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2026.10.02 採用支援コラム

エンジニア採用の採用失敗、要件設定は人材像の3区分で見直す




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • エンジニア採用の要件設定は、採用の背景から変革人材・中核人材・ポテンシャル人材のどれで採るかを決めてから書きます。
  • 辞めた人と同じ経歴や同業・同職種の経験に絞らず、任せる仕事と本質となる能力から要件を書き直します。
  • 要件を広げるときは入社後の育て方と採用手法を同時に決め、現場と人事で区分の受け止め方をそろえます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

エンジニア採用で、応募は来るのに合う人がいない。採ったものの、期待していた仕事を任せられない——。こうした採用失敗の原因をたどると、募集の前に決めた要件設定に行き着くことがあります。要件設定とは、採用の背景から求める人材像を決め、選考で確かめる経験や能力を言葉にしておく作業のことです。

本記事では、採用を進める人事や開発の責任者に向けて、中途採用で求める人材の3つの区分、要件設定のずれ方、要件の決め直し方を整理します。

積み上げた丸太の切り口を正面から写した写真。太さの違う断面それぞれに年輪が刻まれ、ひびの入ったものもある。人も文字も写っていない

要件設定と採用失敗の関係

本記事で手がかりにするのは、厚生労働省が平成31年度(2019年度)の委託事業として行った「企業等の採用手法に関する調査研究」の報告書です。*2 三菱総合研究所がまとめ、2020年3月に公表されました。中途採用に積極的な企業21社と人材サービス事業者10社へのヒアリング、転職経験者へのインタビューをもとにしています。*1 統計調査ではないので割合の数字はありませんが、企業が求める人材をどう決めているかを具体的に整理しています。

報告書は中途採用の流れを、背景によって求める人材像が決まり、人材像に応じて評価項目が決まり、その人材像と評価項目をもとに募集する、と整理しています。*1 要件設定は、この流れの最初に置かれる作業です。

最初でずれると、その後の工程はずれた要件に沿って進みます。求人票、紹介会社への依頼、面接の評価項目が、どれも同じずれを引き継ぐからです。応募が集まらない、面接で決めきれない、入社後に任せる仕事が合わないといった採用失敗は、別々の問題に見えても、たどると要件設定に行き着くことがあります。採用失敗をどの段階で起きたかに分ける手順はエンジニア採用の採用失敗を3つに分ける原因分析の手順で扱いました。本記事は、そのうち要件の決め方に原因がある場合の見直しに絞ります。

中途採用で求める人材の3区分

報告書は、ヒアリングした企業の中途採用の背景と求める人材像を整理し直し、大きく3つの区分にまとめています。

1つ目は変革人材です。事業環境の変化や新規事業の開発のために、自社にない専門性や他社での新規事業開発の経験を持つ人を求める場合を指します。2つ目は中核人材で、事業拡大や退職による人員の補充のために採る人です。報告書は、そのイメージを「現在社内で同様の職務・職級で活躍している社員」と書いています。*1 3つ目はポテンシャル人材です。中核人材だけでは人材の需要を満たせないときに、社会人経験と基礎的なマナーを前提にし、専門性の水準を下げて採って、入社後に育てる人を指します。

区分によって、要件の起点が変わります。変革人材は自社にいない人物を前提に要件を作り、中核人材は社内にいる中核メンバーを前提に作ります。ポテンシャル人材では、募集する職務の経験はあれば望ましいものの重要ではない、とされています。報告書は、3つの区分を同時に募集することもあり、企業の置かれた環境によって募集する人材が変わる点も重要だとしています。

中途採用で求める人材の3区分を、左から変革人材・中核人材・ポテンシャル人材の3列で示した図。行は採用の背景、人材要件の起点、評価項目、定着支援の4つ。変革人材は新規事業開発や新技術の導入のために社内にいない人材を前提に要件を作り、経験と新しいことを始める力を見て、受け入れる風土と既存事業メンバーとの連携を支える。中核人材は人員構成の是正や退職による補充のために社内の中核メンバーを前提に要件を作り、同業他社の同職種出身者を想定しがちだが職務内容によっては要件の緩和・拡大がしやすい。ポテンシャル人材は人手不足を主な背景に、募集職務の経験は重要ではなく、既に要件の緩和や拡大が行われていることが多く、成長余力と挑戦意欲を見て、職務の育成と現場での育成支援を行う。厚生労働省委託「企業等の採用手法に関する調査研究」報告書の図表3-9〜3-11をもとに作成。

エンジニア採用に当てはめると、新しい技術領域を立ち上げるために社内にいない経験者を探すのが変革人材、辞めた人や今のチームの中堅と同じ仕事を任せる人が中核人材、経験の浅い人を育てる前提で採るのがポテンシャル人材にあたります。どの区分で採るのかを決めないまま要件を書くと、次に挙げるずれが起こりやすくなります。

欠員と同じ要件で募集する

1つ目のずれは、辞めた人の経歴をそのまま要件にすることです。報告書は、求める人材像が細かく分かれるにつれて、中途採用は事前に詳しい検討を要するものになりつつあるとしています。そのうえで、欠員が出たから退職者と同じ水準の要件で募集するのではなく、「期待する役割とそれに伴って設定される人材像、人材要件を詳細に検討した上で」採用手法を選ぶ必要がある、と述べています。*1

欠員の補充は中核人材の典型的な背景です。ただ、辞めた人の経歴には、長く在籍するうちに身に付けた社内の事情や、今のチームでは使っていない技術が含まれることがあります。前任者と同じ経歴の人を探すと条件の数が増え、当てはまる候補者が少なくなります。

見直すときは、辞めた人が何をしていたかではなく、これから採る人に何を任せるかから書き直します。任せる仕事を作業の単位で書き出し、その作業に要る経験だけを要件に残せば、前任者と経歴が違っても任せられる人が候補に入ります。任せる仕事の書き出し方はエンジニア採用のミスマッチを採用要件で防ぐでも扱いました。

同業・同職種の経験に絞る

2つ目は、同じ業界で同じ職種を経験した人に絞ることです。報告書は中核人材について、即戦力の確保に重きを置くと同業他社の同職種経験者を求めて要件設定を行いがちだが、期待する役割と配属予定の職務内容によっては、同業や同職種での経験が必要とは限らないとしています。そのうえで「要件設定の際に本質となる能力と期待する役割を精査することが重要となる」と述べています。*1

エンジニアの採用には、このずれが起こりやすい事情があります。報告書は、技術者を中心に「求める技術や専門性を設定していくと、結果として同業種からの転職でなければそもそも応募が難しい場合も散見される」と書いています。*1 使っている言語やフレームワーク、業務の知識を一つずつ足していくと、同業他社で同じ仕事をしている人しか当てはまらない要件になりかねません。

一方で報告書は、業種を超えて需要があった人材としてIT系の人材を挙げています。情報通信系の企業でなければ社内に専門性を持つ人がいないか、いても少数派で、その結果として業界を超えた転職が起きている、という整理です。中核人材の採用戦略の表でも、求める人材像・人材要件について「職務内容によっては越境や要件緩和・拡大をしやすい」とされています。*1 業界の知識が入社の時点で要るのか、入社後に覚えてもらえば足りるのかを分けて考えると、要件を広げる余地が見えてきます。

細かすぎる要件と曖昧な要件

3つ目と4つ目は、要件の細かさのずれです。報告書に収められた人材サービス事業者へのヒアリングでは、企業からの依頼には人材要件が明確な場合と漠然とした要望だけの場合があるとしたうえで、「あまりに細かく人材要件が定義されていると、その要件にマッチする人材を見出すことが難しくなってしまう」と述べられています。*1 同じ事業者は、求めているポストの業務を切り分ければ、その業務を担える人を探すことはできるとし、新規事業でも0から1の段階と1から10の段階では業務の内容も必要な人材要件も変わる、と例を挙げています。

反対に、言葉が抽象的すぎる要件もずれを生みます。別の事業者へのヒアリングでは、多くの企業で人材要件や採用基準の定義ができていないとし、「明るく元気」という要件があっても社長と採用担当者で考え方が違うため、採用の時点でずれてしまうと指摘しています。そのうえで「抽象的な言葉を定義し、テストで測れる粒度まで落としていく必要がある」としています。*1

エンジニア採用でいえば、「自走できる人」「技術力の高い人」といった言葉がこれにあたります。残すなら、どんな場面でどう動ける人を指すのかを、面接で確かめられる質問の形にしておくとよいでしょう。細かさの目安は、開発のどの段階の仕事を任せるのかが言えて、その仕事ができるかどうかを面接で確かめられる程度です。

現場と人事で区分がずれる

もう一つ見落としやすいのが、採る側の中で区分の受け止め方がそろっていないことです。報告書の人材サービス事業者へのヒアリングでは、採用後のミスマッチは若手未経験者の中途採用の場合に多いとされています。人事部主導で若手を未経験者として採用しても、現場では経験がある中途採用者と認識され、十分なマネジメントがなされない場合もあるという指摘で、そのうえで「現場と人事の温度差が埋まっていない」と述べられています。*1

人事はポテンシャル人材として採ったつもりでも、現場が中核人材を待っていれば、入社した人に育てる機会は用意されません。報告書の整理では、ポテンシャル人材の定着支援は当該職務に関する育成と現場での育成支援、中核人材は配属先への適応が第一とされています。区分が違えば、入社後に要る手当ても違うということです。

報告書は、中途採用が欠員補充のために不定期に行われていた時代には、配属予定の現場部門で人材要件を決め、人事部が全社的な視点で内容を検討しており、実質的な判断を現場が担当することも珍しくなかったと書いています。要件を決める人と選考を進める人が分かれているほど、区分を言葉にしてそろえておく意味は大きくなります。どの区分で採るのか、入社後に誰がどう育てるのかを要件と同じ文書に書いておけば、現場と人事の受け止め方を合わせやすくなります。

要件の決め直し方

決め直すときは、背景から順に置き直します。最初に、なぜ今採るのかを確かめます。新しい領域を始めるのか、欠員を埋めるのか、人手が足りず育てる前提で採るのか。背景が決まれば、変革人材・中核人材・ポテンシャル人材のどれで採るのかが決まります。次に、区分に合わせて要件の起点を置きます。評価項目と定着支援は先の図のとおりです。背景・求める能力・採用手法を報告書の採用戦略案から表にすると、次のようになります。

コア人材の3区分ごとの採用戦略案(厚生労働省委託「企業等の採用手法に関する調査研究」報告書の図表3-12をもとに作成)
区分 中途採用の背景 求める能力 採用手法
変革人材 事業転換、新規事業立ち上げ、構造改革 自社にいない人材(独自の専門性、特定のスキル、新規事業立ち上げ経験)、人脈等の無形資産 人材紹介会社、ダイレクトリクルーティング、イベント等の直接応募
中核人材 欠員補充、将来の幹部候補確保、社内人員構成是正 自社の基幹層と同水準の能力(前職での類似業務経験、専門性)、人脈等の無形資産 人材紹介会社、リファラル、自社サイト経由の応募
ポテンシャル人材 欠員補充、人手不足 職務に関する育成で一人前になる人材(伸びしろ、社会人一般のマナー) 求人広告、リファラル、自社サイト経由の応募、ハローワーク

要件を広げる余地があるかどうかも、区分によって変わります。中核人材は職務内容によって越境や要件の緩和・拡大がしやすいとされ、ポテンシャル人材は「既に人材要件の緩和や拡大が行われていることが多い」とされています。*1 経験年数を下げる、業界の経験を外すといった見直しは、入社後に育てる手を用意できるかどうかと一緒に決めます。育てる人がいないまま要件だけを緩めると、中核人材を待つ現場にポテンシャル人材が入ることになり、前の節のずれがそのまま起こります。

最後に、採用手法を区分に合わせます。報告書は、変革人材は人材像が詳細かつ具体的に定まっているからこそダイレクトリクルーティングにも一定の効果が期待できるとし、ポテンシャル人材ではリファラル採用、求人広告、直接応募に効果が期待できるとしています。*1 要件を決め直したら、求人票の書き方と依頼先もあわせて見直しましょう。必須要件と歓迎要件の分け方はエンジニア採用の求人票、必須要件と歓迎要件の違いと書き分けで、紹介会社から紹介が来ないときの見直しはエンジニア人材紹介で紹介されないときに見直す求人要件の4つの点で扱いました。

まとめ:要件設定を見直す3つの点

エンジニア採用の採用失敗を要件設定から見直すとき、押さえたい点は3つです。第一に、採用の背景から、変革人材・中核人材・ポテンシャル人材のどれで採るのかを先に決めること。第二に、辞めた人の経歴や同業・同職種の経験ではなく、任せる仕事と本質となる能力から要件を書き直し、面接で確かめられる細かさにすること。第三に、要件を広げるときは入社後の育て方と採用手法を同時に決め、現場と人事で区分の受け止め方をそろえることです。決め直す間の開発は、外部の専門人材の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

任せる仕事と採用の区分が決まれば、求める経験がはっきりし、候補者を探しやすくなります。要件を決め直している間や採用が決まるまでの開発を、業務委託で加わる専門人材に任せる方法も、選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

3つの区分のうち、どれで採るかはどう決めればよいですか

報告書の整理では、区分を分けるのは中途採用の背景です。新規事業の立ち上げや新しい技術の導入なら変革人材、欠員の補充や人員構成の是正なら中核人材、人手が足りず中核人材だけでは埋まらないため育てる前提で採るならポテンシャル人材です。報告書は3つの区分を同時に募集することもあるとしているので、1回の採用で1つに絞る必要はありません。ポジションごとに区分を決めておきます。

要件を緩めると、採る人の水準が下がりませんか

緩めるのは入社の時点で求める経験の条件で、選考で見る基準まで外すわけではありません。報告書は、ポテンシャル人材の評価項目として本人の成長余力(伸びしろ)、本人の挑戦意欲、社風や事業内容への理解を挙げています。経験の条件を緩めるなら、代わりに何を見て選ぶのかを先に決め、入社後に育てる担当者も決めておきます。

この報告書はエンジニアの採用だけを調べたものですか

いいえ。ヒアリングした21社には製造業、小売業、情報通信業などが含まれ、職種もエンジニアに限りません。*1 ただ、技術者の要件設定や、業種を超えて需要があったIT系の人材について触れた箇所があり、本記事ではその部分をエンジニア採用に当てはめて読んでいます。

エンジニア採用の要件を相談したいとき

任せる仕事の整理や、どの区分で採るかの検討からご相談いただけます。要件が固まりきっていない段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「企業等の採用手法に関する調査研究」報告書(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001319324.pdf)。出典:厚生労働省 平成31年度委託事業、株式会社三菱総合研究所(2020年3月)。1.4.3(ヒアリング調査。企業21社・人材サービス事業者10社・転職経験者)、図表2-1(中途採用の流れ)、2.2.3(人材サービス事業者調査)、3.1.1(中途採用におけるコア人材の定義)、3.1.2(越境について)、3.2.1(経営戦略と採用戦略の接近)、3.2.2(求める人材と採用戦略。図表3-9〜図表3-12)を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「企業等の採用手法に関する調査研究事業報告書(平成31年度厚生労働省委託事業)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089556_00009.html)。報告書の公表元と委託事業の年度の確認として(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)




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