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なぜ育児休業取得率の公表には2つの式があるのか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 対象は常時雇用300人超:2025年4月に1,000人超から広がりました*3。
- 公表するのは2つの割合のどちらか:育児目的休暇を足すかどうかで分かれます*2。
- 期限は事業年度終了後おおむね3か月:公表方法はインターネット等です*2*3。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
採用サイトに載せる数字を決めるとき、育児休業の取得率をどう出すかで手が止まることがあります。分母も分子も、社内で決めてよいものではありません。
育児・介護休業法第22条の2は常時雇用する労働者の数が三百人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、毎年少なくとも一回、その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表しなければならないと定めています*1。
この300人超という線は、2025年4月に引き下げられたものです。厚生労働省は従業員数1,000人超に加え、300人超1,000人以下の企業にも、育児休業等の取得状況を公表することが義務付けられましたとしています*4。
本記事では、対象の範囲、選べる2つの割合、分子に入る休業、数え方のルール、公表の方法と期限を条文と省庁資料から整理します。
目次
対象は「常時雇用300人超」に広がった
まず、どこからが対象かを確認します。
条文は法第22条の2です。常時雇用する労働者の数が三百人を超える事業主が名宛人で、義務の内容は毎年少なくとも一回の公表です*1。
引き下げの経緯も明示されています。厚生労働省のリーフレットは育児・介護休業法の改正により、従業員が300人超1,000人以下の企業にも公表が義務付けられますとし、施行日を令和7(2025)年4月1日としています*3。
迷いやすいのが「常時雇用する労働者」の数え方です。リーフレットは雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すとしています*3。
具体的には2つが挙げられています。期間の定めなく雇用されている者と、一定の期間を定めて雇用されている者または日々雇用される者であって、雇用期間が反復更新されて事実上期間の定めなく雇用されている者と同等と認められる者です*3。
後者には目安も付いています。過去1年以上引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者です*3。
正社員だけを数える運用にはならない、ということです*3。有期契約でも反復更新の実態があれば、頭数に入ります*3。
300人前後の会社では、この数え方ひとつで対象になるかどうかが変わります*3。まず自社の人数を、この定義で数え直すところからになります*1*3。
採用側から見た関連論点は一般事業主行動計画とは|101人以上の義務と手順にまとめました。人数の線引きが制度ごとに違う点は共通しています。
公表するのは2つの割合のどちらか
次に、何を公表するかです。ここが「2つの式」の正体になります。
法は厚生労働省令で定めるものとしか書いていません*1。中身は育児・介護休業法施行規則第71条の6にあり、次に掲げるいずれかの割合とすると定めています*2。
| 区分 | 分子 | 分母 |
|---|---|---|
| ① 育児休業等の取得割合 | 育児休業等をした男性労働者の数 | 配偶者が出産した男性労働者の数 |
| ② 育児休業等と育児目的休暇の取得割合 | 育児休業等をした男性労働者の数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数 | 配偶者が出産した男性労働者の数 |
育児・介護休業法施行規則第71条の6および厚生労働省リーフレットより作成*2*3。
分母は同じです。どちらも公表前事業年度において配偶者が出産した男性労働者の数です*2。違うのは分子に育児目的休暇を足すかどうかだけです*2*3。
基準となる期間にも定義があります。公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度で、規則ではこれを「公表前事業年度」と呼んでいます*2。
②の「育児を目的とした休暇」には条件があります。厚生労働省は休暇の目的の中に「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度と説明しています*3。
就業規則に書いていない運用上の配慮は、ここに入りません*3。逆にいえば、規程を整えれば②を選べる会社もあるということです*3。
除かれるものも明記されています。②の分子に足せる休暇から、育児休業等、子の看護等休暇、法第23条の3第1項第4号の休暇は除かれます*2*3。
どちらを選ぶかは会社の判断です*2。ただし選んだ式が何を測っているかは変わるため、採用の場面で示すなら、どちらの割合かも併記するのが誠実でしょう。
分子に入る「育児休業等」の範囲
①でも②でも、分子の中心は「育児休業等」です。この語にも定義があります。
規則は、育児休業等を育児休業及び法第23条第2項又は第24条第1項の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置が講じられた場合の当該措置によりする休業としています*2。
厚生労働省の説明は、これを3つに開いています。育児休業(産後パパ育休を含む)と、法第23条第2項に基づく措置による休業、法第24条第1項に基づく措置による休業です*3。
法第23条第2項は、3歳未満の子を育てる労働者について所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置義務です*3。法第24条第1項は、小学校就学の始期に達するまでの子を育てる労働者に関する努力義務です*3。
つまり、法定の育児休業だけでなく、代替措置として設けた休業も分子に入り得ます*2*3。自社の制度が「準ずる措置」に当たるかは、就業規則の書き方で決まります*2。
産後パパ育休の扱いにも確認があります。厚生労働省は産後パパ育休とそれ以外の育児休業等を分けて割合を計算する必要はありませんとしています*3。
分母に入る「配偶者が出産した男性労働者」には、休業を取ったかどうかは関係しません*2。出産の事実で数えるため、把握の仕組みが要ります*2。
この把握は、本人からの申出を起点にするのが一般的です*3。2025年10月からは、妊娠・出産等の申出時に意向を個別に聴取することも事業主の義務になりました*4。
制度そのものの整備状況を測る話は両立支援等助成金6つのコースと、2026年度の新設2つで扱いました。公表は結果の開示、助成金は取り組みへの支援という位置づけです。
数え方には4つのルールがある
式が決まっても、人数の数え方で結果は変わります。厚生労働省は代表的な場面を示しています。
1つ目は、同一の子について複数回取った場合です。当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数えます*3。
育児休業を分割して2回取った場合も、育児休業と育児目的休暇の両方を取った場合も、同じ子であれば1人です*3。延べ人数ではないということです*3。
2つ目は、事業年度をまたいだ場合です。育児休業を開始した日を含む事業年度の取得として計算します*3。終了日ではなく開始日で年度が決まります*3。
3つ目は、分割して複数の事業年度にまたがった場合です。分割して取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とします*3。2回目は数えません*3。
4つ目は、任意で公表する平均取得日数の計算です。厚生労働省はきまりはありませんとしたうえで、計算例を紹介しています*3。
その例は、公表前々事業年度に出生した子の1歳までの合計育児休業取得日数を、当該育児休業取得人数で割るというものです*3。年度が1つ前にずれる点に注意が要ります*3。
4つのルールに共通しているのは、実態の重さではなく「取ったかどうか」で数える設計です*3。長さは①②の割合には反映されません*2。
だからこそ、任意公表の余地が用意されています*3。取得率だけでは伝わらない部分を、平均取得日数で補う形です*3。
公表の方法と、期限の目安
公表の仕方にも省令の定めがあります。
施行規則第71条の5は法第22条の2の規定による公表は、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとするとしています*2。
厚生労働省の説明はより具体的です。インターネットなどの一般の方が閲覧できる方法で公表する必要がありますとされています*3。社内掲示だけでは足りません*3。
公表先の例も挙げられています。厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で、リーフレットは12万社以上にご登録いただいていますとしてこちらでの公表を勧めています*3。
自社サイトでの公表も方法としては成り立ちます*2。ただし一般の方が閲覧できることが条件のため、会員限定ページなどは合いません*3。
期限は法文にはなく、目安が示されています。公表前事業年度終了後、おおむね3か月以内に公表してくださいという書き方です*3。
決算期別の初回公表期限も表で示されました。3月決算なら令和7(2025)年6月末、9月決算なら同年12月末、12月決算なら令和8(2026)年3月末という並びです*3。
頻度は毎年少なくとも一回です*1。一度公表して終わりではなく、事業年度ごとに更新していく運用になります*1。
任意公表も歓迎されています。リーフレットは、①②とあわせて女性の育児休業取得率や育児休業平均取得日数なども公表して自社の実績を伝えるよう案内しています*3。
採用の場面では、数字に説明を添える
公表は法定の義務ですが、出た数字は求職者にも見えます。
①と②では、同じ会社でも割合が変わります*2。②は育児目的休暇の利用者を分子に足せるため、制度を広く用意している会社ほど高く出やすい構造です*2。
逆に①は、育児休業そのものの取得を測ります*2。どちらが優れているという話ではなく、測っている対象が違うということです*2。
求人票や採用サイトに載せるなら、割合の種類と対象年度を添えるほうが読み手には親切でしょう*2*3。数字だけでは比較の土台がそろいません*2。
母集団が小さい会社では、1人の増減で割合が大きく動きます*2。分母が「配偶者が出産した男性労働者」に限られるためです*2。
その場合は、平均取得日数や女性の取得率を併記する選択肢があります*3。任意公表として明示的に認められている範囲です*3。
2025年10月からは、両立に関する個別の意向聴取と配慮も事業主の義務になりました*4。聴取内容には勤務時間帯、勤務地、両立支援制度等の利用期間、業務量や労働条件の見直しが挙げられています*4。
公表される割合は、こうした運用の結果として出てきます*4。数字を上げるための施策より、制度の使いやすさを整えるほうが順番としては先です*4。
働き方の条件を採用要件にどう反映するかは女性活躍推進法改正で変わる賃金差異の公表でも触れました。開示が増えると、社内の実態がそのまま外に出ます。
着手の順番は3つ
ここまでを、手順に落とします。
1点目:常時雇用する労働者の数を定義どおりに数える——雇用契約の形態を問わず、反復更新で事実上期間の定めなく雇用されている者を含めます*3。300人を超えれば対象です*1。
2点目:①と②のどちらで公表するかを決める——②を選ぶには、育児を目的とした休暇であることが就業規則等で明らかになっている必要があります*2*3。
3点目:事業年度終了後おおむね3か月以内に、閲覧できる場所へ出す——インターネットの利用その他の適切な方法とされ、「両立支援のひろば」が案内されています*2*3。
この3つが決まれば、あとは毎年の更新です*1。数え方のルール、とくに同一の子は1人、分割は最初の取得のみという2点を社内で共有しておくと、年度をまたぐ集計で迷いません*3。
両立支援と人手の確保を並行させたい方へ
休業や短時間勤務が重なる期間の体制づくりについて、任せたい職責と必要な稼働の形から担当が一緒に整理できます。
最後に、制度を整えている間の実務をどうするかを1つだけ挙げておきます。就業規則の改定や集計の仕組みづくりには手順が必要で、その間も現場の仕事は動きます。
休業や短時間勤務で薄くなる部分を業務委託で受け持たせ、体制が整ってから配置を戻すという順番も現実的な選択肢です。枠を立てる前の検討として有効でしょう。
まとめ:育児休業取得率の公表の要点
第一に、対象です。育児・介護休業法第22条の2は、常時雇用する労働者の数が三百人を超える事業主に対し、毎年少なくとも一回、その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表することを義務づけています。この300人超という線は2025年4月に引き下げられたもので、従来の1,000人超に加えて300人超1,000人以下の企業も対象になりました。常時雇用する労働者とは、雇用契約の形態を問わず事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、反復更新により過去1年以上引き続き雇用されている者や、雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者を含みます。第二に、公表内容です。育児・介護休業法施行規則第71条の6は2つの割合を定めており、いずれかを選びます。①は、公表前事業年度に配偶者が出産した男性労働者の数を分母、育児休業等をした男性労働者の数を分子とする割合です。②は、分子に小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数を加えた割合です。分子の育児休業等には、育児休業(産後パパ育休を含む)のほか、法第23条第2項または第24条第1項の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置による休業が含まれます。数え方は、同一の子について取得したものは1人として数え、事業年度は育児休業を開始した日を含む事業年度で判定し、分割して取得した場合は最初の取得のみを計算の対象とします。第三に、方法と期限です。施行規則第71条の5は、公表をインターネットの利用その他の適切な方法により行うものとしています。厚生労働省は、一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があるとし、公表前事業年度終了後おおむね3か月以内という目安を示しています。任意で女性の育児休業取得率や育児休業平均取得日数を併せて公表することも案内されています。
よくある質問
公表義務があるのはどんな企業ですか。
育児・介護休業法第22条の2により、常時雇用する労働者の数が三百人を超える事業主です。2025年4月の改正で、従来の1,000人超に加えて300人超1,000人以下の企業にも義務が広がりました。常時雇用する労働者とは雇用契約の形態を問わず事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、期間の定めなく雇用されている者のほか、反復更新により過去1年以上引き続き雇用されている者、雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者を含みます。
公表する2つの割合はどう違いますか。
分母はどちらも、公表前事業年度に配偶者が出産した男性労働者の数で共通です。違いは分子で、①は育児休業等をした男性労働者の数だけを分子にします。②はそれに加えて、小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数を分子に足します。②の育児を目的とした休暇は、休暇の目的の中に育児を目的とするものであることが就業規則等で明らかにされている制度に限られ、育児休業等や子の看護等休暇は除かれます。
育児休業を分割して取った場合はどう数えますか。
同一の子について取得したものであれば1人として数えます。育児休業を分割して2回取得した場合も、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合も同じです。事業年度の判定は、育児休業を開始した日を含む事業年度の取得として計算します。分割して複数の事業年度にまたがった場合は、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とします。
いつまでに、どこで公表すればよいですか。
育児・介護休業法施行規則第71条の5は、公表をインターネットの利用その他の適切な方法により行うものとしています。厚生労働省は、インターネットなどの一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があるとし、同省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」での公表を勧めています。期限は、公表前事業年度終了後おおむね3か月以内が目安とされています。
取得率のほかに公表できる数字はありますか。
あります。厚生労働省のリーフレットは、公表内容①や②とあわせて、任意で女性の育児休業取得率や育児休業平均取得日数なども公表するよう案内しています。平均取得日数の計算方法にきまりはありませんが、公表前々事業年度に出生した子の1歳までの合計育児休業取得日数を当該育児休業取得人数で割るという計算例が示されています。
出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076)。第22条の2(常時雇用する労働者の数が三百人を超える事業主が、厚生労働省令で定めるところにより毎年少なくとも一回、その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表しなければならない旨)の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025)。第71条の5(法第22条の2の規定による公表はインターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする旨)、第71条の6(公表する2つの割合の定義、公表前事業年度の意味、育児休業等の範囲、②の分子に加える育児を目的とした休暇制度から育児休業等・子の看護等休暇・法第23条の3第1項第4号の休暇を除く旨)の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」(令和6年5月作成)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf)。令和7(2025)年4月1日施行という施行日、改正後の対象企業と常時雇用する労働者の定義および1年以上の目安、公表内容①②の計算式、育児休業等に産後パパ育休や法第23条第2項・第24条第1項に基づく措置による休業が含まれる旨、インターネットなどの一般の方が閲覧できる方法という公表方法と「両立支援のひろば」の案内、任意公表の例、育児を目的とした休暇の定義、産後パパ育休を分けて計算しないこと、同一の子は1人として数えること、事業年度は開始日で判定し分割時は最初の取得のみを対象とすること、平均取得日数の計算例、公表前事業年度終了後おおむね3か月以内という期限と決算期別の初回公表期限の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:厚生労働省 育児休業制度特設サイト「法改正のポイント」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/law-amendment/)。育児休業等の取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大されたこと(2025年4月1日施行)、公表内容が男性の「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかであること、2025年10月1日施行の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化と聴取内容(勤務時間帯、勤務地、両立支援制度等の利用期間、業務量や労働条件の見直し等)の一次情報として(2026年8月確認)