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エンジニアが大量退職したときの立て直し方|止める仕事と補充の順番
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- エンジニアの大量退職では、辞める全員の仕事を1枚に書き出し、守る仕事・後ろに倒す仕事・止める仕事に分けます。
- 残るメンバーに仕事を足す前に1人ずつの仕事量を数え、労働基準法第36条の時間外労働の上限を超える割り振りは組みません。
- 期限の近い守る仕事は外部人材と分担で埋め、中核の役割は社員採用で立て直します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
開発チームの何人かが、ほぼ同じ時期に辞めると言ってきた。残ったメンバーの机に、引き継ぎの終わっていない作業が積み上がっていく——。開発の現場では、こうした事態が起こりがちです。厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、情報通信業の一般労働者の離職率は10.0%でした。*1 エンジニアの大量退職とは、この平常の幅を超えて複数のエンジニアが短い期間に続けて辞め、残った体制だけでは開発や運用が回らなくなる状態を指します。
止める仕事を先に決め、人を埋める順番を組めば、立て直しの道筋を作りやすくなります。ただし万能ではなく、辞める人の最終日が近いほど、引き継ぎの日数は少なくなります。本記事では、開発マネージャーや採用を任された担当者に向けて、大量退職の見分け方、止める仕事の分け方、残るメンバーの負荷の数え方、人を埋める順番、外部に頼むときの確認点を整理します。
目次
エンジニアの大量退職とは
厚生労働省の「雇用動向調査」は、5人以上の常用労働者を雇う約15,000事業所に、入職と離職の状況を毎年尋ねる調査です。*2 離職率は、その年の離職者数を、1月1日現在の常用労働者数で割った割合です。令和7年(2025年)の離職率は、情報通信業の一般労働者で10.0%、全産業の一般労働者で11.4%でした。*1
単純に考えると、エンジニア10人のチームで1年に1人が辞める計算で、1人ずつ募集して入社を待つ進め方でも埋められる幅です。同じ数か月に2人、3人と続けて辞めると、その幅を超えます。この調査に、何人以上を大量退職と呼ぶかの基準はありません。本記事では、人数より、平常の補充では追いつかなくなったかどうかを目安にします。
- 担当の空白が、同時に複数できる
- 引き継ぎを受ける相手が、チームに残っていない
- 残るメンバーに、辞めた人の仕事が寄ってくる
辞めた理由は人によって違い、その調べ方はここでは扱いません。ここで決めるのは、残った体制で何を止め、どの順で人を埋めるかです。辞める人数が多いときは、ハローワークへの届出が要る場合もあります。人数ごとの届出は「多数離職届と大量離職届の違い」で扱っています。
止める仕事と守る仕事の分け方
最初の1週間にすることは、辞める全員が受け持っていた仕事を、1枚の一覧に書き出すことです。1人の欠員の初動は「開発要員の欠員発生の初動」で、1人しか分からない担当者の退職は「エンジニアの属人化と退職|辞める前に残させる情報と引き継ぎの手順」で扱っています。大量退職では、一覧を人数分重ねるため、誰も持てなくなる仕事が一度に見えます。

| 区分 | 仕事の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 守る仕事 | 本番システムの運用と障害対応。期限や契約のある作業(証明書やライセンスの更新、月次の処理、取引先との納期) | 残るメンバーか外部人材に、担当者を付ける |
| 後ろに倒す仕事 | 期限を動かせる開発、既存の仕組みの手直し、社内向けの道具の改善 | 期限を決め直し、関係する部署に伝える |
| いったん止める仕事 | 新しい機能の追加、試験的な取り組み、急がない調べもの | 再開の目安を決めて、止めたことを記録する |
分ける基準は、止めた日に誰が困るかです。利用部門や取引先に影響が出る仕事ほど、守る仕事です。判断をマネージャー1人で抱えず、上長や利用部門と一緒に決め、期限を動かした仕事は関係者に知らせます。
一覧のうち、残るメンバーの誰も手順を知らない仕事には印を付け、辞める人が在籍しているうちに手順を聞きます。日数が少ない仕事は、外部人材に最初から入ってもらう前提で考えます。アカウントと資料の渡し方は「外部人材活用で退職者の引き継ぎを進める、アカウントと資料の渡し方」にまとめています。
残るメンバーの負荷を数える
守る仕事を残るメンバーに割り振る前に、1人ずつ今の仕事量を、週ごとの時間で数えます。辞めた人の仕事を足すと、残る人の時間外労働が増えるためです。
労働基準法第36条は、時間外労働に、労使で結んで届け出る書面の協定(36協定)を求めています。*3 限度は原則として1か月45時間、1年360時間です。臨時的に限度を超える特別条項を結んでも、1年720時間以内で、1か月は休日労働を含めて100時間未満、複数月の平均は休日労働を含めて80時間以内と定められています。*3 大量退職の穴を残業で埋める計画は、この上限の内側でしか組めません。自社の協定の内容は、人事や労務の担当者に確かめます。
- 1人ずつ、今の仕事の時間と、守る仕事を足したときの時間を、週単位で書く
- 時間外が上限に近いメンバーには、新しい仕事を足さない
- 割り振りは2週間ごとなど、日を決めて見直す
- 残るメンバーで収まらない分が、外部の人や新しく採る人に任せる量になる
人を埋める順番と手段の組み合わせ
埋める順は、期限の近い守る仕事からです。社員採用は、募集から入社まで時間がかかり、入社後も既存の仕組みを読み込む期間が要ります。1つの手段に頼らず、期間の短い穴は外部人材で、長く続く役割は社員採用で、と分けて考えます。

| 手段 | 向く仕事 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 残るメンバーの分担 | 数週間で終わる穴、時間外が上限に余裕のある範囲 | 長引くと負荷が上限に近づく(数え直しが必要) |
| 外部人材(業務委託・フリーランス) | 手順が書き出せている運用・保守、既存の機能の改修 | 契約の期間と範囲を決める。読み込みの期間が要る |
| 社員採用(リモート勤務の社員を含む) | 設計の判断や関係部署との調整など、中核として長く持つ役割 | 入社時期は応募次第で、約束できない |
組み合わせの順は、まず、期限の近い守る仕事を、残るメンバーの上限内の分担と外部人材で受けます。次に、中核の役割を社員採用で探します。そして、外部人材への最初の依頼に、作業だけでなく手順を書き残す仕事も含めます。手順が残れば、次の退職で同じ空白が生まれにくくなります。
採用の日程は「エンジニア中途採用の欠員補充」で、採用以外の手段は「エンジニア中途採用だけに頼らない欠員補充、9つの選択肢」で扱っています。辞めた本人に外部の形で戻ってもらう案は、派遣で戻せない期間があるため、「外部人材活用で退職者の後任を探す注意点、元社員の派遣は1年不可」で先に確かめてください。
外部人材に頼むときの確認点
頼む側に説明する余裕がないと、任せる範囲があいまいなまま作業が始まります。次の点を、依頼前に決めます。
- 任せる作業の範囲と、終わったと言える基準
- 渡すアカウントと権限の範囲、使わなくなったときの削除の手順
- 資料の無い部分を読み込む期間と、質問できる社内の窓口
- 報告の頻度と、作業を引き継ぐ相手
- 契約の期間、交代のときの手続き、作業の成果物の扱い
権限の渡し方は「業務委託エンジニアの受け入れ時の権限管理、付与から削除までの手順」にまとめています。契約や法律上の扱いに迷うときは、法務の担当者や専門家に相談してください。
外部人材も1人に集中させません。その人が抜けたときに同じ空白が生まれるため、複数人で分けます。
まとめ:大量退職の立て直しで確かめたい3つの点
エンジニアの大量退職への対応で確かめたい点は3つです。第一に、辞める全員の仕事を書き出して3つに分けること。第二に、残るメンバーの仕事量を1人ずつ数え、時間外労働の上限を超える割り振りを組まないこと。第三に、期限の近い守る仕事は外部人材と分担で埋め、中核の役割は社員採用で立て直すことです。
よくある質問
大量退職は、何人から数えればよいですか
雇用動向調査は離職率で見ており、何人からという基準は示していません。人数より、1人ずつ募集して入社を待つ平常の補充では追いつかなくなったかどうかを目安にします。
辞める人に、退職後も引き継ぎを頼めますか
退職日までは在籍しているため、その間に手順を聞く時間を業務として取れます。退職後に頼む場合は別の契約が要り、形によって法律の扱いが変わるため、人事や専門家に確かめます。
外部人材と社員採用は、どちらから動かせばよいですか
並行して動かして構いません。入社時期が読めない社員採用は早く募集を始め、期限の近い守る仕事は、書き出した範囲を外部人材に任せます。
大量退職のあとの人の確保を相談したいとき
守る仕事の一覧と期限が分かっていれば、そのままご相談いただけます。外部人材で埋めるか、社員で探すかを決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」2 産業別の入職と離職(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf)。出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」2 産業別の入職と離職。表4-2(産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率、令和7(2025)年)の一般労働者の離職率(情報通信業10.0%、産業計11.4%)と図3-1を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」調査の概要・用語の定義(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/gaiyo.pdf)。出典:同調査の概要(調査の範囲:5人以上の常用労働者を雇用する事業所から層化無作為抽出した約15,000事業所)と、用語の定義(離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100、一般労働者=常用労働者のうちパートタイム労働者以外)を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「労働基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条第1項・第4項・第5項・第6項(時間外及び休日の労働)を参照。e-Gov法令APIで条文を取得(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)