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エンジニア採用の兼務人事とは|育成の担当を置く企業は10.9%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 8割の企業は職業能力開発推進者を置いていない:職業能力開発推進者は、法律が選任の努力義務を定めた育成側の役割です。いずれの事業所においても選任していない企業が82.2%でした。*1
- すべての事業所で選任した企業の64.8%は本社が担当:本社が選んだ人が全事業所ぶんを受け持つ形です。分母はすべての事業所で選任している企業だけで、全体の10.9%にあたります。*1
- 採用の担当者を数えた統計ではない:この調査が数えているのは育成の側の役割で、採用の担当ではありません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
開発の現場を見ながら、人事の仕事も兼ねて担当しているマネージャがいます。エンジニア採用もその一部として回ってきます。この記事ではそういう立場を兼務人事と呼びます。何から手を付けるかを決めかねることの多い立場です。
まず先に断っておきます。採用の担当者が専任なのか兼務なのかを数えた公的な統計は、今回探した範囲では見つかりませんでした。代わりに見つかったのは、育成の側で法律が名指ししている職業能力開発推進者という役割の選任状況です。*1 採用そのものの数字ではありませんが、この役割の置かれ方は読み取れます。
本記事は、その兼務人事にあたっているマネージャに向けたものです。前半で法律と調査の数字を読み、後半で決めておきたいことを整理します。
目次
職業能力開発推進者は法律が名指しした育成側の役割
職業能力開発推進者は、職業能力開発促進法の第12条に出てきます。*3 条文は「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる業務を担当する者(以下「職業能力開発推進者」という。)を選任するように努めなければならない」です。*3 努力義務とは、そうするように努めることを法律が求めているという意味で、置かなくても違法にはなりません。
担当する業務として条文が挙げているのは3つです。*3 1つめが計画の作成と実施に関する業務、2つめが労働者に対して行う相談や指導などの業務、3つめが国や職業能力開発協会との連絡に関する業務です。*3 ここで言う計画とは第11条に出てくる計画で、第11条も「作成するように努めなければならない」と書かれた第12条と同じ努力義務です。*3 実務では事業内職業能力開発計画と呼ばれ、社員の職業能力をどう高めるかを書いた社内の計画を指します。
3つのどれにも、採用という言葉は出てきません。この役割は育成の側に置かれたものです。誰がこの役割を渡されているかを数えた資料は見つかりませんでしたが、役割がどれだけ置かれているかは次の調査で分かります。
8割の企業は推進者を選任していない
厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」を見ます。*1 対象は、建設業や製造業から医療・福祉まで15の大きな産業に属し、常用労働者(期間を定めずに、または1か月以上の期間を定めて雇われている人)を30人以上雇っている民営の企業です。*2 同じ条件の企業は全国に約16万社あり、そこから約7千5百社を抜き出して調べています。*2
ここから先の割合は、答えた企業の数をそのまま割ったものではありません。産業と企業規模ごとに復元倍率(その1社が全国の何社ぶんにあたるかという重み)を掛けて、約16万社のほうへ引き延ばした推計値です。*2 そのため「答えた企業のうち何社」という数え方はできません。
結果です。職業能力開発推進者を「いずれの事業所においても選任していない」企業は82.2%でした。*1 「すべての事業所において選任している」企業は10.9%、「一部の事業所においては選任している」企業は6.8%です。*1 法律が努力義務として置く役割ですが、8割の企業には置かれていません。
産業別では、すべての事業所で選任している企業の割合がいちばん高いのは情報通信業の25.0%でした。*1 その情報通信業でも、いずれの事業所でも選任していない企業は67.0%です。*1 エンジニアの多い産業でも、置いていない企業のほうが多数を占めます。
すべての事業所で選任した企業では64.8%が本社に集まっている
企業規模で見ると、大きいほうが選任している割合は高くなります。
| 企業規模 | すべての事業所で選任 | 一部の事業所で選任 | いずれの事業所でも選任していない |
|---|---|---|---|
| 30〜49人 | 10.2% | 4.7% | 85.1% |
| 50〜99人 | 9.8% | 7.2% | 83.0% |
| 100〜299人 | 12.1% | 8.4% | 79.5% |
| 300〜999人 | 14.2% | 11.4% | 74.1% |
| 1,000人以上 | 16.5% | 12.8% | 70.7% |
「いずれの事業所でも選任していない」の列は、30〜49人の85.1%から1,000人以上の70.7%まで、規模が上がるごとに下がります。*1 「すべての事業所で選任している」の列は10.2%から16.5%へ上がりますが、30〜49人と50〜99人のあいだだけ0.4ポイント入れ替わります。*1 この差は推計値どうしのものなので、順位としては読めません。
規模が大きくても、置いていない企業のほうが多い点は変わりません。資料は「1,000人以上」でも7割以上の企業が推進者を選任していない、と書いています。*1 表の70.7%です。*1
もう1つ、選任している企業がどう選任しているかも調査は聞いています。ここでの分母は「すべての事業所において選任している」企業だけで、全体の10.9%にあたる部分です。「一部の事業所においては選任している」6.8%は入りません。*1 その10.9%のなかで、「本社が職業能力開発推進者を一人以上選任し、すべての事業所について兼任させている」が64.8%で最も高くなっています。*1 事業所ごとに人を置くのではなく、本社が選んだ人がまとめて担当する形です。
ここで言葉を分けておきます。資料の「兼任」は、同じ役割を複数の事業所ぶん掛け持つという意味です。*1 この記事の題にある「兼務」は、人事と開発の現場のように別の仕事を掛け持つことです。2つは別のことなので、64.8%という数字は兼務が多いか少ないかを示すものではありません。示しているのは、担当が1か所に集まっている企業が多いことだけです。
全企業に直すと、10.9%の64.8%で7.1%。100社のうち7社ほどが、本社がまとめて兼任させる形です。この掛け算は資料が示したものではありません。
ここまでの数字は、職業能力開発推進者という育成側の役割についてのものです。採用の担当がどう置かれているかは、この調査では何も数えていません。ここから先は、この数字を背景として置いたうえでの、この記事からの提案です。調査から導いた結論ではありません。
兼務人事でエンジニア採用を回すときの3つの決めごと
ここからは、兼務人事でエンジニア採用を回すときに決めておきたい3つです。資料がこの進め方を示しているわけではなく、法律の3つの業務と調査の数字からこの記事で組み立てたものです。
1つめは、自分がどの役割を渡されているのかを確かめることです。職業能力開発推進者に選任されているかどうかは、選任の記録が社内にあるかで分かります。8割の企業には選任そのものがないので、*1 調べても「選任されていない」となることのほうが多いはずです。選任されているなら、条文が挙げる3つの業務が採用とは別に乗ります。*3
2つめは、採用で決めることと育成で決めることを分けて書くことです。推進者の業務は計画の作成と相談・指導と連絡の3つで、採用の要件を決める業務は入っていません。*3 同じ人が両方をやるとしても、混ぜずに書いておけば、担当が替わるときにどちらを引き継ぐのかが分かります。
3つめは、兼務であることを前提に、手順を人ではなく文書に残すことです。調査の選択肢は「一人以上選任し」なので、何人で担当しているかまでは分かりません。*1 それでも本社にまとまっているなら、担当している人が抜けたときに各事業所の側へ何が残るのかは確かめておきたいところです。これは調査から出てくる話ではなく、この記事での提案です。
外注時に確認しておきたい点
外部の要員(自社の社員ではなく、作業を委託して働いてもらう人。個人のフリーランスのほか、開発を請け負う会社に所属している人も含みます)に頼む場合も、渡せる作業と社内に残す判断の線引きは同じです。なお、この調査が聞いているのは雇っている労働者への育成の体制で、外部の要員は含まれていません。*1
ただし、手が足りないときに外部へ渡せる作業と渡せない作業の線は引けます。候補者を探す作業や日程の調整は範囲と期間を決めて渡せます。一方、誰を採るかの判断は社内に残します。どこで線を引くかを決めたのはこの記事で、条文も調査も定めていません。
正社員として採るのか外部の要員に頼むのかを決めるときも、兼務人事の側が採用に週あたり何時間使えるのかを先に書き出しておきます。渡せる作業の量がそこで決まるためです。これも調査から出てくる話ではありません。
ここから先は関連する記事です。推進者が担当する計画そのものの作り方は事業内職業能力開発計画の作り方|様式がない計画の4ステップにまとめました。
研修ありと求人票に書ける水準は研修ありと書けるのは、どの水準からかで扱っています。こちらは同じ能力開発基本調査の別の設問です。
入社後に何を用意するかの割合はエンジニア中途採用の入社後、育成の4つとも新卒より低いにあります。
採用と育成のどちらを選ぶかはDX人材は採用か育成か、助成金を含めて比較するで整理しています。
まとめ:兼務人事は例外ではないという前提で組み立てる
読み取れることは3つです。第一に、職業能力開発推進者をいずれの事業所においても選任していない企業は82.2%でした。*1 第二に、すべての事業所で選任している企業のなかでは、本社が一人以上選任して全事業所ぶんを担当させる形が64.8%で最も高い。*1 第三に、条文が推進者の業務として挙げているのは計画の作成と実施、相談と指導、国等との連絡の3つで、採用は入っていません。*3 この調査は採用について何も数えていません。
よくある質問
職業能力開発推進者の選任は義務ですか
条文は「選任するように努めなければならない」という書き方です。*3 努力義務なので、選任していなくても違法にはなりません。いずれの事業所においても選任していない企業は82.2%です。*1 この割合になった理由を調査は聞いていません。確認日は2026年9月19日です。
推進者の業務に採用は入っていますか
入っていません。条文が挙げているのは、計画の作成と実施、労働者に対する相談や指導など、国や職業能力開発協会との連絡の3つです。*3 確認日は2026年9月19日です。
情報通信業では選任している企業が多いのですか
すべての事業所で選任している企業の割合は25.0%で、産業のなかでいちばん高くなっています。*1 ただし同じ産業でも、いずれの事業所でも選任していない企業は67.0%です。*1 確認日は2026年9月19日です。
この調査の割合は回答した企業の割合ですか
違います。産業と企業規模ごとの復元倍率を使って、約16万企業の母集団に引き延ばした推計値です。*2 調べたのは、そこから抜き出した約7千5百企業です。*2 確認日は2026年9月19日です。
採用の担当者が兼務かどうかの統計はありますか
今回探した範囲では見つかりませんでした。この記事で使っているのは育成側の役割である職業能力開発推進者の選任状況です。確認日は2026年9月19日です。
兼務のまま採用を回すことになったら相談
候補者を探すところから渡したいのか、要件を決めるところから一緒に見てほしいのかが決まっていれば、そのままご相談いただけます。まだ切り分けられていない段階でも承ります。
Remoguとリラシクなら、正社員として採る候補者も、作業と期間を決めて入ってもらう外部の要員も、条件を決めたうえでお探しいただけます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」結果の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-07b.pdf)。出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」。図13(職業能力開発推進者の選任状況)、図14(産業、企業規模別の選任状況)、図15(選任方法)の一次情報として。この記事は資料に示された数値をもとに表と図を作成した。資料の図そのものは写していない(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「能力開発基本調査」標本設計・用語の説明(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001510152.pdf)。調査の範囲(15大産業・常用労働者30人以上の民営企業)、母集団約16万企業・標本約7千5百企業、産業と企業規模ごとの復元倍率による推計であることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000064)。第11条(計画的な職業能力開発の促進)と第12条(職業能力開発推進者)の条文の確認として(2026年9月確認)