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2026.08.24 らしくコラム

EU一般製品安全規則、越境ECのリスクはどこか




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • すでに適用中:規則2023/988は2023年5月10日に採択され、2024年12月13日から適用されています*1*2。
  • EU域内に責任者が必要:対象製品ごとに、EU域内に責任を負う経済事業者を置くことが求められます*1。
  • システムの勘どころ:製品の識別情報、技術文書、事故と苦情の記録。三つを持てるかが分かれ目です。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

EUの消費者に製品を届けている企業にとって、製品データの持ち方が問われる規則です。一般製品安全規則(General Product Safety Regulation、規則2023/988)は2023年5月10日に採択され、官報はOJ L 135, 23.5.2023, p. 1–51に掲載されました*2。適用は2024年12月13日からです*1*2。

この規則により、従来の一般製品安全指令(指令2001/95/EC)と理事会指令87/357/EECは廃止されました*2。指令から規則へ変わったことで、加盟国ごとの国内法化を待たずに直接適用される形になっています。

本記事では、EU向けに製品を販売する企業の情報システム担当と、その販売やデータの仕組みを受託する立場に向けて、システム側で持つべき情報を整理します。制度の解釈が要る部分は規則の本文と専門家の確認を経て進めてください。

棚に多数の梱包が並ぶ物流倉庫のイメージ

EU域内に「責任を負う事業者」を置く

この規則でいちばん実務に響くのが、責任の所在を域内に置く要求です*1。

EU一般製品安全規則(規則2023/988)が2023年5月10日に採択され2024年12月13日から適用されていること、指令2001/95/ECと理事会指令87/357/EECを廃止したこと、対象製品ごとにEU域内の責任を負う経済事業者(EU域内の製造業者・輸入業者・authorised representative・フルフィルメントサービス提供者)が必要であること、製造業者にはリスク分析と技術文書および製品への識別情報が求められること、オンラインマーケットプレイスの提供者はSafety Gateへの登録と単一窓口の指定が必要であること、危険な製品を把握したらSafety Business Gatewayを通じて市場監視当局に通報することを整理した図

規則の対象となる製品については、EU域内に責任を負う経済事業者が存在することが求められます*1。その役割を担えるのは、EU域内の製造業者、輸入業者、authorised representative(授権代理人)、またはフルフィルメントサービス提供者のいずれかとされ、製品の安全に関わる業務が委ねられます*1。

日本から直接EUの消費者へ販売している企業にとって、これは無視できない条件です。EU域内に誰も置いていない状態では、規則が求める体制が成立しません。販売の形を変えるか、域内の事業者を立てるかの判断になります。

システムの観点で押さえたい点を挙げます。

第一に、製品ごとに責任事業者を持つことです。すべての製品で同じ事業者になるとは限りません。輸入の経路が製品によって違う企業では、製品と責任事業者の対応を持つ必要があります。製品マスタに「どの事業者が責任を負うか」の項目を足す作業になります。

第二に、その情報を表示に出すことです。製品や梱包、あるいは販売の画面に責任事業者の情報を出すことになります。製品マスタから表示へ流す経路がないと、手作業で貼り付けることになります。

第三に、事業者が変わったときの扱いです。輸入業者を切り替える、代理人を変える。こうした変更が起きたとき、過去に販売した製品の責任事業者は当時のままです。現在の値だけを持つ設計では、過去の販売分について誰が責任を負っていたかを示せません。

製品ごとに属性を持ち、変更の履歴を残すという構造は、商品情報の管理で扱う考え方と同じです。EU向けの項目が増えるという形で、既存の製品マスタに乗せられる場合が多くあります。

リスク分析と技術文書——作るだけでなく残す

製造業者には、市場に出す前の作業が求められます*1。

製品を市場に出す前に、リスク分析を行い、技術文書を用意することが求められます*1。あわせて、製品にはサプライチェーンを通じて追跡できる識別情報を載せることが求められます*1。

表1:規則が求めるものと、システムで持つ対象
求められるもの 内容 システムで持つ対象
リスク分析 市場に出す前に実施する 実施の記録と、根拠にした条件
技術文書 市場に出す前に用意する 版と保管場所、参照した規格
識別情報 サプライチェーンを通じた追跡を可能にする 型式・ロット等と、表示への反映
責任事業者 EU域内に置く 製品との対応と、変更の履歴
是正と通報 危険を把握したら措置をとり当局へ通報 検知の経路と、措置の記録

ここで実装の論点になるのは、技術文書がどこにあるかです。設計部門の共有フォルダ、品質部門の書庫、あるいは委託先。ばらばらに置かれていると、当局から求められたときに集める作業が発生します。製品コードから文書へ辿れる形にしておくと、その場で出せます。

識別情報については、既に他の規制で似た要求を受けている企業が多くあります。デジタル製品パスポート追跡の仕組みで扱うような、製品を一意に識別して情報を紐づける構造が土台になります。GPSRのために別の仕組みを立てるより、既存の識別子に項目を足す方向で考えるほうが現実的でしょう。

なお、規則を支える欧州規格については、Commission Implementing Decision (EU) 2026/901 of 17 April 2026 により、規則2023/988を支えるために作成された欧州規格が定められています*2。整合規格の一覧はPDFとExcelの形で公開されています*2。参照する規格が更新される前提ですので、技術文書に「どの規格のどの版を参照したか」を書いておくと、更新時に確認する範囲が絞れます。

オンラインマーケットプレイスに固有の義務

自社でEC基盤を運営し、他社の出品を受けている場合は、別の義務が加わります*1。

オンラインマーケットプレイスの提供者には、Safety Gateへの登録単一窓口の指定が求められます*1。市場監視当局と電子的な手段で直接やり取りできる単一窓口を指定し、Safety Gateポータルに登録してその窓口の情報を示すという形です*1。あわせて、消費者が製品安全に関する事項について直接かつ迅速に連絡できる単一窓口も指定することとされています*1。

つまり窓口は当局向けと消費者向けの二つです。同じ担当者が兼ねる運用でも構いませんが、公表する連絡先としては別に示す前提になります。

さらに、内部の手続きを整えることも求められます*1。製品安全の遵守を確かめる内部プロセスを設け、危険な製品を見つけるための措置を講じるという内容です*1。オンラインインターフェース上でホストする製品安全に関わるコンテンツについて、注意をもって対応することも挙げられています*1。

システムの観点で押さえたい点を挙げます。

第一に、出品の内容を検査できることです。危険な製品を見つける措置が求められるため、出品データに対する確認の仕組みが必要になります。全件を人が見るのは無理があるため、条件に合うものを抽出する形になります。

第二に、当局からの連絡を受けて動く経路です。単一窓口に届いた指摘から、該当する出品を特定し、対応するまでの流れです。出品と事業者と製品が紐づいていないと、特定に時間がかかります。

第三に、対応の記録です。いつ、どの出品について、どんな措置をとったか。当局とのやり取りの証跡として残すことになります。

プラットフォームとしての義務という点では、EUデジタルサービス法で扱う枠組みと重なる部分があります。窓口の設置、通知への対応、内部の手続き。二つの規則が同じ機能を別の観点から求めているため、対応を一つの仕組みにまとめられるかを検討する価値があります。

Safety Gateという三つの入口

この規則の運用を支える仕組みが用意されています。三つの要素が相互につながる構成として整理されています*1。

第一に、危険な製品に関する情報を交換する迅速警報システムです*1。加盟国の当局間で情報が回る部分です。

第二に、苦情のための公開ポータルです*1。消費者の側から情報が入る入口です。

第三に、事業者が遵守に関する通報を行うビジネスポータルです*1。これがSafety Business Gatewayです。

事業者に関わるのは三つ目です。すべての経済事業者は、市場に安全な製品のみを出す責任を負い、危険な製品を把握したときには是正の措置をとり、Safety Business Gatewayを通じて市場監視当局に通報し、当局に協力することとされています*1。

ここが記録の設計に直結します。「危険な製品を把握した」という状態は、どこかから情報が入って初めて成立します。入ってくる経路は複数あります。消費者からの問い合わせ、販売店からの連絡、返品の理由、修理の依頼、そしてSNS上の書き込み。

実務で困るのは、これらが別々の場所に溜まっていることです。問い合わせは顧客対応の仕組み、返品は受注の仕組み、修理は別の台帳。製品単位で横断して見られないと、「同じ不具合が何件起きているか」に気づけません。

設計としては、製品コードを軸に事象を集める形が向いています。受注や問い合わせの仕組みを一つにまとめる必要はなく、それぞれから製品コードと日付と分類を集めた一覧を作れれば足ります。受注管理の仕組みで扱うような、注文と製品の紐づけが土台にあると、返品の理由を製品別に見られます。

通報そのものはポータルへの入力になりますが、入力する内容を手元で組み立てられるかが分かれ目です。何が起きて、何台売れていて、どの範囲に影響するか。この三つを出せる状態にしておくと、通報の判断も速くなります。

「安全な製品」の判定は条件つきである

規則の中心にある定義も、実務の判断に関わります*1。

安全な製品とは、通常のまたは予見可能な使用の条件の下で、消費者の健康と安全の保護に照らして、リスクがないか、または受け入れられる最小限のリスクしか示さないものとされています*1。

この定義の要点は、「予見可能な使用」まで含むことです。取扱説明書のとおりに使われた場合だけを考えるのでは足りません。誤った使い方や、想定していなかった使い方も検討の対象に入ります。

リスク分析を行う際、この範囲の広さが作業量に効いてきます。とくに次のような製品では検討が増えます。

子どもが触れる可能性がある製品です。大人向けに設計していても、家庭に置かれる製品は子どもが手にする可能性があります。

ソフトウェアを含む製品です.更新によって挙動が変わる製品では、出荷時のリスク分析だけでは足りない場面が出てきます。更新の内容とリスクの関係を記録として残す運用が要ります。

組み合わせて使われる製品です。他社の製品と接続して使うものでは、組み合わせによって生じる事象も予見可能な範囲に入り得ます。

機械や装置については、別の規則が並行して適用される場合があります。EU機械規則で扱うような分野別の規制がある製品では、そちらの要求と重ねて確認することになります。GPSRは一般的な枠組みであり、分野別の規制が優先する関係にあるため、自社の製品がどちらに当たるかを先に切り分けておく必要があります。

包装や梱包についても、別の規則が関わります。EU包装規則で扱うような要求と、GPSRの識別情報の表示が同じ面に載ることがあります。表示の設計をするときは、複数の規則の要求を一度に並べたほうが手戻りが少なくなります。

着手の順序と、受託で進めるときの要点

優先順位をつけるなら、次の順になります。

第一に、EU向けに何を売っているかを洗い出すことです。自社サイトからの直販、海外のマーケットプレイス経由、現地の販売店経由。経路によって責任事業者の置き方が変わります。

第二に、責任事業者を決めることです。EU域内の製造業者、輸入業者、authorised representative、フルフィルメントサービス提供者のいずれかです*1。誰を立てるかは事業の判断であり、システムの判断ではありません。

第三に、製品マスタに項目を足すことです。責任事業者、識別情報、技術文書への参照。既存の製品マスタに乗せられるかを確かめます。

第四に、事象を集める経路を決めることです。問い合わせ、返品、修理。製品コードを軸に横断して見られる形を作ります。

受託で進める場合の要点も挙げます。

制度解釈の担い手を決めることです。自社の製品がGPSRの対象か、分野別の規制が優先するか、リスク分析をどこまで行うか。これは品質保証と法務の領域です。開発側は決まった解釈を仕様として実装する役割に集中します。

表示の項目を設定として持つことです.製品に載せる情報の項目は、規則の運用や整合規格の更新で変わり得ます。整合規格については実施決定が2026年4月に定められています*2。項目をコードに埋め込むと、更新のたびに開発が必要になります。

過去の販売分を辿れるようにすることです。是正の措置が必要になったとき、対象になるのは過去に販売した製品です。いつ、どのロットを、どの国に、何台出したか。この情報が出せないと、範囲を絞った対応ができません。越境ECの仕組みで扱うような、販売先の国と数量を持つ構造が前提になります。

他の規則との重なりを整理することです。プラットフォームとしての義務はDSAと、包装の表示はPPWRと、機械はEU機械規則と重なります。案件を分けて発注すると、同じ画面に別々の要求が後から足されることになります。

体制としては、製品の品質保証とEU向けの販売実務の両方を理解している要員が入れるかが分かれ目になります。リスク分析の進め方、技術文書の構成、当局とのやり取りの実務。これらは仕様書の項目名だけを見ていても判断できません。業務側と設計側が同じ場で話せる形を作れるかを、委託先を選ぶ観点に入れておくとよいでしょう。

まとめ:GPSRへの対応で押さえる3つの視点

一般製品安全規則(規則2023/988)は2023年5月10日に採択され、官報はOJ L 135, 23.5.2023, p. 1–51に掲載されました。適用は2024年12月13日からで、従来の一般製品安全指令(指令2001/95/EC)と理事会指令87/357/EECは廃止されました。押さえたい視点は三つです。第一に、EU域内に責任を負う経済事業者を置く必要があること。EU域内の製造業者、輸入業者、authorised representative、フルフィルメントサービス提供者のいずれかがその役割を担い、製品の安全に関わる業務が委ねられます。製品ごとに対応を持ち、変更の履歴も残せる形が要ります。第二に、リスク分析と技術文書、そして製品への識別情報が求められること。技術文書がどこにあるかを製品コードから辿れる状態にしておくと、求められたときに出せます。整合規格については2026年4月17日の実施決定が定められており、参照した規格の版を記録しておく価値があります。第三に、危険な製品を把握したらSafety Business Gatewayを通じて通報すること。問い合わせ、返品、修理といった経路に分散した事象を製品コードで横断して見られないと、把握そのものが遅れます。まずはEU向けの販売経路の洗い出しと責任事業者の決定から着手するのが堅実でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、製品情報や受注・問い合わせの管理に関わる業務システムの開発と改修を受託しています。製品マスタへの属性追加と履歴の保持、技術文書への参照を辿れる構造、複数の経路に分散した事象を製品コードで集める設計、表示項目を設定として持つ作りまで、規制の更新に追随できる形をご提案できるのが強みです。

よくある質問

GPSRはいつから適用されているのですか。

規則2023/988は2023年5月10日に採択され、官報はOJ L 135, 23.5.2023, p. 1–51に掲載されました。適用は2024年12月13日からです。この規則により従来の一般製品安全指令(指令2001/95/EC)と理事会指令87/357/EECは廃止されました。指令ではなく規則であるため、加盟国ごとの国内法化を待たずに適用される形になっています。

日本から直接EUの消費者に売る場合も対象ですか。

対象製品については、EU域内に責任を負う経済事業者が存在することが求められます。その役割を担えるのはEU域内の製造業者、輸入業者、authorised representative、フルフィルメントサービス提供者のいずれかで、製品の安全に関わる業務が委ねられます。EU域内に誰も置いていない状態では規則が求める体制が成立しないため、販売の形を変えるか域内の事業者を立てるかの判断になります。

自社ECで他社の商品も扱っている場合はどうなりますか。

オンラインマーケットプレイスの提供者としての義務が加わります。市場監視当局と電子的手段で直接やり取りできる単一窓口の指定とSafety Gateポータルへの登録、そして消費者が製品安全に関する事項について直接かつ迅速に連絡できる単一窓口の指定が求められます。あわせて製品安全の遵守を確かめる内部プロセスと、危険な製品を見つけるための措置も求められます。

危険な製品を見つけたらどうすればよいのですか。

すべての経済事業者は市場に安全な製品のみを出す責任を負い、危険な製品を把握したときには是正の措置をとり、Safety Business Gatewayを通じて市場監視当局に通報し、当局に協力することとされています。Safety Gateは、当局間の迅速警報システム、苦情のための公開ポータル、事業者が通報を行うビジネスポータルという三つの要素が相互につながる構成として整理されています。

システムとしてまず何を用意すべきですか。

三つです。製品ごとに責任事業者と識別情報を持てる製品マスタ、製品コードから技術文書へ辿れる仕組み、そして問い合わせや返品、修理といった経路に分散している事象を製品コードで横断して見られる一覧です。とくに三つ目がないと、同じ不具合が何件起きているかに気づけず、通報や是正の判断が遅れます。

製品情報と事象の記録の仕組みづくりはLASSICへ

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出典

  1. *1 参考:EU-OSHA「Regulation 2023/988/EU – general product safety」(https://osha.europa.eu/en/legislation/directive/regulation-2023988eu-general-product-safety)。採択・公布日と2024年12月13日からの適用、指令2001/95/ECの廃止、製造業者のリスク分析・技術文書・製品への識別情報、全経済事業者の責任とSafety Business Gatewayを通じた通報、オンラインマーケットプレイス提供者のSafety Gate登録と単一窓口・内部プロセス・危険製品を見つける措置、EU域内に責任を負う経済事業者を置く要件とその担い手、安全な製品の定義、Safety Gateの三つの要素の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:欧州委員会「General product safety」(Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs)(https://single-market-economy.ec.europa.eu/single-market/goods/european-standards/harmonised-standards/general-product-safety_en)。2023年5月10日の採択、官報の掲載箇所(OJ L 135, 23.5.2023, p. 1–51)、2024年12月13日からの適用、指令2001/95/ECおよび理事会指令87/357/EECの廃止、Commission Implementing Decision (EU) 2026/901 of 17 April 2026 による整合規格の確認として(2026年8月確認)




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