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ベンダーロックインの対策4つ、実施は51.1%にとどまる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 対策を挙げたのは51.1%:185件です*2。
- 上端はオープン標準31.5%:可視化が27.6%です*2。
- 挙げていない側が46.1%:167件になります*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
そのシステムに手を入れられるのが1社だけ。見積が1本しか出ず、期間も相手の都合で決まる。よくある詰まり方です。
困るのは止まったときです。中身を知っているのが社外にしかいないと、社内で判断ができません。
手がかりは、ベンダーロックインを回避・軽減するために実施している取り組みを企業に聞いた設問です。
IPAの調査データを集計すると、防止策を1つ以上挙げた企業は51.1%でした*2。半分をわずかに超える水準です*2。
上端はオープン標準やデファクトスタンダードな技術・製品の採用で31.5%です*2。仕様や設計情報の可視化が27.6%で続きます*2。
目次
手を入れられるのが1社だけになっている
長く動いているシステムほど、触れる会社が絞られます。作った側に情報が集まるからです。
そのまま回っているうちは問題になりません。困るのは、期間や範囲を自社で決めたいときです。
この取り組みを聞いた調査があります*1。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」です*1。
公開日も示されています*1。2025年11月25日公開で、最終更新日は2026年5月13日と示されています*1。
回答の件数も書かれています*1。2026年2月9日時点で362件の回答があったとされています*1。
回答対象も示されています*1。国内企業です*1。
データの扱いも書かれています*1。回答を匿名化してオープンデータとして公開し、それを活用した分析レポートを募集しているとされています*1。
今回見るのはQ6-3です*3。ベンダーロックインを回避・軽減するために実施している取り組みを、当てはまるものすべてで聞いた設問です*3。
数値の出どころを断っておきます*2。単純集計グラフのPDFは図が画像で、比率を文字として取り出せません*2。
ですからこの記事の比率は、公開されている調査結果のCSVから筆者が集計した値です*2。資料に印字された比率ではありません*2。
母数は362件、複数回答で合計は134.8になる
先に母数を確かめます*2。集計に使った回答行は362件です*2。
無回答の扱いも確かめました*2。Q6-3では362件すべてが1つ以上の選択肢を選んでいるため、除外した行はありません*2。
選択肢は7つです*3。防止策が4つ、それに「わからない」「その他」「特になし/ベンダーロックインはない」が加わります*3。
足し合わせては読めません*2。選択の総数は488で、7つの比率を足すと134.8になります*2。
1社あたりの選択数も出しておきます*2。488を362で割ると平均1.35個です*2。この割り算はこの記事で行ったものです*2。
偏りもあります*2。1つだけ選んだ企業が276件で76.2%を占めます*2。
ですから並びとして扱います*2。配分ではなく、どの取り組みが挙がりやすいかという並びです*2。
上端はオープン標準31.5%、可視化が27.6%
防止策から見ます*2。上端は「オープン標準やデファクトスタンダードな技術・製品を採用している」で114件、31.5%でした*2。
2番目は情報の側です*2。「仕様や設計情報の可視化を行い、ブラックボックス化を防いでいる」が100件で27.6%です*2。
3番目は作りの側です*2。「システムの疎結合化やモジュール化を意識して設計・構築している」が67件で18.5%になります*2。
下端は書面の側です*2。「知的財産権やソースコードの帰属を契約書に明記している」が24件で6.6%でした*2。
実務に引き寄せます。上の3つはどれも自社で着手できる作業です。採用する技術を選ぶ、情報を書き出す、つなぎ方を分ける、という3つです。
ただし資料からは、実施の深さは読めません*2。当てはまるかを聞いた設問で、どこまでやっているかは示されていません*2。
もう1つ断ります*2。この調査は同じ362件を母数にしているため、別の設問でも同じ件数・同じ比率が現れることがあります*2。この記事はQ6-3だけを扱います*2。
対策を挙げた企業は51.1%、挙げていない側が46.1%
企業単位でも数え直します*2。防止策の4つのいずれかを挙げた企業は185件で、51.1%でした*2。
反対側も数えました*2。「わからない」または「特になし/ベンダーロックインはない」を選んだ企業が167件で46.1%です*2。
重なりも確かめました*2。この2つを同時に選んだ企業は0件でした*2。
残りも合わせます*2。「その他」だけを選んだ企業が10件で2.8%あり、185件と167件と10件を足すと362件になります*2。
読み方はこうです*2。半分をわずかに超える企業が何らかの手を挙げ、半分近くは挙げていないという分かれ方です*2。
実務での意味も分かれます。挙げていない側には、必要がない企業と、手を決めていない企業の両方が入っています*2。
ただし資料からは、その内訳は読めません*2。「特になし」と「ベンダーロックインはない」が同じ選択肢にまとめられているためです*3。
従業員数別では差が8.7から23.1ポイントひらく
従業員数で分けます*2。300人以下が219件、301人以上が143件です*2。
4つの防止策はいずれも大きい側が上でした*2。オープン標準は22.4%から45.5%で、差は23.1ポイントです*2。
可視化も同じ向きです*2。19.2%から40.6%で、差は21.4ポイントになります*2。
疎結合化も開きます*2。11.0%から30.1%で、差は19.1ポイントです*2。
契約書への明記は水準が低いままです*2。3.2%から11.9%で、差は8.7ポイントでした*2。
逆向きの項目もあります*2。「わからない」は22.8%から10.5%へ12.3ポイント下がり、「特になし」は32.9%から21.0%へ11.9ポイント下がります*2。
これらの差はすべてこの記事で計算した値です*2。資料に書かれた値ではありません*2。
挙げていない側もまとめておきます*2。300人以下では122件で55.7%、301人以上では45件で31.5%です*2。差は24.2ポイントになります*2。
ここで断ります*2。31.5%という値はこの記事に2回出てきますが、一方は全体でオープン標準を挙げた割合、もう一方は301人以上で対策を挙げていない割合で、指すものが違います*2。
差と倍率で順位が完全に入れ替わる
4つの防止策を2つの見方で並べます*2。まず差です*2。
差の順はこうです*2。オープン標準23.1ポイント、可視化21.4ポイント、疎結合化19.1ポイント、契約書への明記8.7ポイントです*2。
次に倍率です*2。契約書への明記が3.72倍、疎結合化が2.74倍、可視化が2.11倍、オープン標準が2.03倍になります*2。
順位が逆になります*2。差では上端だったオープン標準が、倍率では下端に来ます*2。
理由は水準です*2。契約書への明記は300人以下が3.2%と低いため、同じ差でも倍率が跳ねます*2。
ですから両方を出します*2。倍率だけを見ると「規模で最も開くのは契約書への明記」に見えますが、実数では17件と7件の差です*2。
実務での読み方も決まります。規模の差が大きいのは、どの項目に手が回っているかであって、倍率の大小そのものではありません。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*2。
第一に、比率は筆者が集計した値です*2。単純集計グラフの図から数値を文字として取り出せないため、公開データから再集計しています*2。
第二に、実施の深さが分かりません*2。当てはまるかを聞いた設問で、範囲や到達度は示されていません*2。
第三に、効果が読めません*2。防止策と、実際に移行できたかどうかを結びつけた設問はありません*2。
第四に、状況や原因との対応が読めません*2。同じ設問群にある状況と原因の設問は別の記事で扱っており、企業単位の組み合わせはここでは出しません*2。
第五に、産業や企業種別の内訳を出していません*2。この記事の層別は従業員数だけです*2。
第六に、複数回答なので配分が読めません*2。7つの比率を足すと134.8になります*2。
第七に、回答企業の偏りが残ります*2。国内企業を対象とした任意の回答であり、母集団を代表する抽出ではありません*1。
第八に、時期の範囲があります*1。2026年2月9日時点の回答であり、それより後の傾向は読めません*1。
社内に残す手を1つ決める4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 選択肢 | 全体(362件) | 300人以下(219件) | 301人以上(143件) | 差(筆者計算) |
|---|---|---|---|---|
| オープン標準やデファクトスタンダードな技術・製品を採用している | 31.5% | 22.4% | 45.5% | 23.1ポイント |
| 仕様や設計情報の可視化を行い、ブラックボックス化を防いでいる | 27.6% | 19.2% | 40.6% | 21.4ポイント |
| システムの疎結合化やモジュール化を意識して設計・構築している | 18.5% | 11.0% | 30.1% | 19.1ポイント |
| 知的財産権やソースコードの帰属を契約書に明記している | 6.6% | 3.2% | 11.9% | 8.7ポイント |
| わからない | 18.0% | 22.8% | 10.5% | 12.3ポイント低い |
| その他 | 4.4% | 3.7% | 5.6% | 1.9ポイント |
| 特になし/ベンダーロックインはない | 28.2% | 32.9% | 21.0% | 11.9ポイント低い |
1段目は、1社しか触れないシステムを1つ選ぶことです。全部を洗い出す前に、止まると困る1つに絞ります。
2段目は、仕様と設計情報のどこが無いかを書き出すことです。持っていない情報を並べると、頼む範囲が決まります。
3段目は、書き出す作業と決める作業を分けることです。情報を集める手と、何を社内に持つかの決めを切り離します。
4段目は、書き出す側を期間で区切って外へ出すことです。作業量が読める部分から動かします。
2段目を情報から始める理由は、分布に出ています*2。可視化を挙げた企業は27.6%で、防止策の中では2番目に挙がりやすい取り組みです*2。
1段目を1つに絞る理由も分布にあります*2。1社あたりの選択数は平均1.35個で、1つだけ挙げた企業が76.2%です*2。多くの企業は同時にいくつも動かしていません*2。
4段目を外に出す理由はここです*2。300人以下では対策を挙げていない側が55.7%で、社内の手だけで着手が進んでいない側が半分を超えています*2。
実務では、3段目と4段目が外部要員の枠になります。フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。範囲と期間を区切って渡し、片づいたら戻せるためです。
逆に、1段目と2段目を渡すと、何を社内に持つかの決めが外に出ます。範囲の決めは社内に置きます。
同じ設問群の状況と原因はレガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
167件46.1%という値は担当者の離脱に備える3つの確認、技術情報は41.2%が個人依存にも別の設問の値として出てきます。
114件31.5%もデータ利活用は74.0%、在り処の管理は20.7%にとどまるに別の設問の値として出てきます。
社内と外の分け方そのものは、工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で同じ調査の別の設問を整理しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は国内企業を対象に実施され、2026年2月9日時点で362件の回答があったものです*1。
まとめ:持っていない情報を並べて、集める手を外に出す
第一に、資料です。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」は2025年11月25日公開・2026年5月13日最終更新で、回答対象は国内企業、2026年2月9日時点で362件の回答がありました。回答は匿名化されてオープンデータとして公開され、分析レポートが募集されています。第二に、数値の出どころです。単純集計グラフのPDFは図が画像で比率を文字として取り出せないため、この記事の比率は公開されている調査結果のCSVから筆者が集計した値で、資料に印字された比率ではありません。第三に、母数です。Q6-3は複数回答で、362件すべてが1つ以上の選択肢を選んでいます。選択の総数は488、1社あたり平均1.35個、7つの比率を足すと134.8になるため配分としては読みません。1つだけ選んだ企業は276件で76.2%でした。第四に、防止策の並びです。オープン標準やデファクトスタンダードな技術・製品の採用が114件で31.5%、仕様や設計情報の可視化が100件で27.6%、疎結合化やモジュール化が67件で18.5%、知的財産権やソースコードの帰属の契約書への明記が24件で6.6%でした。第五に、企業単位です。4つの防止策のいずれかを挙げた企業は185件で51.1%、「わからない」または「特になし/ベンダーロックインはない」を選んだ企業は167件で46.1%、「その他」だけを選んだ企業は10件で2.8%です。この3つを足すと362件になり、前の2つを同時に選んだ企業は0件でした。第六に、従業員数別です。300人以下219件と301人以上143件で分けると、4つの防止策の差は8.7ポイントから23.1ポイントでした。対策を挙げていない側は300人以下で55.7%、301人以上で31.5%で、差は24.2ポイントです。第七に、見方です。差の順はオープン標準・可視化・疎結合化・契約書への明記ですが、倍率の順は完全に逆になります。契約書への明記は300人以下の水準が3.2%と低いため倍率が3.72倍まで跳ねるだけで、実数では17件と7件の差です。
よくある質問
ベンダーロックインの対策を実施している企業はどれくらいですか。
IPAの2025年度ソフトウェア動向調査の公開データを集計すると、4つの防止策のいずれかを挙げた企業は185件で51.1%でした。「わからない」または「特になし/ベンダーロックインはない」を選んだ企業は167件で46.1%です。比率は公開されているCSVから筆者が集計した値で、資料に印字された比率ではありません(確認日2026年9月9日)。
どの対策が多く挙がっていますか。
オープン標準やデファクトスタンダードな技術・製品の採用が114件で31.5%、仕様や設計情報の可視化が100件で27.6%、疎結合化やモジュール化が67件で18.5%、知的財産権やソースコードの帰属の契約書への明記が24件で6.6%でした。複数回答で、7つの比率を足すと134.8になります。
企業規模で違いはありますか。
300人以下219件と301人以上143件で分けると、4つの防止策の差は8.7ポイントから23.1ポイントで、いずれも大きい側が上でした。対策を挙げていない側は300人以下で55.7%、301人以上で31.5%です。
倍率で見るとどの対策が一番開きますか。
契約書への明記が3.72倍で最も開きますが、これは300人以下の水準が3.2%と低いためです。実数では17件と7件の差です。差で見るとオープン標準の23.1ポイントが上端で、差の順と倍率の順は完全に入れ替わります。
対策をしている企業はロックインを解消できているのですか。
そこまでは読めません。当てはまるかを聞いた設問で、実施の深さも、実際に移行できたかどうかとの関係も示されていません。同じ設問群にある状況と原因の設問との企業単位の組み合わせもこの記事では出していません。
出典
- *1 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。公開日2025年11月25日・最終更新日2026年5月13日・回答対象が国内企業・2026年2月9日時点で362件の回答・匿名化してオープンデータとして公開し分析レポートを募集しているという方針の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-result-data-str.csv)。Q6-3とQ1-7の回答を集計した元データとして。この記事の比率・件数・ポイント差・倍率はこのCSVから筆者が集計・計算した値であり、資料に印字された比率ではない。示された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-c-questions.xlsx)。Q6-3の設問文・7つの選択肢・回答種別(複数選択)とQ1-7の従業員数の区分の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 単純集計グラフ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-graphs.pdf)。図が画像で比率を文字として取り出せないことの確認として。このためCSVから再集計している(2026年9月確認)