回答で、極端に大きい回答(33.0%以上)は集計から除いています。*2 取組んでいない企業は含まれていません。
何をするかを決める作業も、外部に相談してよいですか
助言を受けるのはよいことです。ただし、どの業務を変えるか、何をやらないかを最後に決めるのは、自社の事業を知る社内の担当者にしておくのがおすすめです。委託先には、決めた内容をもとに作る作業を頼むと、役割の分担がはっきりします。
DXを進める体制を相談したいとき
どの作業を社内に残し、どの作業を外部に頼むかの整理からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html)。出典:IPA「DX動向2026」の公開ページ。公開日(2026年7月30日)と収録章の構成を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「DX動向2026」(本文)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。出典:同報告書の本文。図表2-2(DXへの取組状況・従業員規模別)、図表2-18(売上に占めるDX投資額・費用の割合・従業員規模別)、図表2-19(DX投資額・費用の2024年度から2025年度にかけての増減)についての記述を参照。図表2-2には、2022年度・2023年度調査の選択肢「創業よりデジタル事業をメイン事業としている」を2025年度調査と経年比較を行うため図表上は省いているという注記がある(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「DX動向2026」(データ集)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-data-collection-2026.pdf)。出典:同報告書のデータ集(2026年7月30日第1版)。調査対象、調査期間、調査項目数、調査対象数、有効回答数、抽出方法を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ウェブサイトのご利用について」(https://www.ipa.go.jp/siteinfo.html)。出典:IPAのウェブサイトの利用条件。資料の引用・転載の条件を参照(2026年9月確認)