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2026.10.02 採用支援コラム

リモート採用のオンボーディング、メンターの選び方と任せ方




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • リモートで採用した人には、上司とは別に、同じチームなど日々やり取りする近い立場の先輩をメンターとして付けます。
  • メンターには、日常の声掛け、面談の日時の提案、職場になじむための相談の3つを任せます。
  • 3か月・半年の時点で機能しているかを確かめ、合わなければメンターの追加や交代ができるようにしておきます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

リモートで採用したエンジニアが、入社して数週間たっても、誰に何を聞けばよいのか分からずにいる。上司とは毎日の打ち合わせで顔を合わせているのに、困りごとはそこでは出てこない——。リモート採用のオンボーディングでは、こうした行き違いが起こりがちです。その隙間を埋める手立ての一つが、上司とは別に相談役を付けるメンターです。

本記事では、リモートで採用した人の受け入れを任された開発の現場のマネージャーや人事の担当者に向けて、メンターの役割と選び方、メンターに任せる3つのことと任せないこと、続けるための点検を整理します。下敷きにするのは人事院の「メンター制度実施の手引き」です。国の機関向けに作られたものですが、新しく入った人に早く職場になじんでもらうための考え方は、民間の会社でも参考になります。

翡翠や石の柄をもつ書道の筆が、軒下のフックにずらりと吊るされている

リモート採用のメンターとは

人事院の手引きは、メンター制度を、人事当局の一定の関与のもとで先輩職員が後輩職員の申し出などを受けて助言などの支援を行う仕組みと説明し、いわゆる「斜めの関係」と呼んでいます。直属の上司による業務上の指導とは異なり、後輩の成長を側面から支える役割なので、メンティー(支援を受ける側)が自ら考え、気付き、判断するよう促すことが求められます。手引きは冒頭で、こうした仕組みが要る事情として、業務の忙しさから上司が職場への適応の支援や相談に乗る時間が限られることを挙げています。*1

リモートで働く人を受け入れる職場では、この事情がさらに強まります。隣の席から様子を見て声をかける、という手段がないからです。

リモートで採用した人のメンターを置いてから続けるまでを、左から右へ3つの箱で示した図。1つ目は始める前で、同じチームなど日々やり取りする近い立場の先輩を選び、メンターとメンティーそれぞれの上司に伝え、緊急時の相談先を決める。2つ目は期間中で、日常の声掛け、面談の日時をメンターから提案すること、職場になじむための相談の3つをメンターに任せ、人事上の働きかけはしない。3つ目は点検のときで、3か月・半年の時点でメンターと本人から聞き取って機能しているかを確かめ、初めてのメンターを支え、必要ならメンターの追加や交代をする。下の帯には、仕事の指示と評価は上司、聞きにくいことの相談はメンターが受け持つと書かれている。人事院「メンター制度実施の手引き」と別添をもとに作成。

リモート採用のオンボーディングでいうメンターとは、上司とは別の立場から、新しく入った人が職場になじみ、仕事の進め方をつかむまでの相談に乗る先輩社員のことです。仕事の割り振りと評価は上司が受け持ち、メンターは「聞きにくいことを聞ける相手」を受け持つ、と分けて考えると整理しやすくなります。

リモートで働く人が困ること

厚生労働省の委託で三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「テレワークの労務管理等に関する実態調査」は、2020年8月から9月にかけて従業員に在宅勤務のデメリットを尋ねています(回答1,343人、複数回答)。最も多かったのは「同僚や部下とのコミュニケーションがとりにくい」の56.0%で、「上司とのコミュニケーションがとりにくい」の54.4%が続きました。「孤独感や疎外感を感じる」は16.6%、「スキルアップが難しい」は9.0%です。*2

この調査の対象は、入社したばかりの人に限りません。それでも、社内に知り合いがほとんどいない状態で働き始めるリモート採用の人は、ここに挙がった困りごとに直面しやすい立場にあると考えられます。

会社の側の答えもあります。同じ調査の企業調査では、在宅勤務で感じた課題として48.4%が「従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい」を、23.6%が「育成が難しい」を挙げました(1,256社、複数回答)。ところが、在宅勤務をする人への健康確保の措置として「特別に面接指導や相談の対応等を行っている」と答えた会社は5.3%にとどまり、「特に行っていない」が58.1%でした。*2 相談を受ける仕組みまで用意している会社は少数でした。

中途採用の人に起きやすいこと

人事院の手引きの別添は、メンター制度の対象ごとに留意点をまとめています。中途採用の職員については、社会人経験があるため即戦力として期待される一方で、その組織ならではの仕事のやり方に戸惑うことがあり、同期がいないため職場で疎外感を抱きやすいと書いています。*3

経験を積んだエンジニアをリモートで採用した場合も、似たことが起こりえます。技術の力はあっても、コードレビューで何をどこまで指摘し合うのか、仕様の相談を誰にどの経路で持ち込むのか、といった職場ごとの約束事は、入ってみないと分かりません。即戦力として期待されているぶん、こうした初歩的に見える質問ほど上司にはしにくくなります。

別添はまた、新規採用の職員について、自分の悩みに気付きにくい人もいるため、メンターから積極的に働きかけることが求められるとしています。*3 中途採用の人でも、何に困っているのかを本人がまだ言葉にできていない時期があります。入社直後のメンターには、相談を待つよりも自分から声をかける動き方が合っています。

メンターの選び方

手引きは、メンターの選定にあたって、メンティーの類型や年齢、役職、経歴、人柄などを踏まえ、育成にふさわしい人を慎重に検討するよう求めています。職場への円滑な適応を重視する場合は年齢や役職があまり離れていない方がよく、キャリア形成の支援を重視する場合はある程度離れていた方がよい、という考え方も示されています。必要に応じて1人のメンティーに複数のメンターを選んだり、組み合わせを固定せず相談したい内容に応じてその都度相手を選んだりするやり方も挙げられています。*1

別添は、中途採用の職員のメンターについて、相談のしやすさを重視し、その人の近くにいる人や年齢などが近い人とすることが考えられるとしています。若手のメンターでは中長期のキャリアの相談に応じきれない場合に、中堅の職員を2人目のメンターに選んでいる例も紹介されています。*3

リモートで採用したエンジニアにとっての「近く」は、物理的な席ではありません。同じチームや同じリポジトリで日々やり取りする相手と読み替えると、候補が絞れます。直属の上司と評価でつながっていない、隣のチームの先輩という置き方もあります。日々の進め方と、この先の働き方の相談相手を分けたいなら、2人目を置きます。

メンターに任せる3つのこと

手引きと別添の記述をもとにすると、リモートで採用した人のメンターに任せたいことは3つにまとめられます。

1つ目は、日常的な声掛けです。別添は、日常的な声掛けや定期的な面談などによって、メンターが積極的に「相談できる機会」を作ることが大切だとしています。2つ目は、面談の日時をメンターの側から提案することです。メンティーがメンターの業務の忙しさに引け目を感じて面談を申し出にくいことがあるため、メンターから具体的な日時を提案することも考えられる、と書かれています。*3

リモートの職場に置き換えると、声掛けはチャットで短く様子を聞く、作業の区切りで数分だけ通話する、といった形になります。入ったばかりの人は、先輩の空き時間がカレンダーで見えても会議を入れにくいものです。最初の数回はメンターの側から予定を押さえておくと、面談が途切れにくくなります。

3つ目は、職場になじむための相談に乗ることです。手引きが相談内容の例に挙げているのは、上司や同僚とのコミュニケーションの方法、キャリアアップを図るために必要なこと、仕事に行き詰まったときの対応などです。やり方は面談が基本ですが、勤務する場所が異なるといった職場の事情に応じて、電話や電子メールの利用、複数のメンターとメンティーによる合同での実施も考えられるとしています。*1 ビデオ通話やチャットにもそのまま当てはまる考え方です。

別添には、複数回にわたって行う場合に、期間中の進め方と、期間中の成長の目標を2人で取り決めておくと充実したものになる、という助言もあります。*3 たとえば「最初の1か月で本番環境への反映の手順を一人で回せるようにする」といった目標を置くと、面談で何を話すかが決まりやすくなります。

メンターに任せないこと

手引きは、メンターがメンティーの希望を人事当局に伝えたり、メンティーの上司などに人事上の働きかけをしたりする役割は担っていないと明記しています。*1 異動の希望や評価への不満を聞いても、それを代わりに通す立場ではありません。この線は、始める前に本人へ伝えておきます。

仕事の指示と成果の評価も、メンターではなく上司が受け持ちます。メンターに仕事の進め方の判断まで任せると、上司と本人の間で話すべきことがメンターを経由するようになり、上司が状況をつかみにくくなりかねません。

一方で、相談の中身には原則として周りが立ち入りません。手引きは、人事当局は基本的にメンタリングの内容に関知しないとしたうえで、心身の不調や職場での不正など、メンター以外の者による緊急の対応が必要な状況に備えて、メンターが人事当局や専用の相談窓口に相談できる体制を整えておくとしています。*1 リモートでは本人の様子が見えにくいぶん、こうした兆しにメンターが最初に気付くこともあります。そのときの連絡先は、始める前に決めておきます。

続けるための点検

メンターを決めただけでは続きません。手引きは、3か月、半年など一定期間の後に実施状況を把握してメンタリングが機能しているかを確かめること、特に初めてメンターになる人にはきめ細かなフォローアップを行うことが望まれるとしています。実施期間については、制度の趣旨やメンターの負担を踏まえ、1年間などの一定の期間を設けるとしています。*1

別添には、各府省の工夫として、月に1回程度のメンタリングを人事当局から要請する例や、メンティーからメンターへの不満がある場合にメンターの追加や交代をできるようにしている例が紹介されています。*3 交代できると最初に伝えておけば、本人も言い出しやすくなります。

メンターにとっても、これは業務の一部です。手引きは、メンターなどは業務として依頼するものなので、部下がメンターやメンティーになったことをそれぞれの上司に伝えて理解を得ておくとし、メンターとしての取り組みを人事評価で扱う方法にも触れています。*1 リモートでは声掛けや面談にかけた時間が周りから見えにくいので、メンターの上司がその時間を把握しておきます。

外部に委託するときに確認しておきたい点

リモートで働く人を新しく迎えるときは、採用の段階で、受け入れ側のメンターの候補を決めておくと進めやすくなります。入ってもらうチームが決まれば、相談役の先輩も決めやすくなります。業務委託で開発に加わってもらう人の場合は、相談の窓口を誰にするかを、契約の前に委託先の会社と確かめておきます。

聞ける相手と時間の決め方はリモート採用のオンボーディングの基本で扱っています。

入社初日の準備はリモート採用のオンボーディング、入社初日の作業環境の不備を防ぐにまとめました。

制度として社内に広げるときの手順はメンター制度の導入手順と、上司との役割の線引きを参考にしてください。

まとめ:メンターで確かめておきたい3つの点

リモート採用のオンボーディングでメンターを置くうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、上司とは別に、同じチームなど日々やり取りする近い立場の先輩を選ぶこと。第二に、日常の声掛け、面談の日時の提案、職場になじむための相談の3つを任せ、人事上の働きかけや仕事の評価は任せないこと。第三に、3か月・半年の時点で機能しているかを確かめ、必要ならメンターの追加や交代ができるようにしておくことです。この3点を踏まえておけば、「入社して数か月たっても、誰にも相談できないまま働いていた」という事態を避けやすくなります。受け入れの形に合う人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

メンターの候補と受け入れるチームが決まったら、次はそこに加わる人を探す段階です。誰が相談役になり、どのくらいの期間支えるかが決まっていれば、リモートで働いた経験の長さにかかわらず候補者を検討しやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

メンターは直属の上司が兼ねてもよいですか

避けた方がよいと考えます。人事院の手引きは、メンターの役割を直属の上司による業務上の指導とは異なるものとし、上司の役割を補う「斜めの関係」と位置づけています。上司が兼ねると、評価する相手に評価への不安を相談することになり、聞きにくいことを聞ける場になりにくくなります。

社員が少なく、近い立場のメンターを選べません

人事院の手引きの別添には、女性職員を対象とする制度の留意点として、職場の中に適任者がいない場合に近くにある別の官署(役所の事務所)の職員を選ぶことが挙げられています。組み合わせを固定せず、複数のメンター候補の中からその都度相談する相手を選ぶやり方も紹介されています。リモートで働くなら、部署や拠点が違う先輩でも、日々のやり取りの経路さえあればメンターを頼めます。

メンタリングは勤務時間の中で行うものですか

人事院の手引きは、メンタリングは双方の上司の了解のもとで勤務時間内に行うことが考えられるとしたうえで、双方が昼の休憩時間などに行うことを希望した場合は勤務時間外も可能としています。社内の扱いは就業規則や労務の担当者と確かめたうえで決めてください。

受け入れの形が決まったら相談

リモートで迎える人の配属先と、相談役になる先輩の目星がついていれば、そのままご相談いただけます。メンターをどう置くか決めきれていない段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:人事院「メンター制度実施の手引き」(PDF)(https://www.jinji.go.jp/content/900018174.pdf)。出典:人事院人材局企画課「メンター制度実施の手引き」(平成30年2月2日)。はじめに、1「メンター」について、3 人事当局の役割(メンター制度実施の流れ(3)〜(5))、4 メンター及びメンティーの上司の役割、5 メンタリングの実施方法などを参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省委託事業「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000782363.pdf)。出典:令和2年度テレワークの労務管理に関する総合的実態調査研究事業「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」(令和3年3月)。企業調査(郵送、令和2年8月20日〜10月8日、有効回答3,788件)のQ20 テレワーク(在宅勤務)時の健康確保の措置(全体n=1,256)、Q26(4)① テレワーク(在宅勤務)で感じた課題(全体n=1,256)、従業員調査(WEB、令和2年8月20日〜9月25日、有効回答4,184件)のQ47 テレワーク(在宅勤務)のデメリットとして感じること(全体n=1,343)を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:人事院「目的・対象別メンター制度の概要・留意点」(「メンター制度実施の手引き」別添、PDF)(https://www.jinji.go.jp/content/900018172.pdf)。出典:人事院「メンター制度実施の手引き」別添。「職場環境への円滑な適応に向けて(新規採用職員、中途採用職員など)」の対象・メンターについて・メンタリングについて、新規採用職員に対するメンター制度【例】、「女性の登用拡大に向けて」のメンター及びメンタリングについて、【参考】メンタリングでの相談内容例のHINTを参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)




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