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レガシー移行が進まない理由|段階ごとの課題と動き出す手順
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- レガシー移行の状況を答えた384件のうち40.1%が、移行するかの判断、計画づくり、計画の実行のどれかに入れずに止まっています。
- 計画を実行に移せない34件では、必要な人材を確保できないという理由が15件で最も多く挙がりました。
- まず自社がどの段階にいるかを確かめ、足りないものが人・予算・社内の合意のどれかを見分けます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
移行の必要性は社内で共有できている。計画も作った。それなのに、いつ着手するのかが決まらない——。古いシステムを抱える会社では、こうして着手が先延ばしになることがよくあります。本記事でIPA(情報処理推進機構)の調査データを集計したところ、レガシー移行の状況を答えた384件のうち、40.1%が実施の前の段階にとどまっていました。*2 レガシー移行とは、長く使い続けてきた古い基幹システムなどを、新しいシステムに置き換えることです。
調査の分布と自社の状況を比べると、どの段階で止まっているのか、何が足りないのかを見当づけやすくなります。ただし万能ではなく、分布は1時点の集計で、自社の事情までは示しません。本記事では、レガシー移行を任された情報システム部門や開発部門の担当者に向けて、移行が止まる段階、計画を実行に移せない理由、動き出すための手順、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
レガシー移行はどこで止まるのか
手がかりになるのが、IPAの「2024年度ソフトウェア動向調査」です。調査は2024年12月17日から2025年2月14日にかけて行われ、2025年4月7日時点で企業799件、個人74件の回答がありました。*1 回答は匿名化したうえで、オープンデータ(誰でも使える形の公開データ)として公開されています。本記事では、企業向けの回答をこのデータから集計した値を使います。
レガシー移行の状況を尋ねた設問の対象は、ユーザー企業(システムを使う側の企業)と、そのシステム部門が独立した子会社です。システムを作って売る側の企業117件は回答の対象ではありません。*3 このうちレガシーシステムを保有している322件と、過去に保有していた62件を合わせた384件が答えています。*2 回答する企業は、経営やビジネスの上で最も重要と考えるシステムを1つ思い浮かべて答える形です。
10の選択肢のうち最も多かったのは「実施中で大きな課題はない、もしくは移行はすでに完了している」で、102件、26.6%でした。次いで「必要性は理解しているが、計画に着手できていない」が78件、20.3%で、差は6.3ポイントにとどまります。*2 順調に進んでいる会社と、必要性は分かっていながら計画づくりに入れていない会社が、近い数だけいることになります。
その後に「必要性についてまだ判断できていない」の42件(10.9%)、「計画は策定済みだが、実行に移せていない」の34件(8.9%)が続きます。移行を始めたあとに問題を抱えている会社は、「実施中だがクリティカルな課題が発生し対応中」が25件(6.5%)、「実施中で課題あり、対応できず凍結中」が8件(2.1%)でした。*2
段階ごとの内訳
10の選択肢は細かいので、4つの段階にまとめ直します。判断できていない42件、着手できていない78件、実行に移せていない34件を足すと154件で、384件の40.1%です。実施中と完了は、課題がない102件、重大な課題に対応している25件、凍結中の8件を足して135件、35.2%になります。
残りは、実施しないと判断した30件(7.8%)と、「わからない」「その他」を選んだ65件(16.9%)です。4つを足すと384件に戻ります。移行が動いている会社より、実施の前で止まっている会社のほうが多いという結果です。なお、この4つのまとめ方は調査の分類ではなく、本記事で件数を足し合わせて作ったものです。
実施の前の154件も、中身は同じではありません。移行が必要かどうかをまだ判断できていない会社と、計画まで作ったのに実行に移せない会社とでは、次に必要な作業が違います。前者には移行するかどうかを決める材料が、後者には計画を動かす人や時間が足りていないと考えられます。まずは自社がどの段階にいるのかを、選択肢の言葉に当てはめて確かめておくと、社内で認識をそろえやすくなります。
動き出したあとの課題
実施中と完了の135件のうち、重大な課題に対応している25件と、凍結中の8件を合わせると33件です。135件に対して24.4%にあたり、移行を始めた会社のおよそ4社に1社が、課題を抱えていることになります。
設問は状況を選ぶ形式のため、課題が何だったのかは公表されていません。ただ、着手したあとも4社に1社が課題を抱えている以上、計画を一度にすべて実行するより、作業を小分けにして進め、区切りごとに結果を確かめるほうが、問題が起きたときに立て直しやすくなります。着手の前に、どの時点で結果を確認するかを計画に書いておくとよいでしょう。
計画を実行に移せない理由
次の設問は、「計画は策定済みだが、実行に移せていない」と答えた34件だけに、その理由を尋ねています(複数選択)。*3 母数が34件と小さく、1件で2.9ポイント動くため、ここでは割合ではなく件数で見ていきます。
最も多かったのは「計画を実行するにあたり必要な人材(ビジネスアーキテクト、ITアーキテクトや技術的専門知識を持つ人材)が確保できない」で、15件でした。次いで「他に優先的に処理すべき作業があるため着手できない」が12件、「業務プロセスの変更への理解不足や抵抗感があり、業務部門の協力が得られない」が8件、「経営層からの承認が得られず予算確保ができない」が5件です。*2
ビジネスアーキテクトは、事業や業務の変え方を設計する人を指します。ITアーキテクトは、システム全体の構成を設計する人です。どちらも、移行の計画を具体的な作業に分けるときに必要になる役割です。
残りは「わからない」と「その他」が4件ずつでした。4つの理由のうち、いくつを選んだかを数えると、1つが15件、2つが8件、3つが3件、どれも選ばなかった会社が8件です。*2 理由を1つに絞れる会社がいちばん多い一方で、人材の不足、ほかの作業との優先順位、業務部門の協力といった理由が重なっている会社もあります。
予算の承認を理由に挙げた会社は5件で、人材や、ほかの作業との順番のほうが多く挙がっています。計画が止まったときには、予算の承認を求める前に、計画を動かせる人がいるか、ほかの作業と順番がぶつかっていないかを確かめておくと、止まっている理由を見誤りにくくなります。
どう動き出すのか
調査の分布をもとに、止まっている移行を動かす手順を4つに分けると、次のようになります。
- 自社がどの段階にいるかを1つに決める
- その段階で足りないものが、人か、予算か、社内の合意かを分ける
- 人が足りない場合は、既存システムを調べる作業と、移行の方針を決める作業を分ける
- 調べる作業を、期間を決めて外部に委託する
最初に段階を決めるのは、段階によって次の作業が変わるためです。判断できていない段階なら、移行するかどうかを決める材料をそろえます。着手できていない段階なら、計画を作る担当者を決めます。計画があるのに動かない段階なら、足りないものを見分ける手順に進みます。
足りないものを分けるときは、人、予算、合意の3つを同時に解決しようとしないことが大切です。足りないものを1つに絞れば、誰に何を頼むかを決めやすくなります。
人が足りない場合、移行の方針を決める作業は、社内の業務や事情を知る人が担います。一方、既存システムの仕様や処理を調べて文書にまとめる作業は、専門の知識を持つ人に加わってもらう分け方ができます。移行に必要な人材の違いは「レガシー移行に必要な人材の違い」で扱っています。
調べる作業の期間を決めておくのは、動き出した会社の4社に1社が課題を抱えていたためです。対象の機能と期間を決めて頼んでおけば、途中で問題が起きても、どこまで終わったかを確かめたうえでやり直せます。
つまずきやすい点
一つ目は、自社の移行がどの段階にあるのかを社内で共有しないまま進めることです。担当者によって状況の説明が変わる状態では、何が足りないのかを切り分けられません。まずは関係者で、自社がどの選択肢に当てはまるのかをそろえておきます。
二つ目は、ほかの作業との順番を決めないまま、移行を日常の業務の合間に進めようとすることです。実行に移せない理由の2番目は「他に優先的に処理すべき作業があるため着手できない」でした。移行の作業に充てる時間と担当者を先に決めておかないと、急ぎの作業が入るたびに移行が後回しになります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
既存システムを調べる作業は、期間と成果物を決めて頼みやすい作業です。フリーランスを含む業務委託で頼む場合は、どの機能を、いつまでに調べ、結果をどんな文書で受け取るのかを、最初に書き出しておきます。調べた結果が文書で残れば、委託の期間が終わったあとも社内で引き継げます。
反対に、自社がどの段階にいるのかの判断と、足りないものの切り分けは、社内で行います。この2つまで委託先に任せると、何から動かすのかを社内で説明できなくなるためです。委託先には、社内で決めた方針をもとに、調べる作業と文書づくりを任せる形にすると進めやすくなります。
移行を先送りしたときの影響は「レガシー放置の影響とは」で同じ調査の別の設問をもとに扱っています。関係者の情報共有は「レガシー対応の情報共有」で、IT人材の不足への対応方針は「IT人材不足の対応とは」で整理しています。
まとめ:レガシー移行で確かめておきたい3つの点
止まっているレガシー移行を動かすうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社が判断前・着手前・実行前・実施中のどの段階にいるのかを1つに決めること。第二に、その段階で足りないものが人か、予算か、社内の合意かを分けること。第三に、人が足りない場合は既存システムを調べる作業を切り出し、期間と成果物を決めて頼むことです。この3点を踏まえておけば、「計画はあるのに、いつまでも着手日が決まらない」という事態を避けやすくなります。移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査の数値は、どのような会社の回答ですか
IPAの2024年度ソフトウェア動向調査に答えた企業のうち、ユーザー企業662件と、そのシステム部門が独立した子会社20件の、計682件が対象です。そのうち、レガシーシステムを保有している322件と過去に保有していた62件の、計384件の回答をもとにしています。*2 回答は任意で、日本の企業全体を代表するように選ばれたものではありません。
移行をしないと決めた会社は、その後どうしていますか
「必要性は理解しているが、実施しないと判断した」会社のうち、既存のシステムを使い続けるとした会社が27件、既存のシステムを破棄するとした会社が3件でした。*2 使い続ける場合は、いつ判断を見直すかも決めておきます。
既存システムを調べる作業を委託するとき、社内では何を用意すればよいですか
調べてほしい機能の一覧と、結果を受け取る文書の形、作業の期間を用意します。あわせて、設計書や運用手順書など社内に残っている資料の場所を伝えておくと、委託先が作業に入りやすくなります。資料が古い場合は、そのことも先に伝えておきます。
計画が止まっている理由を社内で確かめるには、どうすればよいですか
調査の選択肢をそのまま使い、関係する部門の担当者に、人材・ほかの作業との順番・業務部門の協力・予算承認のどれが当てはまるかを選んでもらう方法があります。選んだ理由が人によって違えば、その食い違いが最初に話し合うべき点です。
止まっているレガシー移行を相談したいとき
既存システムを調べる作業の切り出し方や、任せる期間の決め方からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査」調査結果データの公開と分析レポートの募集(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:公開日2025年2月27日・最終更新日2025年4月25日。調査期間(2024年12月17日〜2025年2月14日)、2025年4月7日時点の回答件数(企業799件・個人74件)、オープンデータとしての公開を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-result-data-str.csv)。出典:Q5-16とQ5-17の回答。件数・比率・4つへのまとめ方・実施中に対する割合は、このCSVから集計・計算した値(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 企業向け 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/h5f8pg00000028n8-att/software2024-c-questions.xlsx)。出典:Q5-16・Q5-17の設問文と選択肢、回答対象の企業種別、Q5-3の「一つ思い浮かべて」という指示を参照(2026年9月確認)