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SESと組織再編、会社分割の通知から異議まで13日以上
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- この記事で読むのは会社分割の法律だけ:組織再編にはいくつもの手法があります。この記事で読んだ法律は会社分割について定めたもので、合併や事業譲渡は読んでいません。また、発注した側と取引先とのあいだの契約は、この法律には出てきません。
- 労働契約の行き先は2つの軸で分かれる:承継される事業に主として従事するかと、分割契約等に承継の定めがあるかの組み合わせで、4つに分かれます。そのうち3つについて、この法律が規定を置いています。ただし主として従事するかどうかの基準は省令にあり、この記事では判定していません。
- 異議は2つあり、求めるものが逆になる:主として従事するのに定めがない人は承継されないことについて、主として従事しないのに定めがある人は承継されることについて、それぞれ異議を申し出ることができます。*1 どちらも分割契約等が置いた扱いに対する異議です。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
SES(システムエンジニアリングサービス。開発や運用にあたる人に来てもらう形を指して使われる呼び方)で来ている人の会社が、組織再編をしたらどうなるか。来ている人の労働契約が、分割をする会社と受け取る会社のどちらに行くのかという話です。
組織再編には手法がいくつもあります。この記事で読むのは、そのうち会社分割の法律です。会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律が、承継されるかどうかを正面から定めているからです。*1
以下、人に来てもらっている先を取引先と呼びます。その取引先が分割をするとして、分割をする側を分割会社、受け取る側を承継会社等と呼びます。分割契約等とは、吸収分割のときの吸収分割契約と、新設分割のときの新設分割計画を指す条文上の言い方です。*1
なお、この法律が動かすのは分割会社と、そこで働く人のあいだの労働契約です。発注した側と取引先とのあいだの契約がどちらの会社に行くかは、この法律には出てきません。
目次
通知が行くのは2つの号の労働者と労働組合
第2条第1項からです。会社が会社分割をするときは、次に掲げる労働者に対し、通知期限日までに、分割契約等における定めの有無、異議申出期限日その他厚生労働省令で定める事項を、書面により通知しなければならないとされています。*1
次に掲げる労働者は2種類です。第1号が、承継会社等に承継される事業に主として従事するものとして厚生労働省令で定める労働者。第2号が、それ以外の労働者であって、分割契約等にその者の労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがあるものです。*1
通知期限日は第3項に2通り置かれています。株式会社が分割をする場合で分割契約等について株主総会の決議による承認を要するときは、その承認株主総会の日の2週間前の日の前日。承認を要しないときや合同会社が分割をする場合は、吸収分割契約が締結された日または新設分割計画が作成された日から起算して2週間を経過する日です。*1
2通りは起点が違います。承認が要るときは株主総会の日から前へ数え、その2週間前の日のさらに前日です。承認が要らないときは、契約の締結や計画の作成の日から後ろへ数えます。*1
通知の相手はもう1つあります。第2条第2項は、分割会社が労働組合との間で労働協約を締結しているときは、その労働組合に対し、通知期限日までに、労働協約を承継会社等が承継する旨の分割契約等における定めの有無その他厚生労働省令で定める事項を、書面により通知しなければならないとしています。*1 第1項が労働者、第2項が労働組合で、通知は2系統あります。なお、労働協約という語の説明は、今回参照した法律にはありません。
主として従事するかと、承継の定めがあるかで4つに分かれる
行き先を分けるのは2つの軸です。承継される事業に主として従事する労働者かどうかと、分割契約等にその人の労働契約を承継する旨の定めがあるかどうか。*1 組み合わせると4つになります。この整理はこの記事のものです。
| 組み合わせ | 承継の定めがある | 承継の定めがない |
|---|---|---|
| 主として従事する | 分割の効力が生じた日に承継される(第3条) | 異議を申し出れば承継される(第4条) |
| 主として従事しない | 異議を申し出れば承継されない(第5条) | この法律に規定がない |
左上の第3条から見ます。第2条第1項第1号の労働者が分割会社と締結している労働契約であって、分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがあるものは、その分割の効力が生じた日に承継会社等に承継されるものとする、と書かれています。*1 ここに異議の仕組みはありません。
右下は、第2条第1項の2つの号のどちらにも入りません。*1 第3条から第5条までも、主として従事する労働者か、承継の定めがある労働者かのどちらかを対象にしています。*1 つまりこの組み合わせについて、この法律は承継されるともされないとも書いておらず、第2条第1項の通知もこの人には行きません。これはこの記事の読み方です。
第2条第1項第1号は、主として従事する労働者を「厚生労働省令で定めるもの」としていて、*1 その省令は今回参照しておらず、上下どちらに当たるかは、この記事では判定できません。
異議は求めるものが逆で、期間は13日以上
残る2つが異議の場面です。第4条は、第2条第1項第1号の労働者であって承継の定めがないものが対象です。その人は、通知がされた日から異議申出期限日までの間に、分割会社に対し、労働契約が承継会社等に承継されないことについて、書面により異議を申し出ることができます。*1 申し出たときは、第4条第4項で、会社法の規定にかかわらず、分割の効力が生じた日に承継会社等に承継されるものとする、とされています。*1 会社法の側に何が書かれているかは今回参照していません。
第5条は、第2条第1項第2号の労働者が対象です。その人は、労働契約が承継会社等に承継されることについて、書面により異議を申し出ることができます。*1 申し出たときは、第5条第3項で、会社法の規定にかかわらず、承継会社等に承継されないものとする、とされています。*1
第4条は連れて行ってほしいという申し出で、第5条は残りたいという申し出です。第4条の対象は承継の定めがない人、第5条の対象は承継の定めがある人なので、*1 分割契約等が置いた扱いが逆であり、それに対する異議も逆になる、と読めます。なお、異議を申し出なかったときについて、この法律は第4条にも第5条にも効果を定めていません。これはこの記事の読み方です。
第4条第2項は、分割会社が異議申出期限日を定めるときは、第2条第1項の通知がされた日と異議申出期限日との間に少なくとも13日間を置かなければならない、としています。*1 第5条第2項がこれを準用しているので、どちらの異議にも同じ13日間がかかります。*1 準用という語の説明は今回参照した法律にはなく、ここでは第4条第2項の13日間が第5条の異議にも当てはまる、と読んでいます。
通知と異議のほかに置かれている条文
分割会社は、当該分割に当たり、厚生労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする、と書かれています。*1
第7条は語尾が違います。第2条の通知が「しなければならない」なのに対して、第7条は「努めるものとする」です。*1 努めなかったときに何が起きるかは、今回参照した条文には書かれていません。厚生労働大臣の定めるところにより、ともあり、その中身は今回参照していません。
労働協約にも条文があります。第6条第1項は、分割会社が分割契約等に、労働組合との間で締結されている労働協約のうち承継会社等が承継する部分を定めることができる、としています。*1 定めることもできるという書き方なので、定めないという選び方もあることになります。これはこの記事の読み方です。
発注した側から確かめること、確かめられないこと
ここまでは分割会社と、そこで働く人のあいだの話でした。SESで人に来てもらっている発注側は当事者ではありません。それでも、来ている人の労働契約がどちらの会社に行くかで、誰と話すことになるかが変わります。前提として、この法律が動かすのは労働契約なので、*1 来ている人が取引先に雇われている労働者かどうかが先に来ます。業務委託で来ている個人事業主には労働契約がありません。そのうえで確かめる点を4つ挙げます。自社の手元にあるのは4つめの契約書だけです。この整理はこの記事のものです。
1つめは、組織再編の手法です。会社分割なのか、合併なのか、事業譲渡なのか。この記事で読んだ法律は会社分割についてのものです。
2つめは、来ている人が承継される事業に主として従事する側かどうかです。表の上の行か下の行かで、行き先の決まり方が変わります。*1 ただしこの基準は省令にあります。取引先に確かめてもらうことになります。
3つめは、時期です。通知期限日は2通りあり、異議申出期限日は、通知がされた日との間に13日間以上を置いて定められます。*1 発注した側がこの通知を受け取るとは条文に書かれていません。
4つめは、自社とのあいだの契約です。これがどちらに行くかは、この法律には出てきません。契約書の記載と、取引先の説明で確かめることになります。来てもらう形が労働者派遣にあたる場合、自社で直接雇う形に変える場面は記事「SESから自社雇用へ切り替える手順、派遣元は3年で義務」で扱っています。
まとめ:2つの軸で4つに分かれ、3つに条文がある
会社分割について読み取れることは4つです。第一に、組織再編には手法がいくつもあり、この記事で読んだ法律が定めているのは会社分割です。合併や事業譲渡は、この記事では扱っていません。第二に、行き先は、承継される事業に主として従事するかと、分割契約等に承継の定めがあるかの組み合わせで4つに分かれます。主として従事して定めもあるときは、分割の効力が生じた日に承継されます。*1 主として従事せず定めもないときは、この法律に承継の定めがありません。第三に、残る2つでは異議を申し出られますが、求めるものが逆です。主として従事するのに定めがない人は承継されることを求め、主として従事しないのに定めがある人は承継されないことを求めます。*1 第四に、異議申出期限日は、通知がされた日との間に少なくとも13日間を置いて定められ、第5条第2項の準用で両方にかかります。*1 以上から、発注する側が確かめるのは、組織再編の手法、主として従事する側かどうか、通知と異議の時期、自社とのあいだの契約の4つで、自社の手元にあるのは最後の契約書だけです。ただし主として従事するかどうかの基準は省令にあり、この記事では判定していません。これはこの記事の読み方です。
よくある質問
会社分割をすると人も一緒に移るのですか
組み合わせによります。承継される事業に主として従事し、分割契約等に承継の定めもある人は、分割の効力が生じた日に承継されます。*1 主として従事するのに定めがない人は、異議を申し出たときに承継されます。*1 主として従事しないのに定めがある人は、異議を申し出たときに承継されません。*1 申し出なかったときの扱いは、この法律には書かれていません。主として従事せず定めもない人については、この法律に承継の定めがありません。
13日間はいつからいつまでですか
始まりは第2条第1項の通知がされた日、終わりは分割会社が定める異議申出期限日です。*1 条文は、この2つの日の間に少なくとも13日間を置かなければならないとしています。*1 13日間は2つの日にはさまれた日数で、通知の日から数えて13日目が期限日になる、という意味ではありません。
合併のときも同じですか
この記事では分かりません。合併や事業譲渡の扱いは読んでいません。
取引先が組織再編をしそうなときは
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出典
- *1 参考:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000103)。出典:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律。第2条第1項の通知の相手2種類と通知事項、第2項の労働組合への通知、第3項の通知期限日2通り、第3条の承継、第4条の異議と第2項の13日間、第5条の異議と第2項の準用、第6条第1項の労働協約、第7条の労働者の理解と協力の一次情報として(2026年9月確認)